世界恐慌? いや多分ーーー
今、1929年大恐慌の再来だと言われているが、その頃に比べれば中央銀行も政府も資金を市場につぎこむことができる体制が整っている。おそらく事態はアメリカでの公的資金投入まで行って落ち着き、それから2年ほどかけて回復していくのだろう。
1985年のプラザ合意の後、アメリカは5年で輸出を倍増させた(日本はゼロ)。当時、GEのウェルチ会長が言ったように、「アメリカ経済は輸出増で回復した」面が多大にあるのだ。
それにアメリカは、これから人口がさらに増える唯一の先進国である。アメリカでは人口増は経済にプラスに作用する。
ロシアなどは、「アメリカの覇権の崩壊」とか「多極化世界の到来」とか囃す。だが、カジノをやっている時でも、誰か胴元がいなければゲームは成り立たないことは、彼らもよく知っていることだろう。
18世紀初め、アムステルダムの金融市場が崩壊した時、ロスチャイルドを初めとした資本家達はできて間もないロンドン金融市場に本拠を移した。それは、英国が大国として台頭してきていたからだ。
つまり、「覇権国の交代」とか崩壊などは、次の胴元候補が控えていないと実現しないのだと思う。
CNNなどを見ていると、これまで中国のことを「世界第二の経済」と言ってはばからなかったのに、最近いつの間にかしゃーしゃーとして、「世界第二の経済大国・日本」と言っている。今回の恐慌について中国の動向は殆ど報道されない。もっとも、日本も言及される割には、「日本の顔」と言える特定の人物が見当たらず、宣伝効果を著しく損なっている。
おそらく、「世界に貢献する日本」というスローガンが再び戻ってくるのだろう。これから赤字解消にいそしむアメリカは、経済援助やアフガニスタンでの戦いの費用など、多くの肩代わりを日本に求めてくるだろう。
僕はそれに応じたらいいと思うし、応ずるしかあるまい。ただ、80年代よりはもう少し効果的に金を使ったらいいと思う。
事態は、「第二のプラザ合意」になる可能性を示している。日本は内需拡大が必要だ。しかし今回バブルになるとしたら、それは痛い経験を積んだ日本ではなくて、中国なのではないか。日本は中国を助けることまで考えておかなければなるまい。
そして事態が沈静すれば、日本の地位は再び低下し始める。中国台頭という世界史の趨勢はおそらく止まらないだろう。そのときに備えて、東アジアの発展と安全を確保する体制をどうするか、経済応急措置と並んで考えていかなければならない。
そして国外で使う前に、まず国内での賃金を上げなくては。企業が記録的収益を収めているのだから。そして中国人の給料も上がっているのだから。労働組合を抑えて賃金を低くしたままでは、内需拡大もできないだろう。 Copyright ©河東哲夫
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コメント
日本の存在理由を世界に示す絶好の機会と思いつつも、結局は世界中の損を押し付けられるのかと心配してしまうのは、「世界第二位?の経済大国」を将来どのように導くのか、誰もが示せない/誰もが思い描けないところに起因するのでしょうか。
三菱UFJがアメリカで金融持ち株会社の取得を出来たのも、評価損も受け入れる覚悟でのモルガン救済へのご褒美かもしれませんが、一方で邦銀の貸し渋りも強烈なものがあります。
既に人口が減少し始めた日本にとって、生き続けるために必要な決断かもしれませんが、河東さんが仰る、国内での賃金アップは夢の又夢に思えてなりません。