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ウクライナ戦争は「戦争の作法(戦略・兵器)」をどこまで変えたか

(これは月刊メールマガジン「文明の万華鏡」第166号からの抜粋です)

ウクライナ戦争は、(ロシア)戦車の大量破壊、ドローンの多用で、既存の陸上戦術の根本的再検討を迫っている。日本は海に囲まれているから、ウクライナ戦争の教訓はそのままでは使えないが、遠距離ドローン大隊、水中ドローンの開発などは使えると思う。

ここでは、Foreign Affairs2月17日号から、マイケル・ブラウン、マット・カプラン両氏の論文「アメリカがウクライナから学ぶべきこと――米国はロシアの過ちを繰り返すのか?」を紹介する。

(要旨)

・ウクライナ戦争では衛星、AI、その他がかつてなく活用された。(ロシア軍もイーロン・マスクの「スター・リンク」衛星通信を使って戦った)

・米国は1991年の湾岸戦争で迅速な勝利を収めて以来、米軍の圧倒的な兵力があれば、どこでも短期の決戦が可能なのだと思いがちだ。しかしウクライナ戦争は、小国でも安価な兵器を大量に運用して長期戦を展開し得ることを証明した。ウクライナは、1機数百ドルで製造できるドローンを使って、1発10万ドルもするミサイルと同等の攻撃成果を上げている。ろくな水上艦艇を持っていなかったウクライナが、ミサイルやドローンの併用で、ロシア黒海艦隊の3分の1,つまり25隻の軍艦を破壊した。25年12月には、ロシアの潜水艦に水中ドローン攻撃を実施した。

・ウクライナでのドローン生産はモーター、コントローラー、カメラなどの部品を中国製品に依存している。米軍はこのサプライ・チェーンを自力で形成しないといけない。

・敵の安価な兵器が米国の高度・高価な兵器を破壊する可能性があるので、米軍はこれに機敏に対応する術を学ばねばならない。

・米国は、高度に洗練されたシステムに固執しがちである。F-35戦闘機の開発には20年を要している。空母1隻の費用で、1300万機のドローンを購入できる。

・敵の取り得る戦術をあらかじめシミュレーションし、必要な体制を整備しておくべきだ。柔軟な発想をし得る国防省「ネットアセスメント部」(2025年に廃止)や、外部の者へのシミュレーション委託等が有効だろう。敵に通信システムを破壊された場合のバック・アップ措置も考えておく必要がある。AIを用いれば、多数のシナリオを検討することができる。

・市販部品で構成され、容易に交換・アップグレードが可能なモジュラー・オープン・システム・アプローチをとるべきである。

・生産能力の拡大(特にドローンや弾薬)が必要だ。米国が今年生産するドローンの数は、ウクライナが生産する数の10分の1にも満たない。9000億ドルの国防予算のわずか20%しか、装備の購入に向けられていないが、先端兵器開発用予算(17%相当)の一部を再配分することで、不足を補える。

(以下は筆者の意見)

これまで自衛隊(特に海と空)は、在日米軍との連携、あるいは米空母艦隊の擁護を大きな任務としてきたため、これからは自主防衛力整備との兼ね合いを考えないといけない。その中で、どのような兵器が有効・必要なのかを考えるわけだ。

ただ、トランプがふらふらしている今のような状況では、米軍との連携の将来像も図を描きにくい。ここは対米軍連携・自主防衛の双方に使える兵装、基礎体力を充実させていくしかあるまい。それには、自衛隊や米軍基地の防空能力の向上、南西諸島から北海道に至るまで、有事には海峡を遮断する能力、などがある。

そして、これまで不可能だった技術を世界に先立って実装することができれば、それは日本にとって大きな力となる。例えば、原子炉を備えずとも、2週間程度は潜航を続けられる潜水艦(すでに存在する)とか、水中との通信能力の飛躍的向上などだ。水中ドローン、つまり無人小型潜航艇は本当にこわい兵器だが、水中ではGPSや通常の通信機能が効かない。この問題を克服できれば、非常に強力な戦力になるのだ。「核兵器搭載の原子力潜水艦を建造しないと、日本はちゃんとした抑止力を持てない」と思い込むことはあるまい