08年3月のモスクワ(5) 日本への無知
モスクワに来るといつも、日本を良く知っているロシア人と会うことが多いので、あまり気がつかなかったのだが、今回のように日本とはまるで無縁のところで動いていると、日本に対する知識不足に気がつく。
モスクワが繁栄する中で、日本文化、日本人のモラルにロシアの救いを見出そうとする動きもなくなった。モスクワでは日本文化ブームだと言われているが、それは次第に消費文化化しつつある。日本食レストラン以外の形が見えないのだ。日本の精神文化に対する、以前の切実な関心と熱気はもう感じられない。
根強い誤解
日本については、ソ連時代以来の古い理解が相変わらず根強い。
つまり日本は上意下達の「カースト社会」で、ものごとは少人数のエリートがどこかでこっそり決めている、というイメージが消えない。
だからこそ、日本から欲しい技術があれば日本政府に頼めばいいのだ、と思い込んでいる。それでは当然何もでてこないのだが、それは北方領土問題のせいで日本政府が出さないのだ、と解釈するのだ。
対日関係の現状への無知
ある経済関係の高官がこう言っていた。
「日本はますます見えなくなっている。ロシアの自動車会社アフトヴァスを再生する話などにしても、フォードの方が全然話をしやすい。日本はトヨタだけで、他は投資をしていない」
以前つきあっていたロシアの新聞記者連中を集めて話をしたが、彼らも日本の対ロ投資はトヨタと日本タバコだけだと思っている。
日本の能力についての無知
環境汚染防止技術で日本が勝れていること、風力発電用設備も作っていることなどは、学生のみならず、実務家も知らない。機械というとすぐ、西欧製、ドイツ製のものしか目に入らない。
領土問題とのからみ
日露経済関係は実際には、この2,3年で貿易額が3倍にもなったのであり、ロシアに進出し、工場を建設する動きはブームと言ってもいいほどである。
だがこうした個々の企業の動きを、ロシアのマスコミが報ずることは稀だ。「企業広告は金をもらって」することだと、彼らは心得ているからだ。
折角の経済関係増進は、ロシア国民にもっと知ってもらいたい。一緒に何かやっている、日本は自分達の利益のために何かやってくれているという意識が生まれて初めて、領土問題のような感情的な問題を動かすことができる。
そして、ロシア国民に知ってもらうためには、こちらがもっと仕掛けないと駄目だ。例えば、日本の工作機械、環境汚染防止技術などを一堂に集めた大見本市を開き、そこに大統領や首相に来てもらえば、それは大きなニュースになるのだ。
他方では、日本とのビジネスにも関わる青年実業家はこんなことを言っていた。
「日本企業による工場建設ブームはブレークするかもしれない。そうやって、双方の実業界が領土問題解決に向けて政府に圧力をかけると効果が高い。2012年のAPEC首脳会議(ウラジオストクで開かれる)で合意ができる、との観測が出回っている。2+2の方式で100年かけてやるというものだ。」
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コメント
半導体製造に関わっているが、モスクワ郊外のゼレノグラードにあるモスクワ電子工科大(MIET)やMikron、Angstremなどを中心としたクラスター形成やドイツやアメリカの企業の関与・リサーチに興味をもっている。情報があれば教えて欲しい。
半導体製造に関わっているが、モスクワ郊外のゼレノグラードにあるモスクワ電子工科大(MIET)やMikron、Angstremなどを中心としたクラスター形成やドイツやアメリカの企業の関与・リサーチに興味をもっている。情報があれば教えて欲しい。