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投稿者: akiokawato

  • 米国のロシア軽油輸入再開をめぐる空騒ぎ

    当面の世界を変えるのは、米国のロシア軽油輸入より、米国中間選挙の結果

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    10月9日、トランプはプーチンと電話会談。プーチンの誕生日(7日)祝いのはずだったが、時差とプーチン外遊のため9日にずれ込んだもの。トランプは、9月中旬ロシアの総選挙後には再開するという口約束があった、ウクライナ停戦に関するウクライナ・ロシア・米国三者協議の期日で合意、発表できる、と踏んだのだろう。

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    ロシアからの軽油輸入再開、波紋を呼ぶ

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    大統領補佐官ウシャコフによれば、会談は1時間半にも及んだ。それでも両首脳は受話器を置こうとしなかったので、ウシャコフが介入して両者が同時に置くほどだった(このあたりは10月10日付戦略文化財団記事)。しかし、プーチンは三者協議再開には同意しなかったのだ。ウシャコフによれば、選挙当日、ウクライナが一連のドローン攻撃をしかけてきたことで、プーチンは怒っている。

    三者会談再開は成らなかったが、トランプはそれでも中間選挙に向けて選挙民に「売れる」材料をプーチンから手に入れた(と思った)。それは、「ロシアが大量の軽油を米国、及び全世界に輸出する」ということ。クレムリンの発表文では曖昧模糊としているのだが、トランプのSNSでは「ロシアが軽油を直ちに30万トン。時間をおいて50万トン、米国に輸出する」のだそうだ。米側は手回し良く(ということは事前の根回しができていたのだろう)財務省が直ちに同日、対ロ制裁の例外措置としてロシア産軽油の輸入などを半年間認める指示を発出している。

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    トランプは親友の故リンゼイ・グラム上院議員発案の対ロシア制裁強化、通称「地獄の制裁法案」に署名したばかりで、これはロシアの原油を輸入した国には高関税をかけることを定めたものなのだが、トランプは自らこれに反することをやってのけた。おそらく農繁期の農業地帯からトラクターなどに使うディーゼルの価格が急騰していることで、突き上げを食らっていたのだろう。

    米国は軽油を輸出もするが、時期と場所によっては輸入もするという国。2025年の輸入量は5,798.9万バレル(EIA)。トランプの言う「直ちに30万トン」というのは約225万バレルに相当するので、年間輸入量の約4%にしかならない。ロシアは夏の農繁期には軽油の輸出を停止することがあり、ウクライナに製油所を破壊された今年は7月から10月末まで軽油輸出を禁止していたほどである。それほど輸出余力はないだろう。結局、世界の軽油市況に少しアナウンス効果がある程度で終わったようだ。米国での軽油先物価格は会談直後に5%下がったが、13日には4.5%上昇してほぼ以前の水準に復帰している(Wall Street Journal等)。

    よせばいいのにトランプは、プーチンとの会談の翌日、記者たちを前にゼレンスキーを罵った。「ウクライナがロシアの製油所を破壊するから、石油価格が上がるのだ」、「ゼレンスキーは早く交代したらいい」と。

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    実体はあまりない、この軽油輸出合意をめぐって、ちょっとした空騒ぎが、ロシア、ウクライナ、欧州の論壇で生じている。「トランプ米国は自分の利益のためにウクライナを捨てた。第2次大戦の時、ソ連と米国が緊密に協力した時を思い出す。その枢軸関係の復活だ」というわけである。

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    ウクライナ戦争は終わらない

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    確かに、米国での中間選挙を前に、ウクライナとロシアは双方への攻撃を少し手控えるかもしれない。米国のSpaceXがStarlinkを止めれば、戦場のウクライナ軍は通信手段を失うし、ロシア領内の標的の所在地もわからなくなる(西欧の企業で衛星情報を提供しているところもあるが)。

    しかしそれも、米国中間選挙までのことだ。米欧離間が決定的となって、NATOが崩壊するところまではいかない。冗談めかして言うなら、ロシアも欧州も米国も、NATOが崩壊する前にまず、自分達が個々に、政治的・経済的にぐじゅぐじゅに崩れて行ってしまうかもしれない。

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    特にロシアの経済は、これまで軍需景気で偽りの繁栄を演出してきたが、まさにその軍需で諸方に資金不足が発生。経済は限界症状を見せ始めている。高金利で沈静したインフレは、利下げとともに再び上昇して約6%に達しているが、食料品の値上がりはそれをはるかに上回る。それでも、中銀は利上げ再開には踏み切れないでいる。金利を上げれば、経済界から再び大変な不満の声が沸き上がるだろうからだ。

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    軍需景気にもかかわらず、と言うか軍需偏重のために成長率は低下を続け、それに伴って財政赤字は膨張の一途。ロシアの政府債務残高は、2026年末にGDPの約20%となり、2026年の債務返済費用は連邦予算支出の8.8%に達する見通し。これは日米欧に比べればはるかに「健全な」水準にあるのだが、問題はロシアは資本を国内だけで集めざるを得ず、その資本の量が限られているために、国債利回りが急上昇していることだ。7月には財務省は国債の新規入札を延期している。高利回りのままでは、将来の返済費用が膨張するからである。

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    地方財政も逼迫している。連邦政府は地方政府の財源を奪う一方で、新兵募集の費用などを押し付けてくるからである。2025年には89の州級自治体のうち、73が赤字になっている。連邦政府が助けてくれない中で、民間銀行からの融資で凌ぐ地方政府は増えている。その額は2025年、3倍に増えて、6760億ルーブルに達している。現在の政策金利は14%なのである。

    だから政府は今年1月付加価値税を2%上げて22%とし、電気・ガス等の公共料金は27,9%も引き上げた。大きな利益を上げている資源関連企業などからは、上納金を巻き上げている。

    そして今年の国防費は、予算を40%超える4~5兆ルーブルになることが見込まれている。これだけで、4兆ルーブルほどの起債をしないといけなくなる。

    ロシア経済も、戦争につじつまを合わせることがもう無理になってきたのだ。

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    国際政治地図を変えるのは「米ロ結託」よりも米国中間選挙

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    欧州諸国は、以前ならウクライナを犠牲にしてでもロシアを手なずけておくやり方を選んだだろうが(それが2014年の「ミンスク合意」の意味)、ウクライナ戦争で、ロシアは欧州諸国にとってのリアルな脅威となった。従ってEU諸国と英国の政府、そして民間企業はウクライナ支援を続けるだろう。

    米国も、バイデン時代に約束した支援でまだ残っているものがあるし、米国の民間企業はそれぞれ自分たちの思惑でウクライナへの支援を続ける。SpaceXのStarlinkが提供する戦場での通信インフラ、衛星からの情報はウクライナ軍にとって不可欠なものである一方、SpaceXにとっても実際の戦争で用いた場合のデータをとれる貴重な場だ。それはウクライナ戦争の初期から参入している米国のAnduril Industriesや、Fedorov前国防相の下で活躍したPalantir社(システムMaven)にしても、同じこと。

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    だから今回の軽油事件で米ロ枢軸が成立して、ウクライナを蹂躙し、欧州を敵視することは起きない。ウクライナ戦争は、一気に停戦が成立するのではなく、エネルギー関連施設への攻撃を相互に控えるなどの合意が積み重なって温度を下げ、2014年のミンスク合意の後のような「凍結された紛争」の様相を呈することになるのだろう。

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    (これの続きは19日発刊予定の「ボストーク通信」をご覧ください)

  • トランプは非常事態を宣言して中間選挙を延期:無理

    中間選挙までもう時間はない。トランプ共和党は苦戦を伝えられる。中には、彼は非常事態を宣言して中間選挙を延期するかも、と言う人も出てきている。ウクライナでは、ゼレンスキー大統領が非常事態を宣言したまま、選挙を延期し続けている。

    では、トランプもそれにならって・・・と思って、このシナリオの法的な可能性をChatGPTに質してみた。以前も調べた記憶があるが、鮮明でないのでもう一度。

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    結論は「非常事態を宣言することはできる。しかし中間選挙の日は連邦法で定められているので、これを延期するにはその改正が必要となる。改正は無理だから延期もできない。しかし非常事態を宣言することで、選挙や開票を混乱させることはできる」ということ。

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    ついでに言うなら、中間選挙の結果、下院で民主党が多数を取れば、大統領弾劾が始まるだろう。ただ、上院で3分の2以上を取らないと、弾劾は成立しない。1974年ニクソン大統領が辞任したのは、下院司法委員会で弾劾発議が可決され、上院でも共和党議員の寝返りが増えて弾劾確実となった時点。今回そうなると、トランプ氏は、世界をもう騒がせない勇断を下したということで、ノーベル平和賞を受けることになるだろう。

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    以下は、非常事態についてのChatGPTの解説を編集したもの。

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    小生質問:

    「トランプ関連なのだが、中間選挙を回避するために、彼が緊急事態を発令するという観測もある。そこで憲法あるいは他の法律で、大統領が緊急事態を発令する要件、そして手続きはどう定められているか、教えてくれないか? そして米国史上、大統領が緊急事態を発令した実例も教えて欲しい」

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    ChatGPT回答:

    大統領が緊急事態を宣言することは比較的容易です。しかし、それによって中間選挙を延期・中止できるわけではありません。 この二つは分けて考える必要があります。

    ① 憲法・法律上の根拠と要件

    米国憲法は大統領に、「緊急事態」を宣言すれば、憲法や法律の制約を一括して停止できるという一般的な権限を与えていません。現在の基本的な枠組みは、1976年の「国家緊急事態法(National Emergencies Act、NEA)」です。議会が個々の法律で認めた特別な権限を、緊急事態の宣言によって使えるようにする仕組みです。

    意外なのは、この法律自体は「国家緊急事態」を定義していないことです。「戦争、反乱、大災害の場合だけ」といった限定的な要件もなく、宣言に議会の事前承認は要りません。そのため、何を緊急事態と認定するかについて、大統領には広い裁量があります。

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    ②それでも、現行法上、大統領が緊急事態宣言だけで中間選挙を全国的に延期・中止する権限はありません。

    憲法第1条第4節は、議会選挙の日時・場所・方法について、州議会と連邦議会に権限を与えています。連邦法は、議会選挙日を「偶数年の11月第1月曜日の次の火曜日」と定めており、今年なら2026年11月3日です。全国的に日程を変更するには、連邦議会による立法が必要になります。災害等による局地的な投票の延長・再実施は、別途、州法や裁判所の判断の問題になります。

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    ③歴史上の代表的な実例

    1976年以前の宣言と、それ以後の国家緊急事態法に基づく宣言では制度が違いますが、代表例は次のとおりです。

    大統領・宣言日緊急事態と主な措置
    フランクリン・ルーズベルト、1933年3月6日大恐慌下の銀行危機。全国の銀行を一時休業させ、銀行取引を停止する「銀行休日」を命じた。
    トルーマン、1950年12月16日朝鮮戦争と共産圏の脅威を理由に宣言。軍事・民間防衛の増強を進めた。
    カーター、1979年11月14日イランの米大使館人質事件への対応。米国の管轄下にあるイラン政府資産を凍結した。
    ジョージ・W・ブッシュ、2001年9月14日9・11テロを受けて宣言。予備役の招集など、軍事関係の特別権限を発動した。
    トランプ、2019年2月15日メキシコ国境の危機を理由に宣言。軍事建設に関する特別権限を使い、国境壁建設へ資金を振り向ける措置を進めた。
    トランプ、2020年3月13日新型コロナ流行について宣言。医療制度の一部要件を緩和する権限などを使えるようにした。

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    トランプは、外国による米国選挙への干渉についても、2018年9月12日に緊急事態を宣言しています。ただし、これは外国の干渉に対する経済制裁の枠組みであって、選挙を止める権限ではありません。

    私の見立てでは、警戒すべきなのは、宣言一本で合法的に選挙を取り消すことよりも、緊急事態を口実に選挙運営へ介入し、投票や集計を混乱させることです。それを試みる可能性と、法律上それが許されることとは、別の問題です。

  • モスクワ定点観測3 2005年夏 膨れる財布、うつろな心

    ――膨れる財布、うつろな心

                                 

    ロシアとかソ連とか言うと、いつも革命とか民族戦争とか暗いことが話題になる。かと思うとテニスのシャラーポヴァのような華やかで明るいことが何の脈絡もなく突然飛び出て、それはまるでロシアのことではなかったかのように、また忘れられていく。僕もソ連時代からこの国には合計十年も住んで、「遥かなる大地」(筆名:熊野洋)という小説https://www.amazon.co.jp/%E9%81%99%E3%81%8B%E3%81%AA%E3%82%8B%E5%A4%A7%E5%9C%B0%E2%80%95%E3%82%A4%E3%83%AA%E3%83%A4%E3%83%BC%E3%81%AE%E7%89%A9%E8%AA%9E%E3%80%88%E7%AC%AC1%E9%83%A8%E3%80%89-%E7%86%8A%E9%87%8E-%E6%B4%8B/dp/4794211481/ref=sr_1_2?__mk_ja_JP=%E3%82%AB%E3%82%BF%E3%82%AB%E3%83%8A&crid=2M73U8R5JSPM7&dib=eyJ2IjoiMSJ9.MGCFm_3_ccxTdrQkWLlAaVbi2za95XG2yQ15347-OSt-d0za7imQ5TqD_9926VzzAG5TfXSvsSkJyIe8xMCqYfmLQY4HUbOJOY1zykgnMXQuGPr-gJ9ITEehpXv2Fs9BLGEaxyrVbx2qMqDbEPY9luVYxhqkqyPKF4hsHF_Vevk_vd03AGg4H3c2QjgVN0Yfa3h7bOU336JdEaHeAtiEuH3V0iQfH4lsRy8nOiYjdZ8.BBTtnM8xXum-dNkGrbYcFjbGm93Mfh4HnZ1Y7IYh17U&dib_tag=se&keywords=%E9%81%A5%E3%81%8B%E3%81%AA%E3%82%8B%E5%A4%A7%E5%9C%B0&qid=1791697077&s=books&sprefix=%E9%81%A5%E3%81%8B%E3%81%AA%E3%82%8B%E5%A4%A7%E5%9C%B0%2Cstripbooks%2C197&sr=1-2まで書いた。それなりの思い入れがある。そして今でも、毎年友人たちに会いに出かけては、この国の脈をはかっている。はるか千三百年前の昔には、自由な都市国家と市場から始まったこの国が、いつ力強い自律的発展へ向けて鼓動を再開させるのかを見るために。

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    アエロフロートに見る市場経済

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    この夏(2005年)、一年ぶりにモスクワに行った。アエロフロートのエアバスは、まるで几帳面なルフトハンザになったが如く、定時に成田のエプロンからすべり出る。市場経済化とやらが遮二無二進んでいた90年代半ばから、アエロフロートの国際便は確実に良くなった。

    機体のデザインが鮎のように優美なのはいいにしても、 「この飛行機いつまで地上を走るつもりなのか。ひょっとして・・・」と乗る人をして不安がらせた、あの懐かしいイリューシン62ももう飛んでいない。

    あれは本当に寒い飛行機で、乗ったらまず最初に棚の上から毛布をがめることが、玄人の乗り方だった。というのも、毛布の数が足りなくて、早く手に入れておかないと、上空でいくら寒いと文句を言っても、「あんた、モスクワに着いたらもっと寒いのよ。しっかりしなさい」と、妙に納得できる理屈をスチュワーデスに言われてお終いだったのだから。

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    そして90年代と思うが、アエロフロートは遂に機内食を温めて出すようになった。黒パン、冷たくて塩辛いブロイラー、半分に割ったゆで卵の上に申し訳のようになすりつけられたキャビア―――いや、イクラだったか?―――は、過去のものとなり、最初のうちこそ熱意があまって端の焦げたステーキがサーブされたりしたけれど、とにかくアエロフロートもグルメ指向になったのだ。それがこの2005年、市場経済化から既に10年もたってみると、アエロフロートの機内食も更に一層の進化を遂げている。

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    スープが出てくる。その洒落た陶器皿にはコンニャク(!)とゴボウ(!)がさりげなく浮かび、次に出されたステーキの付け合わせは、小振りながらも正真正銘、なんと球形のガンモドキだったのだ。そして米は、竹づとにくるんでゴマをふってある。

    コンニャクとかゴボーと言うと、読者の方は、「ロシア・イコール田舎」という決まり文句を思い出されて苦笑でもされるのだろうが、日本文化に能の洗練と歌舞伎の荒々しさが並存しているのと同様、ロシアにも洗練されていることこの上ない貴族文化と粗野だが温かい大衆文化が共存している。で、このアエロフロートの機内食は、その食器、盛り付け、味付け、適度な量、その他その他、まさにその洗練されている方の典型だったのだ。

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    「おいしいね」と言うと、スチュワーデスが緊張した顔で「頑張っているんです」と答える。市場経済になってから彼らは、カネ離れがよくて上得意の日本人乗客、でも終戦直後のあの苦しい頃のことなぞまるで覚えてもいないのか、「不便」という二文字を生まれたときから見たことがないような顔をして、上から目線の要求を次から次へとつきつけてくる日本人の乗客を、まるで恐れてでもいるかのようだ。ロシア人もソ連の昔は、自分の国に―――それがどんなに不便で貧しいところであっても、そんなことには気がつかないかのように―――ずいぶん自信を持っていたものだ。今のおどおどした態度がそのうち、プライドを傷つけられたことへの恨みとなって、再び猛々しいナショナリズムを噴出させないとも限らない。

    (2026年注:その後、アエロフロートの乗務員もすっかり西欧化して、日本人乗客はめっきりおとなしくなった。しかしウクライナ戦争で、アエロフロートはもう日本に飛んでこない)

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    大地の歌

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    飛行機は、モスクワ上空を旋回しながらゆっくりと下りていく。とうとうたる川、陽光をきらめかせる湖、そして清楚な白樺林に彩られたロシアの大地が見えてくると、さすがに一つの感慨にふける。歴史を知り、文学を知ると、その国の大地には意味がでてくる。領土問題解決の重要性を一向にわかってもらえない中、いい加減もう忘れようと僕が思っていたロシア。だがそれでもこの35年、かかわってきた国だ。この偉大な大地、偉大な民。遥か地平へと広がるその大地は、悠揚迫らぬその詩(うた)で、旅人をその胸へと誘う。

    だが、かつてマルクスがアメリカと同等の発展を予言したこの国は、その後どうして駄目なのだろう? アメリカ経済は南北戦争や二度の世界大戦などを契機に、大きく変貌してきた。ロシアでも戦争や内乱は数え切れないほどあった。だが、ここでは戦争は経済に被害しか与えていない。

    アメリカは個人の所有権をベースに発展した国だ。そこへ行くとロシアは、中国と同様、古来国家の比重が高すぎる。そしてその中国と比べると、ロシアには台湾や華僑のようにリスクを取って投資してくれる国外の勢力もありはしない―――。 

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    モスクワの空港では、旅券審査と税関が速くなった。今回は手荷物しかなかったから、僕はこの30年間で最短の記録的なスピードで空港を出た。だがその後がいけない。空港からの道が、なんとずっと渋滞しているではないか。

    スウェーデンの家具チェーン「IKEA」がこの街道のほとりに200米四方はあろうかという巨大な店を出したのは、今から数年前。自分で組み立てる簡素な、しかし美しい家具を山のように並べるこの店は、それ以来モスクワの中産階級のメッカになった。ロシアならではの広大な駐車場は、最新型のベンツから20年前の国産車まで、あらゆる車でいっぱいだ。そして、このようなショッピング・センターが他にも並んでいるからたまらない。僕の運転手は脇道に出たが、ここも彼が「こんなのは初めてだ」というほどの渋滞。ここらへんは農村で、他にろくな脇道もないのだ。で、結局僕は、この30年間で最長の時間をかけてホテルにたどりつき、アポイントに遅れる羽目となった。

    大衆消費社会


      ソ連時代、モスクワは整然としていた。古代ローマのように人を威圧する大きな建物、そしてだだっ広い道路にはまばらな車。それもまた、味があった。

    だが今は、喧騒そのもの。なぜかいつも埃っぽい道路脇にはしゃれたブティックやパチンコ屋のように派手なネオンのクラブが並び、道行く市民達はどこかくたびれた風情。モスクワでは90年代前半の大混乱からまだ間もないという雰囲気がまだ漂い、社会のルールもまだ完全には定まっていないから、ちゃんとした収入を確保していくには随分疲れることだろう。いったいいつまで彼らは、こうした気の張る生活を我慢できるのか。

    この15年、モスクワも変わったけれど、その間に中国の諸都市はものすごいスピードでモスクワを追い越し、一つ先の段階に行ってしまった。農村との格差とかあれこれ言われるけれど、それでもやはり中国の都市の方がロシアより所得の格差は小さくて、中産階級が主人公になっているのだ。

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    そのロシアも、エリツィン時代末期には大衆消費社会に確実に突入した。ソ連の時代、ぴかぴかに輝く西側の製品は「ドルショップ」にしかなく、特別の金券とやらを持っていない普通の市民は入り口で文字通り追っ払われていたものだ。それが90年代も終わりになると、それまでモスクワの市場をじっとうかがっていた西側やトルコの資本は次々に、IKEAのような超特大ショッピングセンターを建て始める。アメリカの郊外によくあるようなモールと全く変わらない店を、今では普通のロシア人が家族連れで歩いている。日曜ともなれば、付近の団地から住民達がぞろぞろと普段着で歩いて買い物にやってくるのだ。

    (モスクワ大学前にできたショッピング・センター。フランス資本)

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    だからロシアの庶民は、「温かく人間的だった」ソ連時代に一抹のノスタルジアを感じつつも、なんとなく雑然としがさつな今のモスクワにいい加減疲れを感じながらも、やっと手に入った便利さはもう手放したくない。

    渋滞の中、僕の運転手は言った。

    「昔はね、肉屋の羽振りの良かったことと言ったら。良い肉をとっておいて、知り合いの顧客にコネで高値で売っていたんだから。今は食べ物は何でもある。でも、昔はピオネール(共産党のボーイスカウトのようなもの)とかラーゲリ(夏の林間学校)とか社会がまとまっていた。自分もそうなりたいと思うようなお手本になる人々のことを教えられたし、社会全体で子供を育てていた感じがあったな。今は皆ばらばらで、怒りっぽくなっちゃって。俺も大変さ。会社に使われて。週末でも、呼び出されるんだ。でも、来週は家族とトルコで休暇さ」

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    インテリの倦怠感―――チェーホフの世界

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    ロシアという国は、評者がどこを見ているか、社会の如何なる階層を見ているかで、評価がまったく異なってくる。昨今の石油ブームもあって、地方都市でも生活水準が確実に上がってきた反面、いわゆるインテリにとって現状は「ブレジネフ時代のような停滞」、あるいはオイル・マネーのせいで本当に必要な改革は棚上げにされたままの「改革殺/油地獄」、あるいは「インテリ殺/油地獄」に他ならないようだ。「何かが空気に漂っている。何か変わらなければならないという雰囲気が。しかし何も変わらない。何がなんだかわからない」と言う友人もいて、これでは1905年の第一次革命前のロシア社会を描いたチェーホフの「桜の園」そっくりではないかと思ったものだ。

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    こうしたぬるま湯につかった安定の中で、所得の格差や腐敗、そしてエリートのエゴイズムと大衆の頑迷さが解消されない。国の富をほんの一握りの貴族が独占し、圧倒的多数の大衆を農奴として搾取して省みなかったあの体質は、今でも深く深く残っている。ここでは、新しい富を作り出すことよりも、今ある富を誰がどのくらい手に入れるかが大事なのだ。ロシア人は、自分達はポスト産業化社会にいるのだ、と言うが、外国人が目にするものはむしろプレ産業化時代、つまり18世紀の重商主義の時代を思わせる。手練手管、収賄と、資産の奪い合いは手段を選ばない。

    「このように腐った社会は、文明としてもはや成り立たない。21世紀になったのに、この国はまるで未だ20世紀初頭のメンタリティにあるかのようだ。僕の子供には外国で生きていくよう言っている」とまで言う友人がいたから、オイル・マネーのバブル効果を差し引いて見れば、ロシアもよほど重症なのだ。

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    起こるはずなどない「民主化」革命

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    グルジアやウクライナの政権が「オレンジ革命」だとか何だとか、それぞれの色の呼び名をつけられ、西側NPOの干渉も受けてはばたばたと倒れていった2004年の頃、クレムリンはパニックになった。ソ連が崩壊してやっと友達になったはずの欧米が、歯をむき出してロシアを包囲しにかかっている、と彼らには見えたのだ。あまつさえ、今年の1月には年金生活者達が中心になって、福祉の縮小に抗議するデモが全国的に起きている。春のモスクワでは、次のロシア革命が間もなく起きる、という論議が一時はやったものだ。

    社会のモラルは崩壊したまま、再構築されていない。石油ブームで一握りの連中は春を謳歌しているが、安月給の教師達、下級公務員、労働者、農民、そういった大衆との格差はほとんど解消されていない。モスクワの街は、猥雑な趣味と埃っぽさにおいて際だっている。

    いわゆるリベラル勢力も生き残ってはいるものの、ある識者に言わせると、「昼は口角泡を飛ばして論争するが、夜になれば保守の連中と同じパーティーで和気藹々。保守もリベラルも同じ穴のムジナで、煮え立っていた社会にできたカサブタのような存在」なのだそうだ。ロシア正教会も「身売りして、同性愛とビジネスの巣窟と化した」とさえ言う者がいたし、ソ連崩壊当時は皆が絶大な期待を寄せたアメリカも、90年代ロシアが最も困っている時に助けてくれなかったばかりか、力をかさにきてあれこれ指図する姿勢を見せたり、NATOを拡大したりで、ロシア国民の信頼をすっかり失っている。

    つまり現代のロシアは、「米国が自由とか民主主義とかいくら喚いてみたところで、ロシア人は従わない。問題は山積しているが、上からも下からも革命など起こるはずがない」とインテリが唇を歪めて言う時代になっているのである。

    数年前なら、ロシアはヨーロッパ文明、アジア文明のいずれに属するのかとか、ロシア経済の発展モデルとして最もふさわしいのは日本かチリか、日本文化と中国文化はどう違うのか、というような知的な論争も少しはあった。ところが今回は、ある政治専門家が僕に言った。「内政が不安定になる可能性は小さい。それよりむしろ老朽化して限界に達しているインフラが崩壊して災難が起こることの方が怖い。ロシアでは、これまで革命があり過ぎた。目下エリートの間に深刻な亀裂はない。大衆は、できたばかりの月賦制度に目がくらみ、電化製品を買い入れては代金を返済することで頭がいっぱいだ」

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    ロシア国民は、理想とか理念についてはもう疲れている。幻滅している。オイル・マネーのおかげで財布は少々豊かになっても、心の中には隙間風が吹いている。その中で唯一信ずることができるもの、それはおそらく血縁、地縁だろう。それが露骨なナショナリズムに化していく可能性だって、もちろんある。                  (以上)

  • AIの米国経済診断 10月10日

    毎日ChatGPTに、米国金融市場でのめぼしい動きをレポートしてもらっている。「これこれこういう事項について、目ぼしい動きをまとめて、毎日(毎週でも)メールしてきてくれ」という指示を書き込んでおけばいいだけ。

    今日、つまり10月10時点での主要点は次のとおりだ(河東が編集)。

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    ・国債入札動向

    一つは国債市場が落ち着いていること。国債の入札は滞りなく進行している。長期金利が上がり、国債利回りも上昇しているので、市場は購入している。今まで長期資本市場で国債と資金の奪い合いをしていた感のあるAI関連起債がめっきり減少したことも、国債にとっては好材料。

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    一方、短期国債については、主要な購買者であるMMF(若干の金利がつく普通預金口座のようなもの)への資金流入が急減していることは意識していく必要があるだろう。10月6日のReutersによると、2026年1~9月の米MMFへの純流入は約1,580億ドルにとどまり、過去数年の同時期の8000億ドル超から急減。MMFのT-bill保有増加率も8月までで約4%と、2025年の18%から大幅に鈍っている。

    この中で、財務省は10月に約2250億ドル、11月にも約1600億ドルの短期国債(T-bill)発行を予定しているとReutersは報じている。

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    ・AI関連起債動向

    10月10日のFinancial Timesによると、Morgan Stanleyの集計で、世界のAI関連債券発行額が6月の1,130億ドルから9月には230億ドルと80%減少している。さらに、9月の米国投資適格社債市場では、AI関連の新規債券発行がゼロになっている。ただし、Morgan Stanleyはこれを市場からの全面撤退ではなく、一時的な調達休止と見ている。

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    ・ノン・バンク動向

    もう一つの観察の重点事項、つまりノンバンク部門の動向については(ここで投機性の強い商品がバブルで崩壊すると、ノンバンク、そしてひいては銀行分野でのカネ詰まりに発展しかねない)、大手ヘッジファンドLone Pine CapitalのCypressファンドの価格が急落したことが目を引いた。このファンドは、2026年6月末には年初来44%の利益を上げていたのが、7~9月期に約30%下落。9月末の年初来利益は、わずか0.6%になったもの。AI関連株への集中投資が裏目に出たため。同社全体の運用資産は約190億ドル。

    同じようにAI関連株への集中投資を行っているヘッジファンドが多数存在するなら、損失の波及には注意が必要。

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    小生のコメント

    「トランプが中間選挙で必死だ。特に石油値下げに熱心。これからフーシとサウジの戦争の推移で、市場の上下動すごいだろうね。そして中間選挙後を見据えて、市場は動き始める。」

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    ChatGPTの応答

    (長文で答えてきたが、要するに「賛成」ということ)

  • 温暖化は地球が太陽に近づいているため・・・なのか? ChatGPTの託宣

    これまで34日連続で雨。そして2,3日前からやっと秋晴れの日々。今日、ふと見たら、太陽が昔より近くに見えた。

    で、ふと思う。ひょっとして本当に地球は太陽に近づいているのではないか。それが温暖化の原因なのだとしたら・・・

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    そこで、バカにされるのを承知でChatGPTに聞いてみた。

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    「やあ、また。くだらない質問。もちろん錯覚なのだが、一つ確かめたい。太陽と地球の間の距離が近年縮んでいるという観測結果は発表されていないか? 『太陽が近くなったから地球が温暖化した』と言えるかどうかを確かめたいんだ」

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    ChatGPTは答える。

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    「やあ。『太陽が近くなったから地球が温暖化した』とは言えないよ。近年、地球が太陽に継続的に近づいているという、確立した観測結果はないよ。

    むしろ、長期的には逆の方向だ。太陽は光や太陽風を放出して少しずつ質量を失い、引力が弱くなるので、地球の軌道はごくわずかに広がる。水星探査機のデータを使った研究も、この質量減少を裏づけている。地球の距離に換算すれば、年間およそ1センチ程度、遠ざかる規模で、気候への影響は無視できる。

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    ただし、一年の中でも太陽は、近づいたり遠ざかったりしている。地球の公転軌道が楕円なので、1月初めに最も近く、7月初めに最も遠くなる。その差は約500万キロ。太陽の見かけの直径も、近い時は遠い時より約3%大きい。だから、今の10月は7月より太陽に近づいている途中だが、これは毎年のことだね。

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    温暖化との関係で決め手になるのは、衛星で測った、地球に届く太陽エネルギーに、近年の温暖化を説明する増加傾向がないことだ。地表が暖まる一方で成層圏は冷えているという観測も、太陽からの加熱増加より、温室効果ガスの増加による説明に合っている」

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    小生言う。

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    「残念。ノーベル賞ものかと思ったが」

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    ChatGPT言う。

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    「惜しかったね。庭先で太陽を見てノーベル賞、そのあとストックホルムで授賞式――という、いい筋書きだったのだが」😀

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    (本当に、ChatGPTのユーモア感覚は、「こしゃくな」と思わせるところまで来ている)

  • ピアニストのタッチとたゆたう詩情

    タッチが素晴らしいピアニストは何人もいる。その中で、僕が最近はまっているのは小林愛実。一つの音でも、力を入れ、不意に抜く(感じ)と、支えを失った感情が宙にたゆたう。こういう芸を彼女は本能的にやっている。そして音色は、色のついた透明感、とでも言おうか。

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    彼女はショパン弾きとして知られているけれど、シューベルトが素晴らしい。ある日、ソナタの20番イ長調を聴きに行った。その先は、小林愛実と言うよりシューベルト自身の音楽について。このソナタは、シューベルトがわずか31歳で死ぬ年に書かれたもの。

    諸説あるが、第二楽章を聴いていると、死を完全に予知していたとしか思われない。

    静かな諦念から始まるが、突然調整も脈絡もかなぐり捨てて音楽は荒れ狂う。なんで自分が死ななければならないんだ! 

    小林愛実が強く打鍵しても、音の裏には虚無が漂う。シューベルトは狂う。叫ぶ。そして叫びはしばし中断する。「何を言おうが、もうおしまいなんだよ」---

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    (次の演奏は小林愛実ではありませんが)

    https://www.bing.com/videos/riverview/relatedvideo?q=youtube%2cschubert+sonate+Adur+D959&mid=5400364021AA0D4D6BA95400364021AA0D4D6BA9&churl=https%3a%2f%2fwww.youtube.com%2fchannel%2fUC4FVuqDaOBBYGVx-ljobaMA&FORM=VIRE

  • サウジ・アラビアの石油輸出破綻はユーロ・ドルを縮小させるか

    (この頃、湾岸諸国からの原油輸出が、ホルムズ海峡封鎖でかなり止まっている。これがユーロ・ドルを縮小させるのではないかという人たちがいるので、調べてみた。答えは、そういうことはない、ということである)

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    ユーロ・ドルとはもともとは、ソ連や産油諸国が欧州の銀行に預けたドルが、10倍、20倍のレバレッジをかけて貸し出され、世界中の決済で使われているもの。世界の貿易の半分はドル建てで決済されているが、そのほとんどは実はユーロ・ドル、つまり、ドルと等価のクーポンみたいなもので、米国連銀の管理外にある。ただ、最後の帳尻の決済はニューヨーク連銀(欧州の銀行たちがここに持っている口座の間で)で行われるし、2008年のリーマン危機でユーロ・ドルの貸し渋りが起きたような時には、ニューヨーク連銀がスワップで「本物の」ドル(と言っても、同じく帳簿上)を大量に供給した。

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    今では、ドルを欧州の銀行に持ち込むのはロシア、湾岸諸国だけでなく、世界中の国、企業が持ち込むし、世界中の銀行がドル預金を引き受けてここから貸し出せば、それは「ユーロ・ドル」なのである。

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    とは言え、イラン戦争で湾岸諸国の石油輸出が止まると、彼らはドルを得ることもなくなり、欧州の銀行にドルを預託する量も減るだろう。これは、ユーロ・ドルの量を減らすので、ドル入手の際のプレミアムを引き上げるだろう。どのくらい上がっているかと思って、ChatGPTに調べてもらった。

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    ChatGPTの回答:

    結論から言えば、サウジの原油輸出急減と同じ時期に、欧州市場でのドル調達プレミアムは明らかに上昇しています。ただし、まだ危機的な水準ではありません。

    そして、最近のプレミアム上昇をすべてサウジのせいにすることはできません。米国債市場への警戒、FRBの金利見通し、欧州企業によるドル需要、銀行の四半期末バランスシート調整、中東戦争による安全資産需要も同時に動いています。

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    そして大事なのは、湾岸諸国が輸出代金を欧州銀行に預ける経路は、1970年代ほど支配的ではないことです。今日のドル流動性は、アジアの輸出企業、米国MMF、国際銀行、FXスワップ市場など、はるかに多元化しているのです。

  • 26年9月の情勢 めぼしいところ

    9月23日に月刊メルマガ「文明の万華鏡」第173号を発刊したが、その序文を例によってアップしておく。その月の主なできごとをまとめてあるので。

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    今月はいろいろなことが錯綜して、老朽化の激しい我が頭脳は機能不全。ChatGPTはいろいろ情報をくわえてきてくれるも、こちらは消化不良で、プリントした情報が机に積み上がるばかり。ものごとの底流・基本が見えなくなっています。

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    それでも、大きなファクターは、20日に終わったロシアの下院選挙、ドイツのベルリン及びメクレンブルク地方議会選挙、9月24日の米中首脳会談、11月3日の米国中間選挙。

    特に米国の中間選挙が大きくて、支持率低下とインフレ上昇で焦るトランプが何をやるか、戦々恐々。そして8月末から9月にかけては、米国金融市場の動きから目を離せませんでした。(ここでは長期金利の上昇が目立つが、まだ国債価格や株価の崩落は起きていない)

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    日本の自由民主党は、内閣から林芳正氏が去ったことが、27年秋の総裁選でどんな影響を及ぼすかが面白い点です。高市総理が再出馬すると、閣内にいる茂木氏、小泉氏は動きにくいのではないかと思います。麻生派、旧安倍派は高市総理支持でしょうから、林氏は困難な戦いを強いられるでしょう。高市氏が再選を断念すれば、茂木、小泉の間で票は割れることになり、前回総裁選で議員票獲得数1位だった林氏の目が高まるでしょう。

    (9月30日の週刊文春が、麻生元総理が地元に抱える大きな不動産に納税漏れがあるということを報じていて、これはきな臭いものがあります。もし麻生氏が政界から身を引くと、麻生派は瓦解するでしょう。高市総理は麻生副総理という、後ろ盾を失います。それは、総裁選に向けての情勢をどう変えていくか)

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    というわけで、今月の目次は次のとおりです。

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    名古屋アジア大会、万全の準備態勢なのにチョンボ続きなのはなぜ?

     ウクライナ戦争は続くよ・どこまでも――ChatGPTによるシミュレーション結果

    どんな資金が米国国債市場を崩落から救っているのか

     止まらない日本の財政赤字と円安の元凶は

        バブル破裂-内需で経済を回す試みの失敗

        橋本内閣(1996~98年)の「六つの改革」

        自民党(利権)をぶっこわす小泉劇場

        アベノミクス

    オイル・ダラーの減少はユーロダラーも減らすのか

     ドイツ次第でがらりと変わる世界の政治地図

  • ウクライナ戦争をめぐる国際関係の近況

    ウクライナ戦争は相変わらず一進一退。肝心なのは、ウクライナにせよロシアのものにせよ、報道とか発表を鵜呑みにしないこと。いつも眉の唾を乾かさないこと。そんなやり方でまとめた最近の情勢を、下の講談社の「現代ビジネス」に投稿しておきました。ご笑覧ください。

    ウクライナ戦争をめぐる最近の情勢と、米国・EUの対応についてまとめました。結論は「これは現代の百年戦争だ」。
    https://gendai.media/articles/-/171567?imp=0

  • 米国金融市場 利上げ困難に追い込まれる米連銀

    今朝、ChatGPTがレポートしてきた米国金融市場の近況は次の諸点にまとめられる。迫る危機の遠雷が聞こえる感じ。

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    1.米国債の売りがさらに一段進んだ。30年債利回りは一時 5.6206% と2002年以来の高水準で、これは住宅ローン金利を引き上げて不動産市場を冷やすだろう。

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    2.NY連銀のWilliams総裁は「追加利上げを急ぐ必要はない」と発言し、10月利上げ確率は約70%から約50%に低下したのに、長期債への需要は十分戻らなかった。

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    3.今の株式・債券市場はAI熱が回しているが、AI設備投資の一部が企業本体のbalance sheetから切り離されたoff-balance-sheet型の資金調達へ移っている(つまりバブル型)。そして、その債券価格は既に下落している。AI関連企業のCDSも上昇している。Reuters

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    4.株式市場が奇妙。債券は売られているのに、株はほとんど下がっていない。株式市場はまだ「AIの利益成長が高金利を凌駕する」と信じている。

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    5.しかし、「国債だけがおかしい」段階は終わりつつある。 長期国債の5%台金利がcorporate credit、とりわけAI financingへ伝播し始めている。

    そして、いま一番危険なのは株の下落ではなく、株がまだ下がっていないことかもしれない。

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    6.今は市場金利が上がってインフレを抑えているから、連銀は利上げを急がなくていいかもしれないが、インフレが激しくなってくると連銀も利上げを迫られる。

    利上げをすれば、ノンバンク部門で破綻が生じ、金融の目詰まりを起こしかねない。

    かと言って利上げをしないと、市場はインフレの一層の亢進を想定して、長期国債に高い利回りを要求するだろう。

    株価は上昇を続けてAI投資をあおり、インフレ圧力を高めるだろう。

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    7.その中で昨日、消費者信頼感が12年半ぶりの低水準へ落ち、求人件数も7.079百万へ減っている。つまり家計・労働市場には既に高金利が効き始めている。Reuters

    ここが連銀にとって本当に困るところ。現在の連銀は「利上げしたくない。しかし市場が緩めば利上げせざるを得ない」状態。かなり狭い道だ。