(今般、一般財団法人平和・安全保障研究所が今進んでいる安全保障関連三文書改定を念頭に、政策提言集を出した。
タイトルは「新たな総力戦の時代における安全保障戦略ー厳しさを増す国際環境を踏まえて」である。
河東の一文「『中国封じ込め』には抑制を効かせた戦略を」も掲載していただいている。
ここにアップさせていただく。特に強調したい点は太字・イタリック体にしてある。)
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「『中国封じ込め』には抑制を効かせた戦略を」
河東哲夫
(元在ウズベキスタン大使、在ロシア大使館公使)
(注:このタイトルだけで眉を逆立てる人がいるだろうが、趣旨はトランプ米国の対中対応が定まっていない今は、日本だけが中国警戒を呼び掛けて一人前面に出るのは愚だということ。必要な抑止力は整備していくが、静かに進め、中国と協力できる分野では協力しよう、ということである)
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.(本文)
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前回の国家安全保障戦略等は、日米安保を軸に策定されている。しかし今回は、国際関係の枠組み、そしてAIの登場で兵器体系及び戦法が大きく変化していく途上にある。さらにロシアでさえ、動員を逃れて青年が大量に海外に逃避する時代で、19世紀以来の「国民国家が兵を徴募する」という考え方及び仕組みが成り立たなくなっている。この三点から、今回の安保関連三文書改定で何が望まれるか書いてみたい。
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日本をめぐる国際関係の枠組み変化
――「米ロ・米中・米朝対立が与件」でなくなるかもしれない時代
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1)戦後は、米ソ・米中対立が国際政治の与件であった。これに沿って、同盟関係も構築されていた。それは、終戦直後は欧州、日本が疲弊していて、戦勝国ソ連が勢力圏を拡張する動きを抑えられなかったことが大きい。
しかし今日ではソ連共産主義は破綻し、一方米国トランプ政権も自由・民主主義の価値観を軽視している状況下、米ロ・米中関係は単なるパワー・ポリティクス、あるいは没価値の「取り引き」に変化した。世界は欧州諸国、ロシア、日本、米国、中国などが随時合従連衡してはパワー・ポリティクスを展開した、戦前の状況に似てきたのである。
またアジアでは、韓国は言うに及ばず、以前は一方的に守られる存在であったASEAN諸国は、政治・経済・軍事力をつけ、国際政治における別個のプレーヤーとなりつつある。
また米軍は、イラン戦争でもその力の限界が明らかになったし、台湾有事の場合にも、米軍の関与の度合いは限られるだろう。
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2)従って今後の日本の安全保障体制は、現在の日米安保関係を基軸とするものから、中国との宥和を含有するものまでの、可能性の幅を持つものとなろう。
しかしいずれの場合においても、日本の自主防衛力の整備は不変の課題なので、この一文において、日米関係の緊密度に応じての日本のcontingency planを緻密に作り上げることはしない。
それよりも、日米安保関係が相対化する場合には、核抑止力をどうするかの問題が切実なものとなる。しかし筆者は、日本の核武装の必要性・有用性について確信が持てないので、ここでは問題の存在の指摘のみにとどめる。
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3)従ってここでは、上記(1)の国際関係の変化に伴って、日本の外交面でのものの言い方を変えていく必要性にのみ言及しておく。
つまり、「アジア・太平洋諸国を巻き込んで、米国と共に中国を封じ込める」という前回「戦略」の基本思想が、上記(1)の変化に見合わないものになっており、これを今回も明文で書き込めば、アジアの中での日本を浮き上がらせてしまいかねない、ということである。
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ではどうすればいいかと言うと、「米国と共にアジア・太平洋諸国を巻き込み、更に中国も引きこんで、武力不行使を宗とするアジア・太平洋地域の平和維持体制を構築する」ような方向に転ずるのが一案である。つまり、全員が手を縛り合うのである。
戦前のワシントン体制=四カ国条約体制に似て、十分なものではないが、無いよりましなものだし、外交のツールとして使えるものだろう。
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国家と国民間のコミュニケーションに質的変化を
1)現行の安保関連三文書には、日本社会とのコミュニケーション、つまり広報への言及がほぼないのは、驚くべきことである。
野党の多くが、以前のイデオロギー的な立場、あるいは日米安保条約・地位協定の解釈についての「神学論争」から離れ、本音ベースでの安全保障論議に応じてくる時代になっているだけに、もったいないことである。
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2)また、自衛隊の地位向上は必要だが、それによって安全保障問題のブラック・ボックス化が助長されたり、防衛当局者の夜郎自大化(戦前の一部軍関係者のことを念頭に置いている)が起きないよう、制度的な歯止めが必要である。
(注:これは実は一番重要なことなのだ。自衛隊の人たちが自分たちの権限、権威を守ろうとして、外部との議論に応じないようになったら、それは戦前の軍隊のようになってしまう)
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3)安全保障問題についての広報はこれまで、上から目線で国家を守る義務を説教したり、日米安保関係についての言い訳がましい説明が主で、社会の共感を得られるものではなかった。オープンで内容のある議論を関係者が展開し、インターネットで一般人も参加できるような場を設けていくべきである。
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AI時代の防衛体制
1)軍事面でのAIの使用が急速に広がっている。米国のPalantir社が開発したシステムTITAN等は、敵の標的、レーダー基地、味方の保有兵器等、無数の情報を集約し、分析して戦法を編み出す。戦場での指令を、AIが代行することも起きているだろう。
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2)これは日本にいくつかの問題を提起する。情報収集体制の未整備もさることながら、米軍のような豊富な兵器のレパートリー、数量を自衛隊は持っていない。ドローンの使用もそうだが、日本は日本で独自のAI利用方法を編み出すしかないだろう。しかしそれは、有事の米軍との共同行動を益々難しいものとする。
3)今、AIは米軍で急速に浸透しつつあり、その進歩は日進月歩である。日本の悠長な兵器開発・調達予算システムでは、追いつけない。柔軟な使用を認める一定の予算枠を設定するべきである。但しそれのブラック・ボックス化を容認してはならず、実質的な監査メカニズムも同時に設定しておく必要がある。




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