日本では自分だけの殻にこもっているのが、一番心地いい。これが個人主義だと、我々は思っています。でも、日本には皆で議論するべきことがまだ沢山あります。そして日本、アジアの将来を、世界中の人々と話し合っていかなければなりません。このブログは、日本語、英語、中国語、ロシア語でディベートができる、世界で唯一のサイトです。世界中のオピニオン・メーカー達との議論をお楽しみください。


デジャヴュ 今トランプのやっていることは、2020年1月に酷似

(今、これまでのメルマガ「文明の万華鏡」から、今でも面白いものを発掘してはこのブログに掲載しているのだが、2020年1月の第93号を見ていて、驚いた。イラン、中国、日米経済等々、当時トランプが仕掛けたことは今とそっくり。6年前のこととは気がつかない人もいることでしょう。「今」を考える参考になるので、ここに再録しておきます)               

.        河東哲夫

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仁義なし、ならず者の支配する世界へ

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1月3日早々にはイラクで、イラン革命防衛隊の幹部スレイマニが、米軍のドローンによって、疾走中の車中で爆殺されました。これを受けてイランは8日、イラクの米軍基地をミサイルで攻撃するという大胆な行為に出ました。

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戦争にエスカレートが必至だと、世界が息をひそめる中(実際にはイランは、米軍に死傷者が出ないよう、攻撃先を密かに通報し、「これにて打ち止め」にしようというシグナルを送っていたようです)、トランプは「幸い、米軍に死傷者は出なかった(実際には約10名の負傷者が出たようですが)。自分は報復のエスカレーションを望まない」と声明したのです。

トランプは、イスラエルやサウジのようにカネを出してくれるスポンサーの言うことを何でもかなえてやるが、それが戦争になりそうになると放り出す、ということが如実になった一幕でした(このあたりは、講談社の「現代ビジネス」https://gendai.ismedia.jp/articles/-/69775をご覧ください)。

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こうして世界は、大国のエゴ、力とカネが支配するものになりつつあります。自由、民主主義といった近代西欧の工業化社会の価値観は、格差拡大が起こしたポピュリズムの波の中、泥にまみれつつあります。

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19世紀の産業革命は都市に広範な中産階級を生み、彼らが「市民社会」の価値観を支えてきましたが、今先進国で起きている工業の空洞化は、中産階級を溶解させ、市民社会を分解させつつあります。その様は、19世紀の産業革命が西欧の農村共同体を分解させた過程と似通って、今度は都市の中産階級共同体が分解しているのでしょう。その結果放り出される一般の人間達はこれからどうなるのか、まだ見えてきません。

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米中貿易合意で、日韓台湾は放り出される?

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1月15日には米中の貿易問題に関する「第1段階の合意」が達成されました。中国はこれからの2年間で対米輸入を、米国が関税を引き上げる以前の正常値に比べて2000億ドルも上積みすることを約束したわけですが、中国経済不振の中、これの実行は難しいでしょう。

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しかし貿易交渉で米中いずれが「勝った」かという議論よりも、トランプはこの問題で矛を収めた、次期大統領選まではこの問題を蒸し返すことは多分やらないし、やれないだろう、ということの方が重要です。米政府による先端技術の対中輸出制限は強化されるでしょうが、トランプ自身はそれほど熱心ではないでしょう。彼は、「中国の一方的な貿易黒字を減らし、米国労働者のための雇用を回復した」ということを大統領選で言えればそれで充分だからです。

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こうして、「米中は関係修復(1月21日ダヴォスの世界経済フォーラムで、トランプは演説。「自分と習近平の関係はかつてないほど良好」と言っています)。そしてトランプは海外での戦争はしない」ということが世界の基調として当面定着したわけです。キッシンジャーは昨年11月14日の講演で、米国はもう中国を倒すことはできない、競合しつつ共存していくしかない、と言っています。

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こうなると北朝鮮は、トランプ米国を舐め、大胆な挑発に乗り出すことでしょう。中国も台湾に対して強硬な姿勢に出て、事態の展開次第では海軍を使って台湾を封鎖するような挙に出るかもしれません。その時米国が軍事介入しないと、日米安保条約もその有効性を疑われることになるでしょう。

逆に米国が軍事介入し、それに自衛隊が参加しますと、日本は中国からの攻撃を受ける可能性が出てきます。もし自衛隊が参加しないと、今度は米国の方が日米安保条約の有効性を疑ってくるでしょう。こうして、トランプの「大胆な」外交は、世界の枠組みを崩壊させ、力とカネが世界を支配、中小国が割を食うことになりつつあります。

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トランプ弾劾の見通し

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トランプ弾劾は現在、上院に上がっていて、「3分の2の票を取れずに、あっさり否決される」という見方がもっぱらですが、民主党は喚問する証人を増やす等、この件を最大限に活用しようとしています。上院の議席(100)は、共和党が53、民主党が45になっていて(無所属が2)、憲法は「弾劾裁判に出席した議員の3分の2以上の支持があれば」弾劾は成立するとしています。

この「出席した議員の」という規定の意味が不明瞭で、資料の中には67名以上(つまり上院議席の3分の2)という数字を掲げるものもありますが、確言はできません。もし100名の3分の2、そのうちのまた3分の2ということだと44名で、共和党議員が多数欠席すれば、弾劾は成立します。

弾劾が成立せずとも過半数を取るだけでも、世論に大きな衝撃を与えるでしょう。もしかすると、共和党内部から大統領選に立候補する者が現れ、党大会でトランプにチャレンジすることになると面白い展開になるでしょう。

 いずれにしても今の情勢では、トランプは再選。そして続く4年の間に世界の同盟体制は崩壊し、諸国は完全自主防衛と周辺諸国との無原則な合従連衡を迫られることになるでしょう

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