IT国家へのコメント
1.日本のITインフラ(回線等)は数年前に比して立ち遅れてきたと聞いておりますので、
この「宣言」は歓迎できるところです。
2.ただ多分官僚の作ったものでしょうから、いくつか足りない点も見られます。
まず総花的でありながら、多分総務省が主導をとった「宣言」なのでしょうから、
産業政策の面、つまり経済産業省の観点からの提言が少し足りないのではないかと
思います。これは、量子コンピューター開発とか、空中とか眼中、あるいは脳中にスクリーンを
示す技術の開発とか、要するに基盤=プラットフォームの製造を日本に奪回するという発想が見られないということです。
また文部科学省が音頭を取っている脳の回路の解明も、この宣言の中にintegrateされるべきものだと思います。
その意味でこの「宣言」は、ITという既存のプラットフォームを精緻化、利便化していくという、典型的な日本的なやり方で、
それはそれでいいのですが、既存のパラダイムの先も見通して欲しいと思います。そうしてこそ、「世界最先端」という呼び名に
ふさわしいものとなるでしょう。今のままでは、立ち遅れ始めた者が若干あせっているという感じを与えてしまいます。
3.官僚の作ったものにあまり深遠な哲学を求めても無理なのでしょうが、IT社会はいくつか深刻なモラル上の問題を
これから抱えることになると思います。そういう問題提起は民間のグロコムに適しているのだろうと思います。
いくつかの問題を挙げてみますと、
(1)あらゆるものにセンサーがついて、それをビッグデータで中央が処理するというモデルは、中央から物体、あるいは人体に
指令を下す機能を付加すると、独裁の道具と化します。これを防ぐため、世界スケールで議論、合意を確立しておく必要があります。
(2)ロボットの本格的普及が始まろうとしているようです。ロボットが学習能力を発達させるにつれて、
廃棄に抵抗して持ち主を殺す等、人道ならぬロボット道上の問題が起きてくる可能性があります。
兵士ロボットが民間人を軍人と誤認して射殺してしまった場合等、センサーが十分でなかった場合の裁判、補償の問題も生じます。
無人機、無人海中探査ロボットなどについては、領空、領海での扱いなど、国際法上の問題が生じます。
(3)脳波とITハードの直結が進みつつあります。脳波をキャッチして人工筋肉を動かす等の類です。
これも、ハードから脳波にシグナルを送るという逆のルートが可能になりますので、人間を外部から操作することが可能になります。
これも世界スケールで議論、基準を確立しておく必要があります。もっとも、いくつかの国々はこれを軍用に
研究していますから、簡単に議論に応じてこないかもしれませんが。
河東
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