日本では自分だけの殻にこもっているのが、一番心地いい。これが個人主義だと、我々は思っています。でも、日本には皆で議論するべきことがまだ沢山あります。そして日本、アジアの将来を、世界中の人々と話し合っていかなければなりません。このブログは、日本語、英語、中国語、ロシア語でディベートができる、世界で唯一のサイトです。世界中のオピニオン・メーカー達との議論をお楽しみください。


高市自民党――独裁か、それとも自民党支配の最後の宴か

(以下は2月25日発行のメルマガ「文明の万華鏡」第166号から)

2月8日総選挙の結果、自民党は議席の68%(316議席)、つまり日本史上初めて一党が議席の3分の2を獲得する快挙を成し遂げた。参院で否決されても、衆院で3分の2の賛成があれば、法案は成立する。野党は存在の意味を失った。自民党は、中国の共産党にも近い、権力独占者の地位を得た。

何でも通る国会の構図

議席の3分の2というのは、自民党独裁を可能にする数字である。憲法に違反していない限り、自民党は自分の望む法案を採択できることになるからだ。衆議院では法案を容易に可決できるし、参院で(ここでは自民党は40%強の議席しか持っておらず、連立与党「維新」の助けを得てやっと56%)否決されても、差戻しの衆院での採決で3分の2以上の票を得ることができれば、成立する。

この手が効かないのは憲法改正だけで、これは衆院、参院両方で各々3分の2以上の賛成、そして国民投票を必要としている。しかし今の参院でも、野党の一部を引きこめば、3分の2にぎりぎり届き得る。

戦後、米占領軍当局に憲法草案を押し付けられたという意識のある自民党は、憲法改正を党是としている。ただそれは、日本を戦前の専制・帝国主義に戻すというのではなく、自衛隊を軍隊と改称して憲法上の裏付けを与え、かつ自衛のための武力の行使を明文で認めるという、他の独立国では当たり前のものに変えるだけの話しである。

なお、「核兵器を持たない。作らない。持ち込ませない」という、いわゆる非核三原則はもともと法律でさえない(衆議院決議)ので、最後の「持ち込ませない」という点からまず緩和(但し陸上配備ではなく、核兵器を搭載した米艦船が日本の港に寄港する程度)されていくだろう。ただ、米国は日本に持ち込めるような核兵器を未だ開発中である(一度トマホークを完全に撤退させている)ので、差し迫った問題ではない。

衆院で失われる野党の存在感

議会の最大の仕事は、予算、つまりどこからいくらの税金を取って、どこにいくら配るかを決めることにある。それは国王と貴族の間の利権闘争という歴史の中で形成された西欧、そしてその伝統を受け継いだ米国の議会で、顕著に見られるところ。

ところが日本は政府の力が強く、明治憲法で国会を作ったものの、それは欧米の列強に日本も近代国家になったのだという体裁を示し、不平等条約の改正を迫ることに大きな目的があった。戦後も、野党勢力には勝手なことを言わせてガス抜きするだけ。野党が修正動議を出しても否決されるので、野党主導で予算案が修正されたことはない。予算案は大蔵省・財務省と自民党の間で事前に揉まれるが、ここに野党が直接介在することはない。

今回自民党が3分の2もの議席を取ったことで、この「野党は無力」ということが白日の下にさらされる、ということになる。日本では、労働組合や創価学会など野党の基盤が溶融し、日本社会が一つの溶融物になってしまった感があるので、これまでの「野党」的存在は先細り。これからの野党は、ぐつぐつと煮える社会の中で、泡のように立ち上る新規のポピュリスト政党(賞味期限つき)ということになるのだろう

自民党議員が社会と政府をつなぐ役割を立派に果たしていれば、これでいいのかも。中国共産党と日本自民党が似て見えてくる。そう言われると、両方とも怒るだろうが。

大勝は大乱を招く

大勝の後には危機が訪れやすい。高市総理は独断で重要な発言、決定を行うことがあり、それで一度つまずくと自民党内外での批判が広がる。マスコミの中で自民党、特に高市総理に敵対するものは、政権関係者の醜聞を掘り起こしていくだろう。女性の多くは女性宰相の出現を喜んでいるが、高市総理を嫌う女性もまた多い。

参政党は、消費税減税や「給付付き税額控除」などを超党派で議論する「国民会議」に呼ばれていない(消費税全廃を主張しているため)ことでキレて、これからは政府批判で大暴れする構えを示している。ただ、いくら暴れても、国会での質問時間は限られている。結局、衆院はこれから最大4年、自民党が割れない限り、現在の構図が続くだろうが、その間、次の参院選挙、つまり2027年7月周辺で何かが起こり得る、ということになる。ここでも高市自民が勝てば、自民党は憲法改正に乗り出すだろう。

自民党、最後の宴に?

ウラがね問題で叩かれていた自民党の面々は、今回の返り咲き組も含めて、図に乗ることだろう。旧安倍派「五人衆」残党間の勢力争いは激しくなり(そのうち西村康稔は選挙での候補者の選定を担う党選対委員長、萩生田光一は党全般の運営を牛耳る幹事長代行、松野博一は全国の支持団体・組織との関係を取りまとめる組織運動本部長。それぞれ自民党の足腰を握る)、それはいかに何でも数年内には去るであろう麻生氏をトップにいただく麻生派の今後(ここでは河野太郎がどう動くか)、岸田文雄、林芳正、菅義偉、二階俊博の一派の去就と合わせて、注目されるところ。もっとも誰かが自民党から飛び出ることがない限り、コップの中の嵐に止まるが。

   

いずれにしても、今度の選挙の結果、自民党がウラがね等、昔のままに戻ってしまっては困る。そうなったら、次の選挙で大負けしかねず、その時は今回の勝利は最後の宴ということになるだろう。

日本の社会も変わってきていて、これまでのように農協や郵便や医師会等々、地元の利益団体を相手に組織票をがっぽり得られる時代でもなくなっている。地方の支持団体・組織幹部と飲み食いや葬礼を共にすることで党を維持する時代は卒業し、もっと正面から日本の民主主義制度の構築を考えていくべきだ。

その際は、優等生的に過度の浄化をはかるより、与党も野党も「これなら何とか守れる。何とかやっていける」という範囲でルールを定め、それをきちんと守っていくことを基本にしてもらいたい。