トランプ政権が誕生して以来、同政権とEUの間で奇妙な論争が続いている。目くそが鼻くそを嗤う、とはこのこと。2025年2月ミュンヘンの安全保障会議でヴァンス副大統領はこう言い放った。
「ヨーロッパだけでなく米国も含めて、自由と民主主義の原則を守る必要があります。外部の脅威(ロシアや中国)よりも、内部から民主主義の基本価値が侵食されることこそが最も大きな危機です。
ルーマニアでの選挙結果を無効にする動き、EU各地でのソーシャルメディア検閲、英国やスウェーデンでの表現の自由に対する制限など、これらは民主主義そのものを脅かしています。米国においても、前政権が情報統制を試みました。
移民政策や大量移住に対して、国民が自らの生活や安全、そして価値観に対する不安を訴えることは民主主義の根幹であり、政治家はその声を無視すべきではありません」
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要するにトランプ政権の政策に反対することは自由と民主の文明からの逸脱なのだ、移民受け入れは民主党の誤った政策で、異分子は強制追放されてしかるべきなのだ、というわけ。
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1年後の同じ会議で、ルビオ国務長官も同じことを少しオブラートにくるんで言った。
「米国と欧州は、共に歩むべき存在だ。米国は必要ならば単独でも行動する用意はあるが、我々の望みは…欧州の友である諸君と共にこれを成し遂げることだ。」 そして欧州に対し、移民受け入れ・多文化主義・極度の環境保護・防衛費削減といった潮流には抵抗し、「西洋文明」を守るため決起するよう促した。
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これは別の言葉で言えば、「ヨーロッパよ、偉そうな顔をするな。上から目線でトランプのことをやれポピュリストだの、民主主義にもとることをやっているだの、言うんじゃない。君たちこそ、移民を野放図に入れて、今や自分達の文明を失いかけているじゃないか。偉そうな顔をしていないで、トランプ政権の政策を支持してくれれば、守ってやるよ」ということ。
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ひどい、子供っぽい議論だ。まず、トランプ政権のやっていることが自由と民主主義の精神にかなうとは思えない。例えば移民の取り締まりは、1月初旬ミネアポリスで無辜の市民2名が連邦移民・税関捜査局の武装要員に射殺されたように、非人道的で、法の支配、民主主義にもとるものになっている。
さらにトランプの旧側近スティーヴ・バノンなどは第一期の時から、欧州の反政府・右翼過激集団と親交を結んでいる。これら極右の団体は強権信奉で、民主主義の原則を守るより、移民の強制送還等を求める連中。
ヴァンス、ルビオ、バノンは、こうした連中の方が、欧州の自由と民主の文明を守ることができる、と言っている。彼らの主張、そしてトランプ政権の政策に賛同することが、自由と民主への信仰の証しになるのだそうだ。筆者の「自由と民主の世界史―失われた近代を求めて」をまず読んでもらいたい。英訳は以下のクラウドにアップしてある。
https://docs.google.com/document/d/1hiRK7kjbX0Hxd2NOxPqtQlVWgjDHgKCr/edit
https://docs.google.com/document/d/1MB0Me9P5Lpa2HGceuJUdMqqQ2CRHQSxa/edit



