Japan and World Trends [日本語] 日本では自分だけの殻にこもっているのが、一番心地いい。これが個人主義だと、我々は思っています。でも、日本には皆で議論するべきことがまだ沢山あります。そして日本、アジアの将来を、世界中の人々と話し合っていかなければなりません。このブログは、日本語、英語、中国語、ロシア語でディベートができる、世界で唯一のサイトです。世界中のオピニオン・メーカー達との議論をお楽しみください。
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世界はこう変わる

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2007年02月02日

奇妙なグローバリゼーション

昨年末は例年のごとく、デンマークのオデンセという町の家内の実家で一家そろって過してきました。

コペンハーゲンから西へ汽車で二時間足らず(かつては間にある大きな海峡をフェリーで渡っていましたが、今では橋とトンネルであっという間です)、御伽噺のように美しく静かな街です。

家でも買えるかなと思って近くの不動産屋のウィンドーを見ると、どうも去年も売りに出ていたのと同じような家の写真が貼ってある―――それほど呑気な裏通りに、今年はなんとしゃれたガラス張りの寿司バーが開かれていました。コペンハーゲンの空港売店にも、ごく当たり前のように寿司弁当がプラスチックの箱に収められて並んでいます。トロが高くなるはずで。

もっともこの何やらわけのわからない文化のグローバル化は地球の裏側日本でもとみに進行していて、ある日都心から1時間もかかる我が「ひばりヶ丘」駅の薬屋に寄り、金を払おうとしてふと顔を上げると、そこにいるのはインド人の女店員ではありませんか。いきなり強い手でアメリカのドラッグ・ストアにでも連れて来られたかのような、強い衝撃を受けました。

このひばりヶ丘界隈、この頃どうも、白人の男、日本人の女のカップル、それも子供連れの、を立て続けに見かけるようになりました。それも女性主導で、夫の方が日本語をしゃべり、日本の習慣に従っているのです。文化は高きところから低きところに流れる、というのが真実なら、右の現象はtells us about somethingということでしょう。

新年はクリント・イーストウッド監督の「硫黄島からの手紙」を見てきました。十年程前、確かパールハーバーというハリウッド映画では、日本政府が中世のような幕を張った陣屋で開戦を決めるシーンが出てきましたが、硫黄島ではそのようなことは一切ありません。現代の若手日本人俳優は垢抜けしすぎていて、とても戦前の日本人の雰囲気は出せない、という問題はありますが、日本人は日本人らしく描かれていました。そして、日本の軍人にも高潔でリベラルな人達がいたことを、この映画は黒澤明的に少しやり過ぎかと思うまでに見せてくれます。

他方、硫黄島という陥落確実のところに要員を送り込み、玉砕を当然視する本国の官僚的冷たさ、「本当の戦争をやってるんだからな、君。いったい何をやっているんだ。」という司令官の罵声に象徴されるような現地軍の内部の官僚主義。陸軍、海軍の間の縦割り。独りよがりの戦術。すべての幹部ポストを優秀な人員で固めるべきなのに、それだけの人材はいない、悲しい現実。

これは現在の官僚制の中でも日常、目にすることです。ただ硫黄島では、そのために人が不要に戦死していったわけです。

銃後の日本では、家庭でただ一人の働き手のとうちゃんを1銭5厘の赤紙で召集していく当局、その赤紙が届くと「祝いにくる」近所の愛国婦人達、犬が吠え掛かったと言ってピストルで撃ち殺す憲兵(こんなのはさすがにいなかったでしょうが)―――若い世代に是非見てもらいたい映画です。

私は昨年11月から東京財団の研究員の肩書きも得ました。研究会を主宰します。一応「ユーラシア研究会」と名づけてありますが、中国、アラブ、ペルシア、インド、西欧、ロシア、米国等の主要なプレイヤーの本質を探り、これからの相互関係を見通してみたいと思っています。途中の成果は東京財団のホームページに発表していきます。まだ新進気鋭でこれから論壇の常連になりそうな方々を、メンバーとしてお願いしてあります。

21日からウズベキスタンに行ってきます。現地の国連事務所が米国、西欧、ロシアから専門家をよび、これからのウズベキスタンの政策のあるべき方向性をブレーン・ストーム的に議論させようというプロジェクトに日本から呼ばれたものです。ウズベキスタンは今年の12月には大統領選挙がありますから、今が重要な時なのです。

なお隣のトルクメニスタンでは独裁者として知られたニヤゾフ大統領が昨年末、「心臓麻痺」とかで急死し(その前から車椅子で集会に現れたり調子は悪かったのですが、12月21日の午前1時頃亡くなった、心臓麻痺だ、という発表がいやに手回し良かったもので、ちょっと・・・)、2月には選挙が行われます。

報道では、ニヤゾフ大統領の警護局長をやっていたレジェポフが実権を掌握し、ベルドゥイムハメドフ副首相を大統領代行として前面に立て、この部族国家を今のところ平静に治めているようです。

まあ、こんなぐあいで、今年もwww.akiokawato.comを根城に国際情勢ウォッチ、日本世情ウォッチを続けます。独りよがりの思い込みと下克上の中で、蛇に魅入られた蛙のように戦争に引き寄せられていった、戦前日本の繰り返しを防ぎたいと思っています。本年、皆様のご多幸をお祈りしています。

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