日本では自分だけの殻にこもっているのが、一番心地いい。これが個人主義だと、我々は思っています。でも、日本には皆で議論するべきことがまだ沢山あります。そして日本、アジアの将来を、世界中の人々と話し合っていかなければなりません。このブログは、日本語、英語、中国語、ロシア語でディベートができる、世界で唯一のサイトです。世界中のオピニオン・メーカー達との議論をお楽しみください。


世界紀行2:ユーラシア その2 「天元」のウズベキスタン

「天元」のウズベキスタン

(ユーラシアその1の続きです)

 中央アジアはユーラシア大陸の真ん中にあって、中国、ロシア、インド、イランといった大国にはさまれた戦略的要衝だ。碁盤の「天元」あるいはチェス盤の真ん中だと思えば、その重要性はわかっていただけるだろう。この地域が不安定になれば、周辺の大国も不安定要因を抱え込む。この地域で一つの大国だけの力が圧倒的になれば、ユーラシア大陸全体の力のバランスが変わる。

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 中央アジアはもともと遊牧民族国家、通商都市国家の渾然一体とした集合体で、今の国境や国の名前はスターリンが強引に作ったものだけれど、独立してもう十二年もたつとそれぞれに特色もはっきりし、日本や他の国で思っているほど「わけのわからない新興国」ではない。人間が住んでいる、リアルなパワー 、しかも古い文明を持つ国々なのだ。

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 ウズベキスタンは一九九一年に独立して以来、十年そこらという短い間に国家機構を作り上げた。ソ連時代、「ウズベク・ソビエト社会主義共和国」にも「外務省」はあったが三十人そこらしかおらず、外国人の客の世話と監視がその仕事だった。それが今、三百人以上(注:これを書いたのは二〇〇三年。現在は千人程度にはなっているだろう)にもなり、世界中に大使館を持っている。各省、そして地方の統治機構も整い、一応官僚組織として動いている。人口の若い国なので、二〇五〇年までには人口が倍増して五千万人になると言う。

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 首都タシケントは大きな都市だ。人口は二百五十万人で(注:現在は三百万を超える)、大きな環状線道路の中の面積は山手線の中の四倍もある。古くからの商都の部分はくねくね入り組んだ通路と汚れた白壁の家が密集する旧市街として残っているが、大部分はソ連領中央アジア全体の中心として新しく作られたものだ。街の一角にはソ連時代の中央アジア軍管区本部が広壮な姿を見せているが、今そこはウズベキスタン国防省になっている。夏の暑さを凌ぐためか街はすっぽり木立に包まれ、その中にアパートやオフィスビルや店が点在している風情がある。道路は広く車はまだ少ないが、歩行者が飛び出してくるのでスピードはあまり出せない(注:今は車があふれている)。

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 第二次大戦の頃、ウズベキスタンにはロシアから工場が疎開してきた。飛行機工場、電子製品工場、化学工場、トラクター 工場といった大工場が地方にも点在している。そしてかつては軍需が殆どだったこうした工場は手厚い予算をもらっていただろうから、街も立派になるというものだ。それに一九六六年のタシケント大地震の後、復旧事業に参加すればアパートがもらえるということでやってきた人達もいる。

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 とにかくタシケントの街の構えはあまりに壮大で、ここには温かい南の地域へのロシア人の憧れと野心も反映されていたのではないか。タシケントの新市街のアパートには今でもロシア、ウクライナ、ユダヤ、アルメニアといった白人が多く住んでいる。ソ連時代、大工場で働く者の多くはこうした白人だったのだ。タシケントは「パン籠」と呼ばれ、ここに来れば飢えることはないと信じられていた。エセー ニン、アフマートヴァといったソ連の文化人もここに長期滞在した。

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ウズベキスタンの経済はまだソ連時代の計画経済を止めていないが(注:これはカリモフ大統領時代のこと。現在は「計画」と言うより、国営企業に対する政府のきつい縛りとして残っている)、流通やサービスはもう自由化されているので、街には西側のブティックやインターネット・カフェが軒を並べる。でも生活のテンポはモスクワに比べてずっとゆっくりしていて、四つ角で架線から

外れたトロリー・バスのポールを運転手が懸命に引っ張っている傍で、近所の主婦連が何事も起こっていないかのようにお喋りにふけっていたりする。

 フェルガナ地方にある大宇の自動車工場で作られたNEXIAが何台も通りすぎる中、時には近郊の農夫がロバに荷車を引かせてタシケントの街にやってくる。夏の太陽がぎらぎらと照りつける中、まだ若くがっしりした浅黒い肌の農夫はさすがに疲れて半分うずくまり、手綱を持ったままロバより大きな口を開けてアクビをする。汗に光るその顔の回りには何匹もハエが舞っていた。

(注:これを書いてもう二十年余。街頭風景は北京あたりに似たものになっている。韓国の大宇は破綻して、自動車工場は現在、実質的に国営になっている)

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