10月28日に月刊メルマガ「文明の万華鏡」を「まぐまぐ」社から刊行しました。
これの冒頭部、10月の日本・世界情勢の記録になりますので、ここにアップしておきます。
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秋になりました。10月中旬、平泉、花巻、盛岡、そして紅葉の八幡平を回ってきました。八幡平ではホテル「八幡平ハイツ」に泊まりましたが(1泊13000円)、ここはなんと天皇・皇后両陛下が三代にわたって宿泊されたということで、畏れ多いことでした。
岩手と言えば日本のチベットとか、難解な方言をしゃべる所だとかあしざまに言われていましたが、今回はその見方を一新しました。平泉は言うに及ばず、盛岡は以前から京都文化が流入したところですし、仙台から盛岡まで実に180キロ、関東平野の南北を上回る距離が北上川の作った広大な平野で(盆地と言いますが平野です)、ここは水田、そして電機・家電・自動車の工場が集中するようになっています。詳しい様子は、後出の旅行記でご覧ください。
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ドルに換算すると縮んで見える日本経済
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今月は、「日本は2027年には英国にもGDPで抜かれて、世界6位に下がる」というIMFの見通しが大々的に報道されて、我々のやる気をまた殺ぎました。確かに2010年~2025年の数字を並べてみると、日本経済の低パフォーマンスぶりは際立っています。
この間日本の名目GDP(円ベース)は30,6%しか伸びていないのに対して、米国は実に104,4%、ドイツでも73,2%伸びています。米独ともインフレ率では日本を上回っていますが(米国が47,6%、ドイツが38,4%、日本が18,0%)、それでGDPの伸びがすべて相殺されるわけではなく、しかも平均名目賃金は日本をはるかに上回る伸びを見せています(米国が61%、ドイツが59,8%、日本が19,5%)。
それでも、往生際の悪い発言をするならば、今の日本のGDPを2010年のレートでドルに換算すると約7.6兆ドルになり、それはドイツの5.1兆ドル(但し現在のユーロ・ドルのレートで計算)をかなり上回るものになるのです。そして我々の生活実感では、日本での都市生活の便利さは、世界でもトップ・クラスを維持しています。
だから、マスコミは「日本はもう駄目。縮む一方」という見方で我々の気持ちを萎えさせるのを止めて欲しいと思います。経済が伸びれば、新聞の購読者も戻ってくるかもしれないし、テレビの広告も増えるのですから。
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メルツ訪日では「中堅国」の協力を形にしよう
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今日28日には、ドイツのメルツ首相が来日します。彼はその足で29日には韓国、シンガポールにも向かいます。経済安全保障が主要議題だとされていますが、もっと戦略的に外交を組み立てるべきです。日本、ドイツ、韓国、シンガポールと並べると、中国包囲網にも見えるでしょう。しかし中国との経済関係に多くを負うドイツが、そんな「包囲網」にあからさまに加わることはないでしょう。
それよりも、トランプ米国が米中露首脳会談を挙行して、「世界はメガ大国で仕切るんだ」という方向に傾く中で、日本、ドイツは中堅民主主義諸国の団結に形をつけていくことに力を入れるべきです。「中堅諸国の協力」はこれまで言葉だけでした。しかしもっと形をつけていく必要があります。例えば、政治・安全保障問題について一つの声で発言する「有志連合」を結成し、議長国・事務局を回していく。経済・環境・ODAの諸問題については別の「有志連合」を結成し、これも議長国・事務局を回していく等です。
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米国中間選挙でトランプはどう出るか
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11月3日は米国の中間選挙です。私が注目しているのは2点です。一つは、トランプの悪友Steve Bannonなどが提案している、移民・関税執行局の要員(約2万人もいます)を共和党候補があぶなくなっている州に送り込み、投票所の前で投票者が不法移民でないかどうかをチェックすることで混乱を作り出し、その州の投票を無効とする、それによって全国の選挙結果は確定せず、今の議会の勢力配置のまま政治は続く、という可能性。
ただこれは、不法移民が投票に来るはずがない、と言われれば、意味のない懸念ではあります。「トランプが非常事態を宣言して選挙を延期する」と言う人もいますが、米国大統領はこういうふうに非常事態を利用する権限を持っていません。
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もう一つは下院で民主党が多数議席を得ると、トランプ弾劾が提議され、それは通るだろう、上院では弾劾ではなく裁判が行われ、ここで議員の3分の2以上がトランプを「有罪」と認めると、彼は罷免される、ここまで行かなくとも、1974年8月のニクソンがそうであったように、上院で共和党議員が彼を見捨てて有罪判決の方に傾く形勢が明らかになった段階で自ら辞任する、という見方です。
トランプがここまで無抵抗に事態の進展を許すかどうか。多分、全国的に騒擾状態を作り出して、超法規的に議会を停止することさえやりかねないでしょう。ソ連にしても、ナチ・ドイツにしても、独裁は議会の閉鎖から始まっています。
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米国金融市場のきな臭さ
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もう一つ。中国経済は壁にぶち当たり、ロシア経済は崖っぷちの中で、肝心の米国経済にきな臭さが漂い始めています。国債の出し過ぎで長期金利の暴騰と国債価格の崩落が起きるところまでは来ていませんが(今の米国は基本的にカネ余りですので、金利が上がれば国債への需要は当面上がるのです)、野放図なAI投資で一部の社債・株式が下落を始め、ここに貸し込んでいるノン・バンク(銀行のような資本規制を受けないので、危ない案件にも投資をするヘッジ・ファンド等の金融機関)の一角が崩落を始めています。2008年のリーマン危機は、住宅ローンを組み込んだサブ・プライムの証券が2007年には下落を始めて、いくつかのノンバンクが破綻するところから始まりました。
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メガ国家3者首脳会談
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そういう中、11月18日~19日、中国深圳で開かれるAPEC首脳会議の横で、米中露三者首脳会談が開かれようとしています。ならず者国家にも似たメガ国家たちがウクライナ等の弱小国の運命を一方的に決めることが懸念されていますが、そうはならないでしょう。
トランプは中間選挙直後で勢いを失っているかもしれないし、この頃には米国金融・株式市場で本格的な変調が見られるようになっているかもしれません。そしてそれよりも、中国経済は米欧への輸出で経済を支えるモデルの限界を迎えており、ロシア経済に至っては国防・公安関係支出が予算の半分近くを占め、しかも増加が止まらない、資金は国内で調達するしかないが、金利が14%という高利の中で国債を増発するのは自殺行為、という状況にあります。つまり「三メガ国家」(ロシアは経済大国ではありませんが)はいずれも、足元がおかしい状況なのです。
トランプは、同盟諸国、特に欧州、日本の力が必要であることを認識するかもしれないし、認識せず、変な「ディール」をするかもしれません。ただトランプは、APEC首脳会議をドタキャンする可能性もあるでしょう。
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というわけで、今月の目次は次の通りです。
日本人の「日本縮小論」自家中毒
試論:北朝鮮をめぐるパラダイムの変化
デンマークは、どうやって先進経済を回しているか
東北紀行-平泉・北上・盛岡文化経済圏の出現
今月の随筆:赤澤亮正氏の「トランプ関税 交渉の記録」を読んで




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