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街角での雑想

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2009年11月21日

ロシアに我々の税金を注ぎ込むのはもう沢山

米国のロシア専門家サイムズ氏とエネルギー問題専門家サンダース氏が、"National Interest"誌最新号に共著論文を掲載した。
「ロシアではメドベジェフ大統領とプーチン首相のどちらが支配しているのか不透明な状況にあるが、これは2012年の大統領選挙まで続くだろう。イラン問題等でロシアの助けを必要とする米国・欧州は、そのようなロシアであってもアメとムチ両面のアプローチでエンゲージし続ける必要がある」という論旨だ。その中で彼らは、次の点も述べている。

(1)メドベジェフがロシア社会の腐敗、経済的弱さ、民主性の欠如をおおっぴらに批判していることは、プーチン側近をいらだたせている。2012年大統領選挙が迫るにつれ、幹部はメドベジェフ、プーチンのどちらにつくのか旗色を鮮明にすることを強いられるだろう。
(2)メドベジェフは国内問題ではリベラルだが、外交問題では強硬な姿勢を取ることが多い。(外交問題はメドベジェフの権限であるので)柔弱だとプーチン側につけこまれるからかもしれない。
(3)ロシアは美しい言葉では動かない。エンゲージすると言っても、ムチとアメの組み合わせしか効かない。

この見方に賛成だ。で、ここではアジアにおけるロシアの地位をどう見るか、その中で北方領土問題解決をどうしかけていくべきかについて一言。

 ①アジアにおけるロシアはほぼ無力であり、対中カードとして使えるような力は有していない(ロシア極東の人口は600万人以下。これに接する中国東北部の人口は1億2000万。経済力ではこれを上回る格差があろう)。ロシアに対中カードの役割を期待し、それゆえに領土問題で譲歩してでも関係を前進させるべきだという人たちがいるが、考え直してもらう必要がある。

 ②極東ロシアを支援して、中国に伍する力を持たせることはおそらく不可能だろう 。米国も極東ロシアのエネルギー資源に関心を有していない 。米国では精油所が新設されていないし、天然ガスは米国産のものの生産が急増しているからだ。

 ③メドベジェフは日本の技術を切に必要としているだろうが、ロシア人の大半はドイツの技術にはるかに馴染み、日本の機器については知識と意識を欠く 。またロシアは中国・韓国からも必要な技術を調達できる。
従って、力の基盤が脆弱なメドベジェフにとっては、日本との領土問題で譲歩をすることは、得られる利益よりリスクの方が大きい可能性がある。国内の保守勢力は強いからである。

 ④冒頭の論文が言う「アメとムチ」の対露政策は、橋本政権が試みた 。外務省のホームページによれば、対ロシア支援事業にはこれまで約6000億円もの予算・融資を注ぎ込んでいる。http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/bluebook/2002/gaikou/html/zuhyo/fig01_05_04_02.html

だから、
今の政権は対露関係で前のめりになろうとしているが、自民党時代の経緯をよく調べてからかからないと、また10年前と似たような「手土産」を持って訪露して、「領土問題の進展」に徒な期待を寄せることになるだけだ。「領土問題の進展」を、来年夏の参院選に向けた目玉にしようとして、逆に大やけどするばかりか、国民の税金を浪費するだけの結果に終わりかねない。
                 

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