これは、拙著「『自由と民主』の世界史―失われた近代を求めて」の冒頭からです。面白いので、ここにアップしておきます。
.河東哲夫
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宇宙と同様、わからないのは、生命の始原。有機物が細胞を作って遺伝子を作り、それで器官を作って、化学反応や電気信号で脳がそれを動かす、この不思議な生命体はどうしてできたのか。電気信号や化学反応で人造筋肉を動かすくらいならもうできるだろうし、遺伝子の構造もわかってきているが、ではどうやって自然界であの複雑な遺伝子ができたのか、それはこれからもわかるまい。そして、そういう構造と全く違う原理でできた高等生物もあり得ると思うのだが、それはまた別の話し。
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地球に生命体が誕生した過程については、まだいくつかの仮説があるだけ。隕石がアミノ酸や糖類を持ち込んだという説があるが、そんなものが地球の大気に突入した時、高熱でよく燃え尽きなかったものだ。そもそも、地球で初めてできた生物は何を食べて生きていたのだろう? あるものは空気と無機物だけだったのだ。
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地上にあった無機物、鉄や水、アンモニアなどに隕石が高速度でぶつかると、生命のもととなるアミノ酸や塩基ができることを証明した実験もある 。こっちの方が事実に近いような感じがするが、でもその後それがどうやって生命体になったのかはわからない。
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地球にはカンブリア紀の謎というものがある。地球では約三十億年にわたって単細胞に近い単純な生物が殆どだったのが(今でもいるが)、およそ五億四千万年前のカンブリア紀に、多種多様な生物が一気に現れている。その期間は約千百万年。この時、目を持つ生物が現れて、他の生物を捕食し始めた――これは如何にもありそうな話だけれど、完全に納得する気も起らない。
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むしろ、宇宙人が生命体や人類を持ち込んだという、眉唾の話しの方がよほど胸にすとんと落ちる。でも、それが事実だとするなら、その宇宙人の住む星では生命体がどうやって発生したのか、そしてそれがどうやってその宇宙人に進化したのかが次の謎となる。
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五回あった生物大絶滅
こわいのは、この地球では生物がほとんど絶滅した破局が五回もあったということだ。せめて自分のひ孫の世代までは、こういうことが起こらないでほしい。原因は火山の大噴火とか、恐竜の場合のように隕石の衝突とか。約二億千五百万年前には直径七キロ程の隕石がカナダのケベック州に落ちており、ちょうどこの頃、生物の大量絶滅が起きている。約六千五百万年前、直径十キロもの隕石がユカタン半島近くに落ちた時は、恐竜が死滅したと言われる。この時は三百米もの高さの津波が発生したと言うから、メキシコ湾岸を囲む地域では、文字通り生命が洗い去られたことだろう。
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もっと壮大なスケールの破滅論がある。それは「太陽系は二億五千万年ほどかけて銀河系星雲を公転しているのだが、その中で三千万年に一度、銀河の円盤を通過する。ここは暗黒物質が集中しているところで、これが六千六百万年前の地球の生物(特に恐竜)全滅(九十%)の理由ではないか」というもの。つまり、ユカタン半島に直径十キロの隕石が落ちたのは一種のとどめで、その前くらいから恐竜は暗黒物質で窒息していた(?)ことになる。しかし、これまで地球で起きた五回の生命大絶滅の時期は、三千万という数字では割り切れない。生物大絶滅は、ゴンドワナ大陸の分裂とか、何か別の理由によるものなのだろう。




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