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投稿者: akiokawato

  • 中間選挙:共和党敗北はAIバブル、そして米国債バブルを破裂させるか

    中間選挙の結果、世論の関心はもっぱら、トランプ政権の今後(corruption調査や弾劾等)に向いているが、同等の重さを持つ問題がある。それは、2008年のリーマン危機、そして2020年代のコロナ危機を経て、GDP1年間分も蓄積した米国債が値崩れと利回りの急上昇を招き、財政を破綻させ、ドル価の暴落を招くことにならないか、という問題である。

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    一連のプロセスは、まずAI関連の株の下落から始まりつつある。すると、これに投資していたヘッジファンド(ノン・バンクと呼ばれる金融セクターの一部。銀行と異なり、自己資本比率などの規制を受けていないから、投機に近い投資を行うことがある)が大きな損失を被る可能性がある。大手ヘッジファンドの純資産は4.5兆ドル。これに平均2.6倍のレバレッジがかかっているので、純資産が減少した場合の影響は大きい。

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    そしてその影響は、大銀行に及び得る。なぜなら、大手8銀行の総融資の約20%がノンバンク向けなので、これが返済不能の不良資産になり得るからである。2008年のリーマン危機では、銀行が互いの資産状態に疑心暗鬼となり、取引を止めたことで、全般的な金融危機が訪れている。

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    2008年の危機では、国債は安全資産とされてその価格は上昇し(金利は下落)、ドルも世界中で需要が急増してレートを上げた。

    しかし2008年と違って今回は、国債の累積額が著しい。それはGDPの約1年分に達しており、これは常に借り換えていくので、常に資本市場を圧迫している。9月までは、長期金利の上昇が懸念の材料となっていたくらいだ。金利が上昇を続けると、連邦歳出における国債利払い額は急増し、財政を窒息させるだろう。それを補うために国債を増発すると、国債価格は下落し、ドルも急落する。

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    今はまだ、AI関連株の下落で止まっている。しかし今の世界は、政治・経済ともお祭り騒ぎ。何が起きるかわからない。金持ちは自分のカネを、have-notsは自分の職(と食)を心配しよう。

  • Chat GPT、音楽を論ずる。日本のクラシック演奏家は倍音を使わない?

    昔、ボストンに留学していた時、まだ若かった小澤征爾がボストン交響楽団を初めて指揮したのを聴きに行ったことがある。日本人がボストン交響楽団を指揮するなど、当時は驚天動地のことで、僕は期待と不安でいっぱいだった。

    で、確かモーツァルトの交響曲だったと思うけれど、聞こえてきた音楽は何か不安げでふらふらし、線の細い淡白なものだった。

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    年を経て晩年の小澤が奏でた、例えばベートーベンは、これぞベートーベンという、力強く前進力を備えたもの。でも、すっきりしている点は、ボストンで初めて聴いた時と同じ。そしてすっきりしているというのは、多くの日本人のクラシック演奏家に通じることではないか? 

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    https://www.bing.com/videos/riverview/relatedvideo?q=youtube%2c%e5%b0%8f%e6%be%a4%e5%be%81%e7%88%be%2cbeethoven&mid=71D54F229D61A7B6C18671D54F229D61A7B6C186&churl=https%3a%2f%2fwww.youtube.com%2fchannel%2fUCyryC2Ormjx05zfcb_l2t4A&FORM=VIRE

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    年を取って淡白なものが好きになっている僕は、白人演奏家の奏でるねっとりしたクラシック音楽はもうしつこくて、自己主張が強すぎて、願い下げになってきた。そして日本人のクラシック演奏家の水準の高さは、この頃半端ない。

    でも、日本人の奏でるクラシックは、違う世界に属するものではないか? そしてその違いは「倍音」が彼らの演奏では使われていないからではないか、という仮説に達した。専門家に聞けばいいのだが、とりあえずChatGPTに聞いたら、ちゃんと話に応じてきて、次の議論になった。話しはペルシャやアラブのオリエントの音楽にも及ぶのだが、それはまた別の機会に。

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    河東

    「やあ。音楽について。「倍音」について、以前も議論した。確認したい。「倍音」harmonicsは、白人のクラシック音楽演奏家の演奏では多分に含まれるが、日本人の演奏では倍音があまり聞こえない、だから日本人演奏家のクラシック音楽は淡白ですっきりしているのだ、という仮説は、正しいかな? 西欧での音楽教育では、倍音の使い方が特別に説明されているのかな?」

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    ChatGPT

    「やあ。貴兄の『演奏家によって倍音の出方が違い、それが音色を変える』という部分は正しい。しかし、『白人の演奏は倍音が豊かで、日本人は少ない』と一般化する根拠は、今回自分が見た資料には見当たらない。 貴兄が感じる、音色の違いはあり得るが、それを何かは、もう少し分けて考える必要がある。

    国際スズキ協会(バイオリンの「鈴木メソッド」を広めているところ)が公開する指導映像では、開放弦をはじいたときの響きをよく聞き、それに近づけるよう弓で音を出すことを教えている。だから、日本の教育が倍音や響きを軽視している、とも言えないだろう。

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    だから、貴兄の仮説を、『自分が聴いた演奏家の間には、倍音の構成や響きの作り方で違いがあるのではないか』と変えると、十分検討に値するものになる。それを人種・国籍に即して分類するのは適当ではない。」

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    河東

    「なるほど。それが妥当なんだろうね。」

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    (しかし、この対話よりかなり前に交わした会話では、Chat GPTは少し毛色の違うことを言っていた。それが以下のやりとり)

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    「ヨーロッパのクラシック音楽家は、意図的なものではなく、訓練、技術、楽器の進化の副産物として、演奏においてより豊かな倍音スペクトルを生み出す傾向があります。これは、民族音楽学者や音響学者によって同様に指摘されています。

    例えば、The Ashgate Research Companion to Japanese Music (2008)では、一部の日本の伝統において、倍音の豊かさが意図的に避けられている点――つまり、共鳴が多すぎると感情の過多と見なされる可能性がある点――について論じられており、西洋音楽の豊かな音色との比較が行われています。

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    またヘルマン・ヘルムホルツは「音感覚論: 音楽理論の生理学的基礎」(1863年)で、西洋の器楽奏者は無意識のうちに豊かな倍音スペクトルを追求する傾向があるが、それは耳の構造の違いによることを示唆している。

  • 家族にデザイナーがおりまして

    これはプライヴェートなことですが、次女の梨香がデザイナー(今は福祉・医療関係の施設のインテリア等に関わっています)をしておりまして、先日北欧文化紹介のYoutubeの番組「アンドフィーカの北欧カフェトーク」に出演させていただきました。

    長いインタビューですが、前半では哲学を語り、後半では実際の活動・作品の紹介をしております。

    ここで宣伝させていただきます。是非、ご笑覧ください。

  • 中間選挙の結果は民主党の勝利より、トランプ的米国との決別を意味する

    (これからこれをChatGPTに諸語に翻訳してもらって、掲載していきます。AIが発達したのですから、我々はどんどん海外に向けて発言していくべきです)

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    良識の勝利

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    中間選挙は民主党が勝った、と言うか、トランプ的な荒くれた米国が多くの人たちによって拒絶されたことを示す。トランプは、知性・理性を無視した奇妙な政策と、詭弁、罵詈雑言、そして暴力で、ものごとを通そうとする。こうした人間は米国にはいつの時代にもいたが、debate、裁判でものごとの黒白を決める米国の伝統からは外れた存在だった。

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    民主党はこれでむしろ危機に

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    民主党にとっては、勝利は2年早すぎた。なぜならこれからの2年で選挙民に呆れられると、2年後の大統領選で今回とは逆の目に会うだろうからだ。

    民主党は「トランプ共和党ではない政党」というだけで、票を得た。きちんとした政策はないし、その周りに結集できる強いリーダーもいない。ばらばらなのだ。

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    来年、新議会を首尾良く開けたら(テロが起きて戒厳令が敷かれるようなことがないよう願っている)、どうするか戦術を練り、党内の統一をはかっておかないと、ひどいことになるだろう。

    つまり、トランプ弾劾手続きをすぐ開始するかどうか。それよりはまず、トランプとその家族の資産増殖に違法なところがなかったかどうかの調査を徹底的に行うべきだろう。その上で弾劾に進む。

    同時に民主党は、議会や研究機関をベースに、米国社会、経済を改革するための戦略を作り上げ、これで2028年の大統領選を戦う。

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    共和党は「多民族国家・米国」に合わせて衣替えを

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    今回の中間選挙は、米国は多民族国家になっていて後戻りはもうないことを如実に示した。共和党の岩盤支持州だったテキサス州ではヒスパニック系の女性ジーナ・イノホサ氏(民主党)が知事に選ばれたし、ジョージア州ではキーシャ・ランス・ボトムズ氏(民主党)が初の黒人(女性)知事に選ばれたことが象徴的である。

    トランプ共和党は多民族国家の中で不遇をかこっている白人層に、過度に依存したが、今回選挙では、彼らにさえもそっぽを向かれた。

    米国社会は多民族社会となっていて、それはもう後戻りしないだろう。共和党も民主党もその中で支持基盤をどこに求めるか、思案のしどころだ。

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    いくつかの思い込みはやめてほしい

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    例えば北欧のような穏健な先進社会と比べると、米国は主張が極端、二分法的であることが多い。少しでも増税を言うと、それはソ連社会主義、つまり国家がすべてを差配して民間のイニシャティブを圧殺する主張だとして、否定する。北欧やオランダの社会民主主義諸国では、市場経済、そして高度の民主主義を維持しながら高水準の社会福祉を提供することができていることを見て欲しい。

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    他方、高所得を得る者たちへの課税強化で、低所得層の生活を改善する主張にも、一定の節度が求められる。米国では、連邦政府歳入の約半分は個人所得税に負っていて、その個人所得税の過半は高所得層によるものであるからだ。

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    一方、ごく少数の寡占資本家たちが自分たちの負担を減らすために「小さな政府」を主張し、その主張を実現するために政党や政治家を実質的に「買い占める」ことには、制限を課するべきでないか。

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    一貫した現実的な外交を

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    これまでは、民主党は反ロシア・親中国、共和党は反中国・親ロシアという色分けが行われてきたが、これは非生産的なことだ。中国には、周辺国を武力で従えようとしたり、政府補助金で企業の輸出を幇助するのを止めさせればいいので、あとは周辺・関係諸国とともに協力関係推進、status quo維持の枠組みを作っていけばいいのだ。

    ロシアはエリートの並外れた自負心、拡張意欲は問題なのだが、レジーム・チェンジ等、現在の国境内での彼らの利権を侵そうとすることは控えるべきである。

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    「自由で繁栄し、かつaccountabilityの原則を心得た人々から成る多民族社会」は、これまでどの国家も実現したことがない。米国にしかこれはできないだろう。

  • 赤澤亮正氏の「トランプ関税 交渉の記録」を読んで

     

    赤澤氏には、失礼ながら顔に騙された。トランプ大統領に赤い帽子をかぶらされてかしこまっている写真とか見て、心配になっていたが、実際は所を得た人選であったのだ。

    コーネル大学に留学しているし、運輸省出身で現役時代は航空交渉(どこの国のどの航空会社に日本のどの空港に何便の着陸を認めるなど、切った張ったの交渉)もいくつか手掛けている。

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    そして日本での報道を見ていると、ひょいひょいひとりでワシントンに出かけては、ラトニック商務長官だけを頼りに危なっかしい交渉を続け、ろくに記録も取っていない、ということになるのだが、彼は実際には外務省、財務省、経済産業省の幹部をいつも引き連れ、交渉のための文書、あるいは記者会見での発言案作成など、魔術師の速さで書き上げてしまう彼らの上に乗っかっていたのだ。官僚出身だから、そのあたりの呼吸は心得たものである。

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    そしてトランプの言い分を聞いていると、米国が日本の約束した5500億ドルの投資を思うがままに使い、利益もすべて米側が手にするように聞こえるのだが、それは彼の国内向けの発言で、実際の「投資」は融資が中心なので、返済されるものである。そしてその融資を使っての投資案件は、日米双方の合意がないと進まない。使う資材の多くは日本製である。だから日本は、日本にとっても良いディールをしたのだ。

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    というのが、この本の結論。筆者もそれに賛同する。「自動車関税は何としても軽減してもらう。日本側は米製品に対して関税を引き下げることはしない。代わって大規模な投資を行う」という立場を交渉の始めから変えず、そのために交渉が長期間止まっても立場を変えなかった。それが効いたと言うよりも、「日本に関税を下げさせて僅かな利益を得るより、5500億ドルという膨大な投資をしてもらう方がはるかに得」ということに、米側も気がついたのだろう。

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    ここは、赤澤氏の背後で盤石のごとく、「日本は関税ではもう譲れない。関税ではなく、対米投資増大でトランプの要望に応えたい」という立場を貫いた石破総理の功績でもある。

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    この赤澤歌舞伎は、その真価・真相が語られないうちに、もう忘れ去られようとしている。政治・外交はきちんと総括しないと、誤りは繰り返されるし、好例が学習されることもない。もったいないことだ。

  • 日本人の「日本縮小論」自家中毒

    この頃は何かというと、2027年には日本は英国にもGDPで抜かれ、世界6位に落ち込むとか、いや一人当たりGDPでは既に世界35位くらいだ、日本はもうお終いだ、という手の議論が幅を利かす。これは円をドルに換算して、ドル・ベースで他国と比較しているからこうなる。

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    今の日本のGDPを2010年のレート(年平均で1ドル約88円)でドルに換算すると約7.6兆ドルになり、それは今のドイツの5.1兆ドル(但し現在のユーロ・ドルのレートで計算)をかなり上回るのだ。そしてそれ以降の円安は、日本経済の実力が低下したからではない。

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    欧米は2008年のリーマン・ショック以降、景気刺激のために利下げをはかった。日銀は当時、金利水準を維持したから、相対的に高金利となって、過度の円高が現出した。2012年末に登場した安倍政権は、その円高がもたらしていたデフレを破るため、果敢な利下げに踏み切る。

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    しかしそれは景気を刺激することはなく、円安を招いただけだった。企業は賃金を上げようとしなかったから、人々は商店での値上げに強い抵抗を示し、デフレ傾向が去らなかったのである。

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    日本と米欧の間の金利差は開き、日本人は高めの金利を狙って海外への投資を増やし、それによって円安をますます悪化させた。日本の製造業は海外生産を増やしているから、円安になっても輸出が特に増えるわけでもない。乗用車の輸出台数は却って減少した。日本は高値になった原油の輸入代金を払うため、より多くのドル買い付けを迫られ、これも円安を益々進行させた。

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    だから、日本は経済小国化しているわけではない。問題は、日本が円安という自縄自縛の罠に落ち込んで、抜けられないでいることだ。

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    日本は今年7月にはドル売り介入を始め、8月には米国を協調介入に引き込んで、一時は1ドル150円近くにまで「円高」を実現した。それが今では再び157円周辺に落ち込んでいる。

    これ以上日本がドル売りを強化すると、手持ちの米国債の売却にまで至り得るが、米国は必死にそれを引き止めるだろう。日本が米国債を売るということは、それだけ日本が米国金融市場から資金を引き揚げることを意味するので、米国での金利は上昇する。米国債の価格は低落し、利回りは上昇する。米国財政にとっては悪夢のシナリオなのだ。 

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    それでも今の過度の円安は是正しなければならない。それも、米国での長期金利の上昇を招くことなしに。一つは、日本以外の存在が米国債を大量に消化すればいいのだ。もしかすると、ステーブル・コインの使用をもっと自由化することが有効なのかもしれない。

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    何とかして円高への潮目の変化を実現したい。円高で日本からの輸出が(数量ベースで)減少することはない。自動車は海外生産が進んでいる。

    確かに、円高になれば、日本企業の輸出利益は円ベースでは減少する。それに応じて株価も下がる。しかしそれは致命的ではない。輸出利益は目減りしても、原材料輸入の費用も円ベースでは減少するから、プラス・マイナスとんとんなのである。

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    そして市民の生活にとって、円高は総じてプラスに作用する。筆者は夏にデンマークに旅行したが、レストランで食べると高いので、コンビニで総菜を買ってすませた。そして円高になれば、ドル・ベースでの日本の存在感も、今よりはるかに増大する。

  • 日本歴史紀行21 平泉・花巻・盛岡・八幡平 蝦夷と呼ばれた昔と「北上経済圏」の出現と

    10月中旬、平泉、次に花巻、盛岡、八幡平を旅行してきた。

    仙台以北の東北について、認識を一新した。平泉の藤原家以前から、北上川流域(仙台から盛岡までだけで実に180キロある)、日本海の出羽地方を中心に安倍、清原等の豪族が割拠し、隠然たる支配権を形成していたのだ。因みにこれら豪族は一応和人と思われる。蝦夷(えみし)という呼称があるが、これはこの地方に居住する人間たちを総称するもので、縄文人、和人、アイヌ等は混在していて、相互関係は今でも整理されていない。

    ところで北上地方は、南北が違う陸塊からできているそうだ。南部は南方のゴンドワナ大陸からやってきた。今となっては違いはわからないが、太平洋岸は南部がリアス式、北部が直線の違いがある。

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    歴史についての雑知識

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    ・岩手県のあたり、縄文中期の土器が出てくる。久田野遺跡は6000~4000年前のもの。ムラになっていた。

    縄文末期、九州では縄文文化が下火になるのに反し、東北北部から北海道南部にかけては亀ヶ岡文化圏と総称される現象が見られた。この地域で特徴的なのが、いわゆる遮光器土偶。宇宙人ではないかと言う人もいる。

    ・2300年前には稲作が導入されているが、その後狩猟文化に逆戻りした。寒冷化のためである。

    ・みちのくは東山道の奥という意味で、道奥国が陸奥国になった。

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    ・坂上田村麻呂以後が有史時代。安倍氏時代には寺院の跡が残っている。

    ・坂上田村麻呂は今の盛岡まで来ている。その北方にある八幡平の「八幡」は、彼が持ち込んだ名称とされる。八幡は源氏の氏神。

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    ・坂上田村麻呂の遠征以来、この地域は和人が支配するものとなった感があるが、彼は自分が成敗した「アテルイ」という名の族長を連れて京都に帰っている。アテルイは京都の公家たちの裁断で死刑に処せられてしまうのだが、彼の民族的属性はわからない。

    盛岡の岩手県立博物館でも、平泉の文化遺産センターでも、アイヌのアの字にも出くわさなかった。東北地方には、諸方にアイヌ語系の地名が残っているようなのだが。

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    ・以後、安倍、出羽の清原氏などの豪族が入り乱れて闘争。安倍氏は鎮守府胆沢城の役人から台頭した。この中から奥州藤原家(その発祥は関東とされる)から清原家に養子に出されていた清衡が藤原姓を復活し、平泉を「首都」として安倍・清原双方の版図を収めて約100年間繁栄する。

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    ・奥州藤原家の勢力は日本海側の出羽地方にまで及び、この地方で産した金と馬と漆で財を成した。当時の文化の中心地である宋とも交流したし、京都の文化も積極的に取り入れた。歌人の西行も平泉に招致されている。

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    ・右藤原清衡が奥州藤原家の初代とされる。彼は1100年頃、中尊寺の造営を開始。次いで第2代の基衡が毛越寺を造営。宇治の平等院にならった寺院を建設した。当時京都で流行っていた末法思想を反映したものだろう。因みに中尊寺の金色堂の祭壇には、藤原3代の遺骸がミイラとなって収められている(第4代泰衡は首だけ)。そのミイラ「製造」の技術は、樺太アイヌの族長に適用されていたものだ、という指摘もある。

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    ・奥州藤原家の勢力圏は単一の国家的な様相を呈するが、京都の中央政権には貢納を続け、中央からの国司も受け入れて、恭順の姿勢を貫いた。国司として赴任した、京都藤原家の基成と藤原第3代秀衡は親交を結び、基成の娘が秀衡の息子の泰衡と結婚している。秀衡は京都の朝廷によって、鎮守府将軍・陸奥守に任命されてもいる。

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    ・第四代の泰衡で奥州藤原家は終焉を迎える。源義経を第三代の秀衡が庇護し、頼朝と不和となった義経をかくまい続けたことが契機となる。頼朝が朝廷を通じて義経征伐の圧力をかけたため、泰衡は1189年4月末、義経を攻め滅ぼし、6月にはその首を鎌倉に送る。すると頼朝は一族の者を自分の許可なく殺した、と難癖をつけ、7月には泰衡討伐の軍を送る。義経は口実で、頼朝は東北地方を自分の勢威下に収めたかったのだろう。

    ・頼朝は自ら兵を率いて(太平洋岸、中央、日本海側の三手に分かれる。これは幕末の官軍と同じで、東北地方はこの三方から抑えないと兵力が洩れるのだろう)平泉に攻め寄せる。諸方の豪族がこれに加わり、最終的には軍は28万4千騎に及んだと「吾妻鏡」は書いているそうだが、大げさではないか。当時の京都の人口をも上回るような軍勢に、どうやって飯を食わせるのか? とにかく頼朝の圧倒的な兵力で、泰衡は平泉から避難するが、部下に殺されてしまう。

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    ・頼朝はその後、38日滞在して、平泉の文化に印象を受けたとされる。鎌倉に建設した永福寺は、毛越寺を参考にしたものと、現地では言っている。(頼朝は京都にも行ったことがあるので、永福寺のモデルは毛越寺以外にもあるだろう)

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    ・藤原氏滅亡のあとは東国武士たちが支配権を得て、相互に争うようになる。

    ・豊臣秀吉の時代、彼らは秀吉の命に従わず、「奥州仕置き」と称される所領没収処分に会う。その後、平泉一帯は盛岡に本拠を置いた南部氏に委ねられる。

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    北上経済圏

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    ・仙台から盛岡にかけての一帯は古くから、北上川が物流の動脈であった。集荷したコメなどは江戸時代、銚子を経て江戸に搬入された。銚子から南の房総沖は海の難所なので、舟は銚子から湖水や河川、古利根川を伝って江戸へ動いたのである。途上の中継所、佐原などには問屋が集中して繁栄した。そこは今でも倉敷にも似た、近世の川港町の風情を残す(このブログの「日本歴史紀行13:利根川、佐原」を参照願いたい)。

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    ・今、仙台から北へ新幹線で向かうと、広大な水田が整然と広がり、人家は多く、ところどころ大工場が分布する。景色は、東海道化しているのである。仙台から盛岡までで180キロ以上だから、関東平野と縦は変わらない。青森までは直線で280キロ。

    仙台以北の新幹線は「普通」だとちょくちょく止まる。ところが、いずれもかなりの町なのだ。

    近年、宮城県、岩手県のあたりは半導体関連、電機、自動車関連大企業の工場進出が目立つ。岩手県にはトヨタ、デンソー、キオクシア、東京エレクトロンなどが進出し、県南部は自動車・半導体産業クラスターの状況を呈する。宮城県でもトヨタ、東京エレクトロンなどが産業クラスターを形成している。

    宿泊した北上は、東北高速道と秋田方面への高速道のハブ。機械・電機の県内随一のクラスターを形成している。以前は農業地帯だったが、1954年の合併後、市が企業誘致に熱心で、企業立地課を設けて分譲に努めた。これに、岩手大工学部や一関高専が提携している。

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    ・そこで両県の「GDP」(都道府県が発表している)は近年さぞかし伸びているだろうと思って、ChatGPTに調べてもらったのだが、これが意外にも岩手県で30年間で5%程度、宮城県で20%程度の伸びしか示していない。ChatGPTに理由を推測させると、多分岩手県の工場がそれほど利益を計上していなければ、GDPをそれほど押し上げないからだろう、という返事が返ってきた。岩手県の工場が大企業の生産プロセスの一部しか占めていないと、そうなり得る。

    それでも岩手県の場合、この40年間で生産年齢人口は3分の1も減少したのに対して、県のGDPは2倍近くにもなっている(以上、ChatGPTの計算を丸のみ)。生産性は上がっているのだ。

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    ・昔のイメージは「東北本線」に残っている。仙台以北の「東北本線」は、2両のワンマン電車が30分以上に1本しか通らない。しかしメチャ速い。クモハ701型。午前10時になっても、なぜか高校生が多い。本数は少なくても、勢いが感じられる。

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    平泉

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    ・芭蕉は、平泉で西の日本海方面に曲がっている。盛岡もその先の弘前も文化は盛んだったので、行けば良かったのだが。平泉から西への山間ルートはほとんど使われることはなく、追剥も出るので、護衛を雇っての旅となった。なお、「夏草や兵どもが夢のあと」の句は、平泉で詠まれた。

    この先の立石寺で詠んだ「閑しずかさや 岩にしみ入る 蝉のこえ」、そして「荒波や 佐渡によこたふ 天河」とともに、東北から北陸にかけての句にはロマンが漂う。ヴィジュアルでもある。黒い海、青黒い空に金粉のように流れる銀河。それがぱっと目に浮かぶ。

    (このゴッホの絵のイメージ)

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    ・しかし現実はそうでもない。平泉は2011年に世界文化遺産に指定されているのだが、駅で道を聞くとそっけなく「案内所で聞いてください」。その案内所に行くと誰もいない。仕方ない、タクシーで行こうと思っても、タクシーがない。電話しても「30分かかります」。

    ・平泉は3つの川が合流する地点で、昭和22年のキャスリン台風の際は、3,5米の洪水で町がほぼ水没したそうだ。観光客に冷たいからそうなる。

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    花巻と宮沢賢治

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    花巻は今では大谷翔平の方で有名だろう。しかし雨の花巻駅には何もなかった。

    宮沢賢治記念館に行こうと思って地図を見ると至近なのだが、足が痛いし、雨が降っていたのでタクシーに乗った。

    途中、花巻には城があったことを知った。大名がいたのではなく、盛岡の南部藩の城代の居所。仙台の伊達藩との境界を守るのが任務だった。結構、官僚=武士が勤務していて、彼らは城下町を形成した。奥州道の宿場町でもあった。

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    ところがタクシーは町を出て、どんどん地平の向こうの霧のかかった山の方へ走っていく。宮沢賢治記念館は至近の距離にあるはずだ。こちらから話しかけても、運転手の耳は遠い。「止めてくれ!」と叫んでも、「?」。

    結局メーターが3200円まわったところで記念館に着いたのだが(ここに来るのだったら、新幹線の新花巻駅からの方が断然近いのだ)、無情な「休館」の札。火曜なのに。隣の宮沢賢治童話村と花巻市博物館で時を過ごす。

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    ・ところで、宮沢賢治の文体、漂う詩情は僕が好きなものなのだが、あのヨーロッパかぶれはどこから来たのだろうと思う。イーハトーヴという名称とか、チェロ弾きのゴーシュとか、近くの北上川の「イギリス海岸」とか。ドーバーを花巻海岸と呼べばいいと思うのだが。

    宮沢賢治はヨーロッパかぶれでいながら、それはムードだけの感がある。ごつごつした欧州の個人主義精神はない。どこか仏教的な諦念が入り混じっている。引きこもりの詩情とでも言うか。

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    ・ところで花巻市博物館では「大正イマジュリー展」をやっていた。竹久夢二など大正リベラル・ロマンチズムの意匠の集大成。それに、水準の高い説明がついている。巡回展だそうだが、これを招致するだけ、大した識見だと思った。因みに宮沢賢治も、この大正デモクラシー、リベラリズムの一員だったのだな、と今思う。

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    盛岡

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    ・ここは一般のイメージとは違って、本当に「開けた」町なのだ。2023年1月にThe New York Timesが「52 Places to Go in 2023」を発表し、イギリスの首都ロンドンに続く2番目に盛岡を推したことで、人々の見る目が変わった。NYTが参考にしたという写真家Craig Mod氏は盛岡をこう描写している(盛岡市のインターネット・サイトより)。

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    ――東京から新幹線ですぐ行ける、人混みなく歩いて回れる宝石的スポット・・・山々に囲まれた盛岡市は、日本の高速鉄道新幹線で東京から北へ数時間。市街地は街歩きにとても適している。大正時代に建てられた西洋と東洋の建築美が融合した建造物、近代的なホテル、歴史を感じさせる旅館(伝統的な宿泊施設)、蛇行して流れる川などの素材にあふれる。城跡が公園となっているのも魅力のひとつだ。

    また、日本のコーヒーのサードウェーブのひとつである「NAGASAWA COFFEE」をはじめ、素晴らしいコーヒー店もある。「NAGASAWA COFFEE」では、オーナーの長澤一浩氏が自ら輸入・修理したドイツ製のビンテージ焙煎機「プロバット」を使用するほど豆にこだわる。東家は小さなお椀に盛られたわんこそばが食べ放題。「BOOKNERD」では日本の年代物のアートブックを販売。そして40年以上の歴史を持つジャズ喫茶ジョニー。車で西に1時間も行けば、田沢湖や世界有数の温泉が多数あるーー

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    天邪鬼で足も痛い僕は、ここで推薦されているところのどれにも行かなかったのだが、盛岡に流れる文化・意識水準の高さは何となく感じ取った。

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    ・盛岡駅では「おでんせ館」という建物があった。デンマークのオデンセ(アンデルセンの住んでいた街)と姉妹都市なのかと思って、家内とびっくりしたのだが、調べてみると「おでんせ」とは地元の言葉で「おいで下さい」という意味なのだそうだ。ややこしい。でも、アンデルセンと宮沢賢治とか、おでんせと「オデンセ」とか、温厚な人間とか、岩手とオデンセ、デンマークの相性はいいようだ。因みにオデンセの姉妹都市は千葉県の船橋市。ここは郊外に広大なテーマ・パーク、アンデルセン公園がある。家族向きの静かで面白い公園。

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    ・盛岡は南部藩の城下町で、首都から遠いという意識から、昔から京都文化を取り入れてきたところ。今でも料理の味付けは関東の醬油ではなく、京都風のはんなりしたものである。

    そうした上昇志向からか、藩は江戸初期から石高を過大に申告して、それで江戸城内での格を高めに維持していたのだろう。そのために、財政的には常に困窮していた。参勤交代でも、格に見合う派手な大名行列を整えないといけない。

    しかし芭蕉は来なかった。彼は南の平泉まで来て、そこから西へ折れたのである。

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    ・盛岡は工業よりも商業で栄える町だが、江戸時代には近江商人等が出張ってきたという。彼らは全国に散らばってネットワークを形成する、欧州のユダヤ人のような存在だったのだ。中国でも温州商人が同じ役割を果たしている。

    因みに盛岡までの鉄道は、明治23年に通じている。

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    ・新渡戸稲造は盛岡出身。彼の家は藩の兵法家を務めており、稲三はそのような伝統を踏まえたインテリである。口先だけのインテリではない。

    他にも、画家の萬(よろず)鉄五郎が喧伝されていた。岩手県立美術館の建物は壮大で、国立近代美術館を上回るだろう。僕は、松田松雄(1937~2001年)の1972年の作「風景(思案)」が気に入った。写真がうまく撮れてなかったので、ここではお目にかけられない。

    ここには彫刻もあった。ところがそれが、西洋人の顔ばかりなのだ。なぜ? 日本人は「個」でないから、表現しにくいのかもしれない。だとすれば、個人を描くより、集団の人間の「気」のようなものを描けばいいのでは、とふと思った。

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    ・2026年、「ゾンビ回収婦」で芥川賞を受賞した小砂川(こさがわ)チト(36歳)は盛岡市出身で、早速市民栄誉賞をもらっていた。他の町でここまでやるか、と思う。文化との一体性が強いのだ。

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    ・岩手県立博物館も壮大なのだが、これは市からはるか離れた山頂にあり、カーナビつきのレンタカーだったが、さんざん引き回された。

    博物館の建物は、もう古くなりつつある。客はまばらだった。

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    ・北東に姫神山(1100米)がある。ピラミッドとしか思えない形。火山ではなく花崗岩だというから益々不思議。

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    八幡平寸景

    ・盛岡から東北自動車道を15分ほど走る。久しぶりにETC使わずに普通のゲートを通ろうとしたら、人はおらず、自動料金器になっていた。泡を食った。

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    ・宿は八幡平ハイツといった。ハイカラだが昭和時代の建築。大柄なスリランカ人がポーターをしている。中禅寺湖のホテルもスリランカ、バングラデシュ系の人たちに牛耳られていた。分野ごとに出稼ぎのすみわけができているのだろう。

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    ・岩手山を中心とした高原の景色はあか抜けていて、「ああ、これが宮沢賢治のイーハトーヴなんだ」と思った次第。

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    ・ところで岩手出身の若者にはいい人間が多いようだ。大谷翔平、菊池雄星(盛岡出身)、そしてスキー・ジャンプの小林陵侑は何と八幡平出身なのだ。腰の低さと個性と自負心を兼ね備えた連中。

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    (岩手山を八幡平から眺める)

  • 2026年10月の情勢

    10月28日に月刊メルマガ「文明の万華鏡」を「まぐまぐ」社から刊行しました。

    これの冒頭部、10月の日本・世界情勢の記録になりますので、ここにアップしておきます。

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    秋になりました。10月中旬、平泉、花巻、盛岡、そして紅葉の八幡平を回ってきました。八幡平ではホテル「八幡平ハイツ」に泊まりましたが(1泊13000円)、ここはなんと天皇・皇后両陛下が三代にわたって宿泊されたということで、畏れ多いことでした。

    岩手と言えば日本のチベットとか、難解な方言をしゃべる所だとかあしざまに言われていましたが、今回はその見方を一新しました。平泉は言うに及ばず、盛岡は以前から京都文化が流入したところですし、仙台から盛岡まで実に180キロ、関東平野の南北を上回る距離が北上川の作った広大な平野で(盆地と言いますが平野です)、ここは水田、そして電機・家電・自動車の工場が集中するようになっています。詳しい様子は、後出の旅行記でご覧ください。

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    ドルに換算すると縮んで見える日本経済

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    今月は、「日本は2027年には英国にもGDPで抜かれて、世界6位に下がる」というIMFの見通しが大々的に報道されて、我々のやる気をまた殺ぎました。確かに2010年~2025年の数字を並べてみると、日本経済の低パフォーマンスぶりは際立っています。

    この間日本の名目GDP(円ベース)は30,6%しか伸びていないのに対して、米国は実に104,4%、ドイツでも73,2%伸びています。米独ともインフレ率では日本を上回っていますが(米国が47,6%、ドイツが38,4%、日本が18,0%)、それでGDPの伸びがすべて相殺されるわけではなく、しかも平均名目賃金は日本をはるかに上回る伸びを見せています(米国が61%、ドイツが59,8%、日本が19,5%)。

    それでも、往生際の悪い発言をするならば、今の日本のGDPを2010年のレートでドルに換算すると約7.6兆ドルになり、それはドイツの5.1兆ドル(但し現在のユーロ・ドルのレートで計算)をかなり上回るものになるのです。そして我々の生活実感では、日本での都市生活の便利さは、世界でもトップ・クラスを維持しています。

    だから、マスコミは「日本はもう駄目。縮む一方」という見方で我々の気持ちを萎えさせるのを止めて欲しいと思います。経済が伸びれば、新聞の購読者も戻ってくるかもしれないし、テレビの広告も増えるのですから。

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    メルツ訪日では「中堅国」の協力を形にしよう

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    今日28日には、ドイツのメルツ首相が来日します。彼はその足で29日には韓国、シンガポールにも向かいます。経済安全保障が主要議題だとされていますが、もっと戦略的に外交を組み立てるべきです。日本、ドイツ、韓国、シンガポールと並べると、中国包囲網にも見えるでしょう。しかし中国との経済関係に多くを負うドイツが、そんな「包囲網」にあからさまに加わることはないでしょう。

    それよりも、トランプ米国が米中露首脳会談を挙行して、「世界はメガ大国で仕切るんだ」という方向に傾く中で、日本、ドイツは中堅民主主義諸国の団結に形をつけていくことに力を入れるべきです。「中堅諸国の協力」はこれまで言葉だけでした。しかしもっと形をつけていく必要があります。例えば、政治・安全保障問題について一つの声で発言する「有志連合」を結成し、議長国・事務局を回していく。経済・環境・ODAの諸問題については別の「有志連合」を結成し、これも議長国・事務局を回していく等です。

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    米国中間選挙でトランプはどう出るか

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    11月3日は米国の中間選挙です。私が注目しているのは2点です。一つは、トランプの悪友Steve Bannonなどが提案している、移民・関税執行局の要員(約2万人もいます)を共和党候補があぶなくなっている州に送り込み、投票所の前で投票者が不法移民でないかどうかをチェックすることで混乱を作り出し、その州の投票を無効とする、それによって全国の選挙結果は確定せず、今の議会の勢力配置のまま政治は続く、という可能性。

    ただこれは、不法移民が投票に来るはずがない、と言われれば、意味のない懸念ではあります。「トランプが非常事態を宣言して選挙を延期する」と言う人もいますが、米国大統領はこういうふうに非常事態を利用する権限を持っていません。

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    もう一つは下院で民主党が多数議席を得ると、トランプ弾劾が提議され、それは通るだろう、上院では弾劾ではなく裁判が行われ、ここで議員の3分の2以上がトランプを「有罪」と認めると、彼は罷免される、ここまで行かなくとも、1974年8月のニクソンがそうであったように、上院で共和党議員が彼を見捨てて有罪判決の方に傾く形勢が明らかになった段階で自ら辞任する、という見方です。

    トランプがここまで無抵抗に事態の進展を許すかどうか。多分、全国的に騒擾状態を作り出して、超法規的に議会を停止することさえやりかねないでしょう。ソ連にしても、ナチ・ドイツにしても、独裁は議会の閉鎖から始まっています。

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    米国金融市場のきな臭さ

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    もう一つ。中国経済は壁にぶち当たり、ロシア経済は崖っぷちの中で、肝心の米国経済にきな臭さが漂い始めています。国債の出し過ぎで長期金利の暴騰と国債価格の崩落が起きるところまでは来ていませんが(今の米国は基本的にカネ余りですので、金利が上がれば国債への需要は当面上がるのです)、野放図なAI投資で一部の社債・株式が下落を始め、ここに貸し込んでいるノン・バンク(銀行のような資本規制を受けないので、危ない案件にも投資をするヘッジ・ファンド等の金融機関)の一角が崩落を始めています。2008年のリーマン危機は、住宅ローンを組み込んだサブ・プライムの証券が2007年には下落を始めて、いくつかのノンバンクが破綻するところから始まりました。

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    メガ国家3者首脳会談

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    そういう中、11月18日~19日、中国深圳で開かれるAPEC首脳会議の横で、米中露三者首脳会談が開かれようとしています。ならず者国家にも似たメガ国家たちがウクライナ等の弱小国の運命を一方的に決めることが懸念されていますが、そうはならないでしょう。

    トランプは中間選挙直後で勢いを失っているかもしれないし、この頃には米国金融・株式市場で本格的な変調が見られるようになっているかもしれません。そしてそれよりも、中国経済は米欧への輸出で経済を支えるモデルの限界を迎えており、ロシア経済に至っては国防・公安関係支出が予算の半分近くを占め、しかも増加が止まらない、資金は国内で調達するしかないが、金利が14%という高利の中で国債を増発するのは自殺行為、という状況にあります。つまり「三メガ国家」(ロシアは経済大国ではありませんが)はいずれも、足元がおかしい状況なのです。

    トランプは、同盟諸国、特に欧州、日本の力が必要であることを認識するかもしれないし、認識せず、変な「ディール」をするかもしれません。ただトランプは、APEC首脳会議をドタキャンする可能性もあるでしょう。

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    というわけで、今月の目次は次の通りです。

     日本人の「日本縮小論」自家中毒

     試論:北朝鮮をめぐるパラダイムの変化

     デンマークは、どうやって先進経済を回しているか

     東北紀行-平泉・北上・盛岡文化経済圏の出現

     今月の随筆:赤澤亮正氏の「トランプ関税 交渉の記録」を読んで

  • 北朝鮮をめぐる固定観念卒業の時

    「北朝鮮は南北統一を望んでいない」ことの意味

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    北朝鮮というと、「危険」とか「韓国に攻め込んでくる」とか「トランプとの会談を切望している」とかの連想が働くのだが、ものごとの基本=パラダイムは2024年頃からかなり変わってきたようだ。筆者も、このことをすぐ忘れてしまうので、書いておく。

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    2023年末開かれた、朝鮮労働党中央委員会第8期第9回総会拡大会議で金正恩総書記は、南北朝鮮を「同族関係、同質関係ではない敵対的な両国関係、戦争中にある両交戦国関係」と定義した。

    これだけでは何のことかよくわからないのだが、彼は翌年1月の最高人民会議での演説で、「ほぼ80年間の北南関係史に終止符を打ち、朝鮮半島に並存する2つの国家を認めたことに基づいて、わが共和国の対南政策を新しく法化した」と述べた。つまり統一は求めないこととしたのである。

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    あるセミナーで、日本の代表的な北朝鮮専門家も、次のことを言った。「北朝鮮は今の韓国との交流が進むことを望んでいない。K-Pop等に若者が惹かれ、政府が統制できなくなるのを恐れている。それに、南北朝鮮の関係が良くなれば、在韓米軍は駐留する理由を失って、撤退するだろう。『在韓米軍という脅威』はこれまで、100万人を超える北朝鮮軍を引き締めておく最大のよすがだったのが、これが消えてしまうのは困るからだ」と。

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    僕はこれまで、北朝鮮としては経済建設のために、南北間の平和を確定出来たら御の字なのだろう、トランプを使って平和条約を結べたら喜ぶのだろうと思っていた。

    ところが、ウクライナ戦争がらみでロシアを支援したことで、大枚の資金が流れ込んできた。年間GDPが4兆円程度と推測されている北朝鮮に、年間で1兆円相当と言われるカネが砲弾や兵士提供の見返りに流れ込む。米国、韓国、日本等からの資金は当面不要になった。

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    こうした状況では、トランプに是非会いたいわけでもない。今の対立したまま、それでも平和というのが一番なのだ。「核保有を認めてくれるんだったら、会ってやってもいいよ」程度の話しになってしまったのではないか。

    トランプは既に何度も、北朝鮮と話をしたいと言っている。にもかかわらず話が進まないのは、以上の理由によるものだろう。

  • メルツ首相の来日で「中堅諸国の協力」具体化を

    ドイツのメルツ首相が、28日に来日する。彼はこの後、韓国、シンガポールを訪問する予定。中国を忌避しているように見えるので、日本ではドイツを「中国包囲網」に引き込むチャンスととらえる向きもあるだろう。

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    しかしメルツ首相は既に2月、ドイツが深い経済関係を持つ中国を訪問ずみだ。今回、希土類の輸出制限など、自由貿易に反する中国の行状批判には加わるだろうが、それ以上、「中国を包囲」するような企てには乗らない。また高市首相も、中国を挑発することは避けるだろう。

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    それよりも今回のメルツ訪日では、カナダのカーニー首相などが提唱している「中堅諸国の協力と提携」を進めて欲しい。進めるというのは、口先だけではなく、中堅諸国が一つの声で発言することで大国たちの独走をけん制することのできる足場を作ることだ。

    つまり、主要な分野ごとに、ある程度オープン・エンド(出入り自由)のフォーラムを作る。政治・安全保障問題についてのフォーラム、自由・民主主義の価値観維持のためのフォーラム、市場経済・自由貿易維持のためのフォーラム、情報と文化の自由な交換・交流について等のフォーラムを立ち上げ、それぞれに議長国をローテーションで定め、事務局の役割も果たさせる。

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    たとえて言えば、そういうことだ。日本政府が今回、何を用意しているか知らないし、今回の訪問で多くのことを決めることはできまい。ただ「中堅民主主義・自由経済諸国の提携・協力を具体化するべく、これから議論を深めていく」程度のことは、両首脳に是非発言してもらいたい。準備がしてなければ、記者会見での発言で十分なのだ。