日本では自分だけの殻にこもっているのが、一番心地いい。これが個人主義だと、我々は思っています。でも、日本には皆で議論するべきことがまだ沢山あります。そして日本、アジアの将来を、世界中の人々と話し合っていかなければなりません。このブログは、日本語、英語、中国語、ロシア語でディベートができる、世界で唯一のサイトです。世界中のオピニオン・メーカー達との議論をお楽しみください。


本当に「多極化」した世界で、ロシアはやっていけるのか?

ロシアがずっと言ってきた世界の多極化、米国覇権の凋落が本当になってきた。まだそうなると決まったわけではないが。するとロシアは途方に暮れてしまうのでないか? これまでは、国内のインフレも何も、「悪いのは西側。米国。そして欧州」と言っていれば良かったのが、多極化の中で西側がロシア制裁を緩めたりすれば、「それでもうまくいかないのはロシア政府の責任だ」ということになってしまうからである。

1991年ソ連の崩壊で、西側のある新聞に出た漫画は面白かった。そこでは東独の市民がドイツ再統一の知らせで、「自由だ! 万歳!」と叫ぶ。次のコマでは彼の顔が歪み、「自由?」と自問すると、恐怖心に駆られて逃げ出してしまうのである。つまり全てのことは自分で決められるので、自分の責任になる。自分自身に経済力がないと、世界での自国の地位も、自分の政権も危うくなるということだ。

.

通用しなくなる「ロシアは核大国」

.

これまでロシアは追いつめられると、核兵器をちらつかせて相手を脅すことが多かった。それが次第に効力を失いつつある。まずウクライナ戦争でプーチンが何回も核の脅しを使ったものだから、オオカミ少年化が進んでしまった。

そして2月5日に、新START(戦略核兵器削減)条約が効力を失った。トランプは中国の核装備充実を念頭に、国防費を倍増してでも、核装備を増強し、敵の核から身を守る体制-「ゴールデン・ドーム」構想を実現しようとしている。これでロシアの核は無力化されてしまう。「ゴールデン・ドーム」とは、1980年代レーガン大統領がかかげた「SDI」構想に類似して、ロシアの核ミサイルが米国に向けて空中を飛び始めたら、宇宙から撃ち落とす、あるいは宇宙からロシアのミサイル・サイロを破壊するものだ。SDIは言葉だけにとどまったが、今回は技術的には可能な域に達している。

核による脅しが無効になった場合のロシアは惨めな存在だ。

.

ごまかせなくなる経済苦境

.

ロシア人の生活はこれまで戦争のあおりを受けず、モスクワなどはむしろ繁栄気味であるらしい。しかし、イラン戦争で原油価格が急上昇したものの、ロシアは原油積み出し施設をウクライナのドローンに破壊されて、輸出量を増やせないでいるようだ。民需用品の生産も減少が目立つ。西側の制裁で、ロシアの航空会社は機材の確保に苦しみ、これから欠航・事故が増えていくだろう。

3月16日付のBellingcatは、ロシア経済に次の問題を指摘している。

.

1)国債発行が増え、かつ金利も高い中で、国債返済・利払い額が増えている。26年予算案では、歳出の8,8%に及び、ウクライナ戦争前の4,4%から倍増する。

2)増税・インフレ

1月にはVAT(付加価値税。消費税に相当)が20%から22%に上がり、インフレ率を0、6%以上あげた。一部公共料金も1,7%値上げされる。

3)借金して投資するより、融資返済へ

法人の債務は24年、17、9%も増加。25年も9、4%増えた。しかし法人は、借りた金を投資より融資返済に回す。金利が低かった時代にため込んだ法人負債は5兆ルーブルもある。

4)民需製造業停滞(またはdeindustrialization)

25年1ー11月、民需製造業は4、9%減少。トラクターは61、6%減少、ブルドーザーは53、7%減少、自動車は34、1%減少。食品生産が15年ぶりに減少。

2008ー09年の危機では工業は10ー15%減少、2015ー16年には3ー5%減少した。現在の4、9%減少はその中間、景気後退(recession)レベルだが、これが半年以上続くと、後戻りの効かないstructural deindustrializationが始まる。

5)中ロ貿易減少

開戦以来初めて減少。7%減少して2280億ドルへ。ロシアの輸入は10、4%減少して1033億ドルへ、輸出は3、9%減少して1248億ドルへ。

中国の対ロシア自動車輸出は激減で、ほぼ半減した。11ヶ月で234億ドルだったのが、昨年は116億ドルに。recycle fee(税金)のせい。

6)地方財政逼迫

地方財政は3年間黒字だったが、赤字へ転じた。昨年1ー9月、89の州レベル自治体のうち55が赤字。モスクワ、サンクト・ペテルブルク、タタールスタンは黒字で、これが全体の黒字の3分の2。一方、52の自治体の赤字は6450億ルーブルに上る。

エネルギー資源に依存している自治体が特にひどい。ケメロヴォ(石炭)が440億ルーブル、イルクーツク(天然ガス等)が410億、ヤマロ・ネネツ(天然ガス)が330億ルーブルの赤字だ。

もし20の州レベル自治体が10%以上の赤字に直面すると、状況は危機的と見なされる。2015ー16年の危機では、15の自治体が中央の助けを求めた。