2月20日、米最高裁は、昨年4月以来のいわゆるトランプ関税は違法、との判断を示した。元々1月初めには出ると予想されていたのが、おそらく政府側からの内々の要請で、ここまで引き延ばされてきたのだろう。
それでもこれは、「米国の憲法=法がポピュリズム・独裁に勝った」こと、米国の民主主義が当面守られたことを意味する、歴史に残る出来事だ。最高裁判事は全部で9名。うち保守系と見られるのが6名で、そのうち3名はトランプ大統領が一期目に指名したものだ。この3名中2名が今回の判決に名を連ねたということが大きい。
もっとも、このトランプ関税で米国内製造業が繁栄し、賃金も上がっていれば、最高裁もこの判決を出すのをためらったことだろう。今回はトランプ関税がインフレに油を注ぎ、国民が不満を感じているという経済・社会状況が最高裁の判断をプッシュしたと言える。
この判決で、米国政府は推計で年間約2000億ドルの関税収入を失う。代わって一律10%(トランプはその後15%だとSNSに書き込んだが、これはまだ法的効力を持っていない)の輸入関税をかけるのだが、いずれにしても2000億ドルは米国政府歳入約5兆ドルの4%でしかなく、金融市場に大きな影響は与えていない。株価は23日大きく下げたが、これが当面のトレンドになるかどうかは、まだわからない。
トランプの下降スパイラル
トランプはこれまで、「最高裁は俺のもの」と思ってきたから、今回は予想外の痛手で、これから何をするにしても、訴訟されるリスクを計算しなければならず、切っ先は鈍ることだろう。海外で起死回生の一発狙いの戦争に訴えようとする(当面イラン攻撃の有無が焦点)かもしれないが、これもまた最高裁に議会の軽視を指摘され得る。
3月中旬の高市訪米はこうして、「窮地のトランプに救いの手を差し伸べる」ものになるか、「窮地のトランプにかみつかれて、血の最後の一滴まで吸い取られる」ことになるか、見もの。



