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投稿者: akiokawato

  • トランプ政権がEUに、自由と民主の近代文明の護持を呼びかける可笑しさ

    トランプ政権が誕生して以来、同政権とEUの間で奇妙な論争が続いている。目くそが鼻くそを嗤う、とはこのこと。2025年2月ミュンヘンの安全保障会議でヴァンス副大統領はこう言い放った。

    「ヨーロッパだけでなく米国も含めて、自由と民主主義の原則を守る必要があります。外部の脅威(ロシアや中国)よりも、内部から民主主義の基本価値が侵食されることこそが最も大きな危機です。

    ルーマニアでの選挙結果を無効にする動き、EU各地でのソーシャルメディア検閲、英国やスウェーデンでの表現の自由に対する制限など、これらは民主主義そのものを脅かしています。米国においても、前政権が情報統制を試みました。

    移民政策や大量移住に対して、国民が自らの生活や安全、そして価値観に対する不安を訴えることは民主主義の根幹であり、政治家はその声を無視すべきではありません」

    要するにトランプ政権の政策に反対することは自由と民主の文明からの逸脱なのだ、移民受け入れは民主党の誤った政策で、異分子は強制追放されてしかるべきなのだ、というわけ。

    1年後の同じ会議で、ルビオ国務長官も同じことを少しオブラートにくるんで言った。

    「米国と欧州は、共に歩むべき存在だ。米国は必要ならば単独でも行動する用意はあるが、我々の望みは…欧州の友である諸君と共にこれを成し遂げることだ。」 そして欧州に対し、移民受け入れ・多文化主義・極度の環境保護・防衛費削減といった潮流には抵抗し、「西洋文明」を守るため決起するよう促した。

    これは別の言葉で言えば、「ヨーロッパよ、偉そうな顔をするな。上から目線でトランプのことをやれポピュリストだの、民主主義にもとることをやっているだの、言うんじゃない。君たちこそ、移民を野放図に入れて、今や自分達の文明を失いかけているじゃないか。偉そうな顔をしていないで、トランプ政権の政策を支持してくれれば、守ってやるよ」ということ。

    ひどい、子供っぽい議論だ。まず、トランプ政権のやっていることが自由と民主主義の精神にかなうとは思えない。例えば移民の取り締まりは、1月初旬ミネアポリスで無辜の市民2名が連邦移民・税関捜査局の武装要員に射殺されたように、非人道的で、法の支配、民主主義にもとるものになっている。

    さらにトランプの旧側近スティーヴ・バノンなどは第一期の時から、欧州の反政府・右翼過激集団と親交を結んでいる。これら極右の団体は強権信奉で、民主主義の原則を守るより、移民の強制送還等を求める連中。                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                        

    ヴァンス、ルビオ、バノンは、こうした連中の方が、欧州の自由と民主の文明を守ることができる、と言っている。彼らの主張、そしてトランプ政権の政策に賛同することが、自由と民主への信仰の証しになるのだそうだ。筆者の「自由と民主の世界史―失われた近代を求めて」をまず読んでもらいたい。英訳は以下のクラウドにアップしてある。

    https://docs.google.com/document/d/1hiRK7kjbX0Hxd2NOxPqtQlVWgjDHgKCr/edit

    https://docs.google.com/document/d/1MB0Me9P5Lpa2HGceuJUdMqqQ2CRHQSxa/edit

  • 高市自民党――独裁か、それとも自民党支配の最後の宴か

    (以下は2月25日発行のメルマガ「文明の万華鏡」第166号から)

    2月8日総選挙の結果、自民党は議席の68%(316議席)、つまり日本史上初めて一党が議席の3分の2を獲得する快挙を成し遂げた。参院で否決されても、衆院で3分の2の賛成があれば、法案は成立する。野党は存在の意味を失った。自民党は、中国の共産党にも近い、権力独占者の地位を得た。

    何でも通る国会の構図

    議席の3分の2というのは、自民党独裁を可能にする数字である。憲法に違反していない限り、自民党は自分の望む法案を採択できることになるからだ。衆議院では法案を容易に可決できるし、参院で(ここでは自民党は40%強の議席しか持っておらず、連立与党「維新」の助けを得てやっと56%)否決されても、差戻しの衆院での採決で3分の2以上の票を得ることができれば、成立する。

    この手が効かないのは憲法改正だけで、これは衆院、参院両方で各々3分の2以上の賛成、そして国民投票を必要としている。しかし今の参院でも、野党の一部を引きこめば、3分の2にぎりぎり届き得る。

    戦後、米占領軍当局に憲法草案を押し付けられたという意識のある自民党は、憲法改正を党是としている。ただそれは、日本を戦前の専制・帝国主義に戻すというのではなく、自衛隊を軍隊と改称して憲法上の裏付けを与え、かつ自衛のための武力の行使を明文で認めるという、他の独立国では当たり前のものに変えるだけの話しである。

    なお、「核兵器を持たない。作らない。持ち込ませない」という、いわゆる非核三原則はもともと法律でさえない(衆議院決議)ので、最後の「持ち込ませない」という点からまず緩和(但し陸上配備ではなく、核兵器を搭載した米艦船が日本の港に寄港する程度)されていくだろう。ただ、米国は日本に持ち込めるような核兵器を未だ開発中である(一度トマホークを完全に撤退させている)ので、差し迫った問題ではない。

    衆院で失われる野党の存在感

    議会の最大の仕事は、予算、つまりどこからいくらの税金を取って、どこにいくら配るかを決めることにある。それは国王と貴族の間の利権闘争という歴史の中で形成された西欧、そしてその伝統を受け継いだ米国の議会で、顕著に見られるところ。

    ところが日本は政府の力が強く、明治憲法で国会を作ったものの、それは欧米の列強に日本も近代国家になったのだという体裁を示し、不平等条約の改正を迫ることに大きな目的があった。戦後も、野党勢力には勝手なことを言わせてガス抜きするだけ。野党が修正動議を出しても否決されるので、野党主導で予算案が修正されたことはない。予算案は大蔵省・財務省と自民党の間で事前に揉まれるが、ここに野党が直接介在することはない。

    今回自民党が3分の2もの議席を取ったことで、この「野党は無力」ということが白日の下にさらされる、ということになる。日本では、労働組合や創価学会など野党の基盤が溶融し、日本社会が一つの溶融物になってしまった感があるので、これまでの「野党」的存在は先細り。これからの野党は、ぐつぐつと煮える社会の中で、泡のように立ち上る新規のポピュリスト政党(賞味期限つき)ということになるのだろう

    自民党議員が社会と政府をつなぐ役割を立派に果たしていれば、これでいいのかも。中国共産党と日本自民党が似て見えてくる。そう言われると、両方とも怒るだろうが。

    大勝は大乱を招く

    大勝の後には危機が訪れやすい。高市総理は独断で重要な発言、決定を行うことがあり、それで一度つまずくと自民党内外での批判が広がる。マスコミの中で自民党、特に高市総理に敵対するものは、政権関係者の醜聞を掘り起こしていくだろう。女性の多くは女性宰相の出現を喜んでいるが、高市総理を嫌う女性もまた多い。

    参政党は、消費税減税や「給付付き税額控除」などを超党派で議論する「国民会議」に呼ばれていない(消費税全廃を主張しているため)ことでキレて、これからは政府批判で大暴れする構えを示している。ただ、いくら暴れても、国会での質問時間は限られている。結局、衆院はこれから最大4年、自民党が割れない限り、現在の構図が続くだろうが、その間、次の参院選挙、つまり2027年7月周辺で何かが起こり得る、ということになる。ここでも高市自民が勝てば、自民党は憲法改正に乗り出すだろう。

    自民党、最後の宴に?

    ウラがね問題で叩かれていた自民党の面々は、今回の返り咲き組も含めて、図に乗ることだろう。旧安倍派「五人衆」残党間の勢力争いは激しくなり(そのうち西村康稔は選挙での候補者の選定を担う党選対委員長、萩生田光一は党全般の運営を牛耳る幹事長代行、松野博一は全国の支持団体・組織との関係を取りまとめる組織運動本部長。それぞれ自民党の足腰を握る)、それはいかに何でも数年内には去るであろう麻生氏をトップにいただく麻生派の今後(ここでは河野太郎がどう動くか)、岸田文雄、林芳正、菅義偉、二階俊博の一派の去就と合わせて、注目されるところ。もっとも誰かが自民党から飛び出ることがない限り、コップの中の嵐に止まるが。

       

    いずれにしても、今度の選挙の結果、自民党がウラがね等、昔のままに戻ってしまっては困る。そうなったら、次の選挙で大負けしかねず、その時は今回の勝利は最後の宴ということになるだろう。

    日本の社会も変わってきていて、これまでのように農協や郵便や医師会等々、地元の利益団体を相手に組織票をがっぽり得られる時代でもなくなっている。地方の支持団体・組織幹部と飲み食いや葬礼を共にすることで党を維持する時代は卒業し、もっと正面から日本の民主主義制度の構築を考えていくべきだ。

    その際は、優等生的に過度の浄化をはかるより、与党も野党も「これなら何とか守れる。何とかやっていける」という範囲でルールを定め、それをきちんと守っていくことを基本にしてもらいたい。

  • AIと日本の農業を議論する

    日本の政治を考えるうえで、農政、あるいは農村部の社会改革は避けて通れないテーマ。コメ価格による自営農家の維持、その自営農家のカネを扱うことによる全国農協組織の維持、農協職員を「徴用」して選挙運動をする自民党議員・・・この三位一体の構造で、日本の政治は回ってきたからだ。

    消費者も、農民も、農協もみんなハッピー、そのような改革はあり得るのか。おなじみのChatGPTと議論してみた。

    明治の地租改正を出発点とし

    まず日本の農政、と言うか、農地の所有権をめぐる歴史的な推移について。

    日本での農地所有形態は全国一律だったわけではない。当初は豪族たちの分有、その中で国有の班田収授制が関西の一部に成立。次に関西をハブに、貴族・寺社の荘田が広がっていく。そこに新興侍たちが守護・地頭として入り込み、それがまた応仁の乱で乱れて、地権は複雑になっていく。誰が本当の地権者であるかもわからず、しかも戦国時代で治安も荒れる世になると、農民たちは「惣村」なる構えを備えて自治・自衛に乗り出す。黒澤明の「七人の侍」の世界だ。

    この混乱を豊臣秀吉が収拾する。全国の土地は秀吉が差配することとし(土地の国有化だ)、その使用権はそこを実際に耕している農民に子孫代々与えられ、農民はその代わりに納税義務を負った。江戸時代もそれは変わらない。俗に藩主が領主になったような言い方がされることもあるが、藩主はその藩の土地の管理を幕府から仰せつかっただけの管理人的存在。ただその土地を耕す農民の年貢は、藩主のものとなった。それでも、藩主は幕府の命令があれば、別の藩に家来ともども移転していったのだ。

    (ここからはChatGPTに依拠)明治になって、藩主は知藩事と名を変えたが、しばらくは年貢は江戸時代のまま集める。しかし明治4年廃藩置県で、知藩事はその地位を失い、中央が任命した府知事・県令が年貢の徴収を行うようになる。

    そして明治6年、新政府は「地租改正令」を発して、ものごとを基本から変える。土地はそこを耕す農民の私的所有物とされ(土地の民営化だ)、その代わり税を現金で収めることとしたのである(ここらへんまでは、ChatGPTにほぼ全面依拠)。

    かくて農民の自営農化と国家の中央集権化が同時に行われたのだが、生産性の低い地域では農民の窮乏化、借金奴隷化(農業は種もみの購入などで、借金が必要)、抵当の土地の地主への集約、農民の小作化が進む。戦前、自作農の比率は30%にまで落ちた。東北地方の農民の窮乏救済が、昭和の2,26事件を起こした将校たちの決起の大義となった。

    戦後の農地改革が今の農政のtemplate

    戦後、マッカーサーは農地改革を行い、地主から土地を安価で取り上げると、そこを耕していた農民の所有物として与え、彼らを再び自営農に戻す。彼らの収入は、米価を高めに維持することで保証した。

    タイとかフィリピンと比べると、戦後の日本では地主による農民の収奪、地域の政治の壟断があまりなかったことが特徴的。これが、日本の政治における民主性を支えるものとなっている。フィリピンでは、米軍が共産化防止を優先。地主・軍を安定勢力と見なして温存したから、今のようなことになった(このパラはChatGPTに依拠)。

    それに日本では、公的精神を持つ地主もいた。酒田では江戸時代から、本間家という「大地主」がいたが、これもインドのマハラジャのような威張った収奪者ではなく、基本的には農業法人の走りのような存在。自宅は今でも残っているが、大金持ちとは思えない、質素なつくりだ。本間家は廻船問屋で稼いだ金を農民に貸し(農民は種子や農具の購入で資金が必要)、これを返済できない農民からは多分、土地使用権の名義を抵当として獲得し、農民を小作農=「社員」として今まで通り耕作させていたのだろう。農業法人的な存在なのだ。今でも現地で本間家の悪口を言う者はいないし、土地の庄内藩の藩主・酒井家の人気も高い。それは庄内平野の気風なのかもしれない。

    ChatGPTがまとめた日本農業法人化案

    現在の日本農業にはいくつか、根本的な問題がある。まず土地利用の集約化、大規模化をはかる必要がある。これには、農地法を改正して、大規模法人の参与を可能にしなければならない。次に働き手を確保する必要がある。

    法人化にあたっては、今の農民が自分の土地を手放したがらない、という問題がある。たとえ地元の役所勤めなどで生計を立てていても、先祖代々の土地は、自分の「主権」の最後の砦だからだろう。

    これについて、ChatGPTは「所有と利用を分離」、つまり土地の所有権には触らず、長期リース地を集約して、耕作の大規模化だけやればいいとする。

    次に農民の老齢化で働き手がいないという問題がある。しかしこれは、法人化で生産性を上げ、機械化も進めれば、外部から、あるいは外国から働き手が集まることだろう。

    農協を敵に回すなかれ。巻き込め

    農協は大変な組織。減反など農業関係の補助金、予算の配分を差配し、農民の貯蓄を運用する金融で力を蓄え、地域の自民党の別動隊として機能する。自民党は農村に予算を流し、農協は自民党に票を集めるという取り引き。「この農協が法人化など、外部の勢力が農業利権に手を突っ込むのに猛反対する。だから改革ができない」というのが通り相場。

    しかし、農協にも利になる形での改革はできるだろう。まず、業務の内容を変える。ChatGPTは「農地バンク」(実質的な農地集約)の経営、温室等のインフラ・設備への共同投資、輸出のための規格・ブランドのマネジメント、地元の農業法人間の調整等を提案している。

    また農業は工業に比べて生産性が低いから、報酬にはどうしても大きな差がつく。その差はどの先進国も、政府が補助金を支給することで埋めている。欧米は農民の所得を直接補填する。日本でも、米価決定や栽培面積は市場、農民に委ね、農協職員が農民の所得補償の事務をするようにすることができる。

    更にChat GPTは農協を金融から切り離すことを提言している。切り離すと、金融の担保がらみで土地が動かなくなるのを防ぐことができるから、なのだそうだ。

    そして最後にChatGPTは言う。

    「一つだけ正直に言うと、ここで書いた中身は「奇抜な新説」ではなく、これまで日本で何度も審議会・研究会・有識者会議が積み上げてきた知見を、筋が通る形に並べ直しただけなんです(その作業をChatは10秒もかからずに、やってのけた)。

    日本の問題は、知見はすでに出そろっている、しかし誰も全体を束ねて語らない、利害調整を恐れて「ぼかした表現」で終わる――この3点に尽きます。利害調整、制度設計、国際比較を「同時に」考えて語らねばなりません。」

  • 旧友 故ジョセフ・ナイ教授との議論

    (これは2025年3月に書いたもので、その後ナイ教授は亡くなられました。それでも、ここに書いてあることは今でも有効なので、一部アップデートした上でここにアップしておきます)

      

     25年2月25日のNewsweek日本で、「ソフト・パワー」論のジョゼフ・ナイ教授の論考「中国との新冷戦でアメリカが優位な訳」を読んだ。彼は、総合的に見て米国の優位は変わらない、特に同盟国やソフト・パワーを持っている点で、米国は中国に優る、と言っている。

    ボストンにいた時代、彼とは時々「意見を交換」した(まず彼が口早にこちらを「口頭試問」して、合格すると相手をしてくれるという感じだったが)。なつかしい。久しぶりに、議論をしかけてみる。

       

    筆者はこれまでずっと日米同盟を支持してきたが―経済・安保面で日本に必要、かつ戦後日本の自由・民主主義はいいものだと思うので―、トランプ大統領のしていることには懸念を覚えている。彼は、戦後の世界の枠組みは米国に不利なものになってきたとして、これを壊しかねないからだ。

    戦後、米国をハブに結成されたNATO、日米安保条約等の同盟体制は、ソ連・中国が専制主義の体制を周辺に力で広げようとするのに対抗して結成されたものである。欧州では東欧がソ連の手に落ちたし、アジアでは朝鮮戦争が起きた。

    だからこそ、米ソ冷戦や今の米中対立が起きているのだ。ところが、トランプ大統領のやり方は乱暴であり、海外では領土、利権を獲得しようとする姿勢を隠さない。中国、ロシアがしてきたことと差はないのである。

        

    これでは米国の外交は、単なる力、つまり世界最大の輸入市場(消費の規模は中国の二倍強)であること、ナイ教授の言うように「世界基軸通貨」であるドルを持っていること、そして軍事力によることになってしまう。モラル上の米国の優位、つまり自由と民主主義の旗手という建前、そしてナイ教授のいうソフトパワーはなくなって、米国は単に力と打算で外国との関係を結ぶことになる。欧州も日本も自分で自分の身を守れ、自分の力と才覚で世界をわたっていけ、ということになる。

        

    台頭する中国のソフトパワー

         

    筆者はこれまで、全体主義中国の文化が日本、そして世界の青年の気を引くことなどあり得ないと思ってきた。しかし生活水準が上がったことで中国人のマインドも現代化し、アニメやコンピューター・ゲームでは日本の技術も吸収し、他ならぬ日本でさえ市場を奪うようになっている。中国は、日本の青年にとって当たり前の存在になってきている。

        

    こうして同盟が相対的な存在になったところに、米国自身の力も落ちてきている。バイデン政権そしてトランプ政権は製造業の復活に努めてきたが、バイデン時代の補助金や、トランプ時代の関税引き上げでは米国製造業は復活しないだろう。株主が短期的利益を求めるために、企業が長期的視野からの投資ができなくなっていること、同じ理由から企業が利益率至上で過度の合理化を行い、製品の質を下げてしまうことなど、構造的な問題の修正が必要なのだ。

        

    米国の力の大きな柱である軍は、今方向を見失っている。「自由と民主主義のために、同盟諸国と共に」という、これまでの旗印が畳まれてしまった今、海外の米軍は何となくよりどころのない気分だろう。軍に入ろうという若者は減少し、新兵器の開発は一部の大企業に集中して小回りの利かないものとなり、建艦能力は失われて韓国の造船企業に資本参加を得る有様である。

    これまで米国の一部―「ネオコン」と呼ばれた―は、優越感、あるいは戦略に基づき、「民主主義の普及」を旗印に途上国の政権を倒しては、かえって混乱と米国への警戒心を呼んできた。トランプ政権がこれを止めたのはいいことだが、代わってガザを購入して住民を追い出すとか、グリーンランドを購入するとか、先の見通しもなしにベネズエラ、イランの指導者を武力で除去するのでは幻滅だ。

     こうした時代日本としては、自前の防衛力を強めること、中国との過度の対立を避ける―とは言っても、国内の自由で民主的な体制は譲らない―ことが大事。そして武力で他者の権利を侵害する国を抑えるような仕組みを、世界で作っていきたい。

     親愛なるジョー、こういう方向で今後も近代の文明を守っていきたいと思います。

  • 高市自民の大勝ちでも、日本はタカ派にならない

    (これは日本英語交流連盟ESUJのサイトにアップした記事の日本語原文です)

    2月8日、衆議院の総選挙があった。衆議院は任期をまだ3年弱残していたが、昨年10月に議会で選ばれたばかりの高市総理は、「自分が総理でいいのかどうか、国民の審判を仰ぎたい」と宣言した上で、国会を解散(日本の憲法では総理大臣が衆院解散権を実質的に握る、とされてきた)した。

     選挙の結果、自民党は議席の68%(316議席)、つまり日本史上初めて一党が議席の3分の2を獲得する快挙を成し遂げた。選挙前の衆院で議席の32%を握っていた立憲民主党、5%を握っていた公明党は、今回選挙では統合して中道改革連合を名乗って臨んだが、合計で議席の10.5%を占めるだけという、惨めな存在に転落してしまった。残りの21.5%の議席は7の新旧政党によって割拠されている。

      

     前回2024年の総選挙と比べてみると、自民党は小選挙区(289議席を獲得)、比例代表(同176議席)とも、得票率を約10%も引き上げ、小選挙区では実に50%弱の得票率を挙げている。しかし得票率50%(比例では38%)で小選挙区の議席の86%もを得たのは、小選挙区の魔法、つまり一区から一名しか選ばれないためである。今回の魔法は、高市総理の人気(明るくて、言うことが明確だ、そして以前の安倍総理と同じく積極財政で経済と暮らしを良くしてくれるだろう、という期待)、そして野党が基本的に退潮している中で、次のように戦術を間違えたことにある。

      

    つまり最大野党である立憲民主党は、2012年に政権を失って以来(当時は民主党)、支持率の低下、日常活動を支えている労働組合の衰退に悩み、一方、長年自民党と連立を組んできた公明党は、日常活動を支えている仏教の一派「創価学会」信者の老齢化と減少で悩んでいたのだが、それまで公明党との関係が良好でなかった高市早苗氏が総理に選ばれたのを契機に連立を離脱した。そして総選挙の直前に、両党は統合して中道改革連合を名乗り(参院では別の党のまま)、小選挙区は旧立憲民主党の候補、比例リストの上位は旧公明党の候補が独占することとした。

    自公連立の時代には、小選挙区の自民党候補は公明党支持者の票1万票程度を回してもらって当選してきた。今回はこの1万が消えて対抗候補の旧立民に回りかねない、という危機だったのだが、ふたを開けてみると、比例区の旧公明党候補は全員当選したのに比し、小選挙区で旧立民の候補は7名しか当選しなかったのである。右二党は、選挙前の合計172議席を実に49議席に激減させたのである。

      

    「なんでもできる」高市政権

      

    議席の3分の2というのは、自民党独裁を可能にする数字である。憲法に違反していない限り、自民党は自分の望む法案を採択できることになるからである。衆議院では法案を容易に可決できるし、参院で(ここでは自民党は40%強の議席しか持っておらず、連立与党「維新」の助けを得てやっと56%)否決されても、差戻しの衆院での採決で3分の2以上の票を得ることができれば、成立する。

    この手が効かないのは憲法改正だけで、これは衆院、参院両方で各々3分の2以上の賛成を必要としている。しかし参院でも、野党の一部を引きこめば、3分の2にぎりぎり届き得る。戦後、米占領軍当局に憲法草案を押し付けられたという意識のある自民党は、憲法改正を党是としている。ただそれは、日本を戦前の専制・帝国主義に戻すというのではなく、自衛隊を軍隊と改称して憲法上の裏付けを与え、かつ自衛のための武力の行使を明文で認めるという、他の独立国では当たり前のものに変えるだけの話しである。

      

    なお、「核兵器を持たない。作らない。持ち込ませない」という、いわゆる非核三原則はもともと法律でさえない(衆議院決議)ので、最後の「持ち込ませない」という点から緩和(但し陸上配備ではなく、核兵器を搭載した米艦船が日本の港に寄港する程度)されていくだろう。ただ、米国は日本に持ち込めるような核兵器を未だ開発中である(一度トマホークを完全に撤退させている)ので、差し迫った問題ではない。

      

    日本世論のタカ化ではない

      

    以上、今回選挙の結果は、日本世論のタカ化を意味するものではないことがおわかりいただけたと思う。青年は戦争を嫌い、自衛隊に応募する者は減少している。徴兵制の復活などは、非現実的な話しである。

    国民は何より生活の安定と政治の浄化を求めており、今回選挙では、安倍直系であることを強調して積極財政、防衛力強化、政治資金の浄化、秩序ある移民政策等をはっきり言い切る高市総理に賭けたのである。

      

    大勝の後には危機が訪れやすい。高市総理は独断で重要な発言、決定を行うことがあり、それで一度つまずくと自民党内外での批判が広がる。マスコミの中で自民党、特に高市総理に敵対するものは、政権関係者の醜聞を掘り起こしていくだろう。女性の多くは女性宰相の出現を喜んでいるが、高市総理を嫌う女性もまた多い。

      

    高市外交はタカではない

      

     高市総理は以前からタカ派、つまり日米同盟にべったりで中韓には厳しいものと思われている。同総理の支持層の一部には、反中・反韓を旗印にする者がいる。しかし彼女自身は、もっと柔軟だろう。韓国の李在民大統領とは既に、緊密な信頼関係を構築している。韓国の社会も日本の社会も変わってきて、双方への親近感が増大している。

      

     台湾防衛について高市総理は最近、国会で野党に挑発されて勇み足の答弁をしたが(実際には、日本が単独で台湾を防衛できると思っている者は日本にはいない)、中国とは11月の会談で総理が習近平国家主席に言ったように、「戦略的互恵」から一歩も逸脱していない。トランプの4月訪中を前にして行われる高市総理の訪米では、その点が明らかになるだろう。日米双方とも中国を協力、地域の安定維持に目がけて、引き込んでいく姿勢を打ち出すといいと思う。

      

     高市総理は目下、「西側」では最も強い国内政治基盤を持つ指導者となっている。「極右」と言われながら、強い党内・国内基盤を築いた後は、EU正統派の立場を持しているイタリアのメローニ首相にそれは似ている。東の高市、西のメローニと言おうか。願わくは日伊双方ともお家芸の、短期政権の繰り返しには戻らないで欲しい。

  • トランプ関税の敗北と、始まったトランプのスパイラル下降と、起死回生の一発狙い

    2月20日、米最高裁は、昨年4月以来のいわゆるトランプ関税は違法、との判断を示した。元々1月初めには出ると予想されていたのが、おそらく政府側からの内々の要請で、ここまで引き延ばされてきたのだろう。

    それでもこれは、「米国の憲法=法がポピュリズム・独裁に勝った」こと、米国の民主主義が当面守られたことを意味する、歴史に残る出来事だ。最高裁判事は全部で9名。うち保守系と見られるのが6名で、そのうち3名はトランプ大統領が一期目に指名したものだ。この3名中2名が今回の判決に名を連ねたということが大きい。

    もっとも、このトランプ関税で米国内製造業が繁栄し、賃金も上がっていれば、最高裁もこの判決を出すのをためらったことだろう。今回はトランプ関税がインフレに油を注ぎ、国民が不満を感じているという経済・社会状況が最高裁の判断をプッシュしたと言える。

    この判決で、米国政府は推計で年間約2000億ドルの関税収入を失う。代わって一律10%(トランプはその後15%だとSNSに書き込んだが、これはまだ法的効力を持っていない)の輸入関税をかけるのだが、いずれにしても2000億ドルは米国政府歳入約5兆ドルの4%でしかなく、金融市場に大きな影響は与えていない。株価は23日大きく下げたが、これが当面のトレンドになるかどうかは、まだわからない。

      

    トランプの下降スパイラル

      

    トランプはこれまで、「最高裁は俺のもの」と思ってきたから、今回は予想外の痛手で、これから何をするにしても、訴訟されるリスクを計算しなければならず、切っ先は鈍ることだろう。海外で起死回生の一発狙いの戦争に訴えようとする(当面イラン攻撃の有無が焦点)かもしれないが、これもまた最高裁に議会の軽視を指摘され得る。

    3月中旬の高市訪米はこうして、「窮地のトランプに救いの手を差し伸べる」ものになるか、「窮地のトランプにかみつかれて、血の最後の一滴まで吸い取られる」ことになるか、見もの。

  • ウクライナ戦争と三つの選挙


    以下は、「ボストーク通信」最新号に投稿した記事です。9月のロシア議会選挙、11月の米国中間選挙がウクライナ停戦を早める方向で作用するだろう、停戦はプーチン、ゼレンスキーの退陣を意味するが、彼らの後はどうなるか、という話です。

    ウクライナ戦争は5 年目に入る。19世紀のクリミア戦争が2 年半、20世紀ナチス・ドイツとの戦争が4年余だったのに比べても、長期戦になる。ウクライナ、ロシアとも兵力はよれよれ。経済もロシアの不調が目立ってきた。

    この中で、ロシア、米国での二つの選挙が停戦を速めるかもしれないし、停戦が実現すれば、ウクライナも戒厳令を解除して大統領選を実施するだろう。

    トランプへの支持率低下と米国中間選挙

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    まず、11月の米国中間選挙がウクライナ戦争にどのような影響を与えるかについて。トランプの支持率はこの1年ほぼ下落を続け、2月初旬には40%弱になっている(不支持が56%――Economist)。特に1月には、米国内で不法移民の摘発に当たっていた連邦移民関税執行局(ICE)の要員が、その乱暴なやり方に抗議するミネアポリスの一般市民(白人)2名を射殺。当局は口を拭うも、射殺の現場の動画がいくつもSNSに流されて、当局の責任は免れない状況となっている。この中でトランプは既に、このままでは中間選挙で下院の多数議席を失って、俺は弾劾食らうぜ」と公言している。彼は第一期、実際二回も弾劾を受けている。上院の3分の2がこれを支持することがなかったから、彼は大統領職に居座ったのだ。

    と言うわけで、ワシントンはもうすぐ中間選挙一色となる。6日、ウクライナのゼレンスキー大統領は言った。「米国は、6月までには戦争を止めろと言っている。」と。そこまでが、米国が関与できるタイム・リミットというわけだ。

    こうなるとウクライナには不利になる。ロシア軍を今の占領地から追い返すことは到底できず、占領を既定事実として承認せざるを得なくなる。ロシアにとって有利な停戦だ。

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    ロシアの議会総選挙

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    だがロシアには兵力だけでなく、戦車、大砲、砲弾でさえ不足しているという問題がある。ミサイル、ドローンは増産しているが、これでは陸上の占領地を拡大することはできない。そして9月には、議会下院の選挙がある。普段ならば、与党「統一」が大勝ちするのだが、今回はどうなるかわからない。若者は戦争にひっぱられるのを嫌がっているし(これまで当局は、モスクワやサンクト・ペテルブルク等大都市の青年を動員するのを控えてきた)、年末以降半分に下落した原油価格で政府歳入は大幅に減り(1月の原油関連歳入は、前年同期の半分に減少している )財政赤字は確実に増える。

    2011年12月から翌年5月にかけモスクワ等では、市民の集会が相次ぎ、議会選挙の開票結果の「捏造」、そしてプーチンの大統領職への返り咲きへの反対の意思を表明した。こうした声を一つにまとめることのできる野党勢力がいないのが、政権にとっては救いだが、投票がボイコットされ、投票率が極端に下がった場合には(それでも選挙は成立する)、ロシアは世界で恥をかき、ミシュースチン首相以下の政府は退陣を余儀なくされるかもしれない。

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    このような事態を防ぐために当局が何をし得るかというと、まず戦闘を激化してウクライナから取れるだけ取った時点で和平をはかるのが一つ、次に米国が求めるように6月までに停戦するのがもう一つの策。この場合、米国がウクライナの要求を抑えてくれるだろうが、ドネツ州等全面譲渡などロシアの要求も満たされないだろう。そうすると、ロシアは実質的に負けたことになるので、対応は慎重でなければいけない。

    1905年、日ロ戦争の停戦で、ロシア勝利を信じていたロシア国民は失望し、生活苦を訴えるデモを組織して、当局に狙撃され(「血の日曜日事件」)、暴徒化して第1次ロシア革命を演出。国会創設等を当局に呑ませたのだ。

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    そうならないよう、当局は、もし早期停戦をもくろむなら、今からプーチンの後継者を準備していかないといけない。1999年12月、エリツィンが大統領職をプーチンに禅譲した時は、後者を8月に首相に任命してチェチェン弾圧戦争を主導させ、人気を空前のレベルに上げておいたのである。

    そのうえで、停戦協定成立と同時に、プーチンは表向き、勝利を宣言して「若い世代Aに道を譲る」と言えばいい。彼は大統領職を辞しても、国家を指導する立場からは去らず、このような日に備えて腹心のデューミン補佐官に準備させてきた「国家評議会」の議長に自ら就任。若い大統領を「指導」しつつ、生きていくことになろう。

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    この評議会は、2020年の憲法改正で初めて正式に登場したが、「重要な問題につき諸省庁を調整」とあるだけの代物なのだ。この場合、プーチンに代わって大統領--実権はプーチンが持って行ってしまうーーに成り得る者は、何人か口端にのぼっている。まず、憲法の規定上は、ミシュースチン首相が大統領代行を務めることになる。彼は国税庁長官出身だが、ITに詳しい。ITを駆使して収税事務を合理化。集税率を大きく上げた辣腕の行政家。外交面では経験が薄い。次の「有資格」者について憲法上の規定はない。今、インターネット上ではメドベジェフ元大統領、デューミン大統領補佐官、ソビャーニン・モスクワ市長などの名が挙がっているが、いずれも決定打に欠ける。

    1999年12月エリツィン大統領から「突如」権力を禅譲された当時のプーチン首相は、その前の数か月、首相としては異例のチェチェン武力弾圧を指揮、その容赦ない徹底的な指導ぶりで(首都グローズヌイは焦土になった)国内の支持率を異常に高めていたのだ。これは、9月初め、モスクワのアパートなどが爆破されたのを、チェチェン独立派の犯行と決めつけての行動だった。そしてこの爆破は当局が仕組んだものであることを、豪商ベレゾフスキーは後に暴露している。

     だから今回も、大きな事件が起きて、その処理を一手に任される人物が出てきたら、権力交代の準備であることを疑わないといけない。

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    「若返りでロシアは自由化」の妄想

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    西側はソ連時代から、「この国の若年世代は西側を良く知っている。当局による弾圧ももうないので、彼らが権力を握ればロシアも自由化するだろう」という希望的観測を、もう何十年も言い続けている。今回も、そのような論調が出始めている。

    しかしプーチンをかついで国家の権力構造を維持しているのは旧KGBなので、指導者の交代は、彼らが自分達として安心できる者を指導者に推戴する、という話しで終わる。ロシアでは旧KGBだけが、全国、全社会、組織・企業の津々浦々に要員を配置し、国を取りまとめていける力を持っているのである。

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    1999年12月、エリツィンがプーチンに権力を禅譲した時がその好例。プーチンの本職はKGBだったし、首相になる前は、まさにKGBの後身、国家保安庁の長官を務めていたのである。筆者は当時モスクワにいたが、エリツィン周辺が当時どれだけKGBに気を使い、KGBの復讐を恐れていたかを覚えている。何しろ、エリツィン一派はソ連崩壊の前後、KGBを実質的に解体して政治・経済両面での「改革」を進めるも、実際にはガバナンスを破壊し、1998年8月にはロシアにデフォールトという国際的な屈辱を与えたのだから。

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    どの国でも、自由とか民主主義とか理念で動く者は少数の恵まれた人たち。大多数は(日本も同じだが)「あの人、あの党なら何かくれるかもしれない。生活を良くしてくれるかもしれない」という徒な期待で投票するものだ。

    もし旧KGBが権力を失って、「自由化」が実現すると、ロシアでは経済の安定、治安、そしてロシア人にとって最も重要な「コネ」が失われ、大混乱に陥るだろう。それが1990年代、ソ連崩壊と同時に起きたことである。

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    停戦後のウクライナ

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    停戦が実現すれば、ウクライナでは大統領、議会の選挙が行われる。停戦でウクライナは何かを譲らざるを得ないだろうから、ゼレンスキーはその責を取って引退するだろう。次の大統領になり得るのは、世論調査に基づくならば、ウクライナ戦争の初期に軍の総司令官を務め、徹底抗戦を主張するゼレンスキーに抵抗して解任された(その後、英国での大使)ザルージヌイがトップを走る。1月の調査では、2位に、軍の諜報局長官から大統領府長官に抜擢されたブダーノフが台頭している 。彼は前任のイェルマークが徹底抗戦を強硬に主張して、西側とも対立気味であったのと比べて、現実的で西側での受けもよい。

     そして誰が大統領になるにせよ、その任務はウクライナの再建・復興である。何しろ、ウクライナの人口は独立時の5000万人強が、海外への流出などで、今では4000万人弱に減少しているのである 。西側の復興投資は、海外のウクライナ人の祖国復帰を促す分野に向けられるべきだし、ウクライナでこういう場合良く起きる、政治家・官僚などによる資金横領を防ぐ手立ても講じておくべきだ。

  • Japan World Trends再開!

    このブログを再スタートするに当たっての一言

    このブログは2024年12月まで、約20年間にわたって存在していたものです。1年間消えていたのを、Urban Connectionsの皆様の助けを得て、今日再開します。消えた理由は末尾にあるように、技術的要因によるものです。

    折しも、トランプ大統領の(2度目の)登場で、世界のルールは激変。自由・民主主義・市場経済という「近代」は、米国でもEUでも、主役の地位を失いつつあります。またトランプがこれまでの同盟システムをないがしろにし、大国同士の取り引きで世界を動かしていこうとしている今、日米同盟もその将来が大いに問われるに至っています。

    そういう状況で心機一転、多言語ブログwww.japan-world-trends.comをゼロから再スタートさせることは、むしろ良かったのかもしれません。新時代の論考をアップしていきます。ただ、過去の論考も、記録として役に立ちそうなものはこちらの新版にもアップしていきます。

    このブログを主宰しているのは、河東哲夫。日本人の元外交官。元役人ではありますが、権威に縛られない、自由な生き方、ものの見方をして生きてきた人間です。もともと個人主義的性向が強かったのが、日本の大学を卒業後、ハーヴァード大学に留学して1970年代の米国のリベラルな風潮に触れ、そのあとモスクワ大学に留学してプーシキンやチェーホフの文学を研究、モスクワ大学で知り合ったデンマークの女性と結婚し、ドイツやスウェーデンに在勤したことで、西欧の近代文明というものを明確に意識するようになりました。

    河東のものの見方は、2025年出版の「『自由と民主』の世界史―失われた近代を求めて」に盛られていますが、次を基本としています。

    ・人間の自由・権利を守ること。

     と同時に、白人優越主義であれ、Eurocentrismであれ、反面、有色人種の夜郎自大的な自己主張であれ、現実・事実から離れた議論を展開して、不必要な紛争を起こすのを防ぐ。

    ・戦前の満州事変とそれ以降のような愚行を決して繰り返さないこと。

     つまり軍人、そして一部の政治家、役人、思想家たちの夜郎自大の言動に世論が乗って、対米戦争を不可避なものとしたようなことを繰り返さない。

    ・日本の経済力・活力を維持する。

    ・「国家」の役割を最小限のものに止める。

    ・民主主義が衆愚主義に劣化するのを防ぐ。

    今、世界文明はロボットやAIの普及で、これまでとは異次元での展開を示そうとしています。人間自身も、脳波の操作、遺伝子の改造、サイボーグの登場などで、生物としてこれまでとは違う存在になっていきます。

    このブログの主宰者、河東はあと何年生きられるかわかりませんが、このブログでこの文明の一大転換点の有様を記録に残りしていくことにします。

    そしてこのブログ再開の数日前2月14日に、弟の河東仁(かわとうまさし)が線維性肺炎で、71歳の若さで亡くなりました。「日本の夢信仰 ―― 宗教学から見た日本精神史」でサントリー学芸賞を受けたことのある、宗教学者でした。いつかは二人で何か本を出そうと思っていただけに残念です。彼の遺稿など探して、折に触れてこのブログで紹介していきたいと思っています。

    なお、このブログが1年間消えていたのは、プロヴァイダーに料金を払うのを失念しているうちにドメインの接続を外されてしまい、回復を試みるも、プロヴァイダーがほぼ倒産して機能せず、結果として20年間の数千に及ぶ記事を抱えたブログはサイバー宇宙のどこかに霧散してしまったわけです。

    と思っていましたら、過去のデータは、2023年11月29日時点でのものを国会図書館が保存してくれており、それはhttp://web.archive.orgを開けてwww.japan-world-trends.comで検索、表示されるカレンダーから2023年11月29日を選択すると出てきます。