ファロン米中央軍司令官のウズベキスタン訪問が意味するもの
どこも新聞が書いていないので書く。
1月末にファロン米中央軍司令官(イラク、アフガニスタン等での作戦担当)がウズベキスタンを訪問し、カリモフ大統領と会談した。
その翌日プーチン大統領からカリモフ大統領に電話があって、カリモフ大統領が「2月5日にモスクワを公式訪問することになっていた」ことが急遽発表された。この会談は既に終わり、ウズベキスタンとロシアの友好・協力関係の重要さを確認したこととなっている。
2005年5月に「アンディジャン事件」があり、米国の冷たい対応に怒ったカリモフ大統領が米軍をハナバード空軍基地から半年で撤去させ、米系NGOを軒並み閉鎖させてから既に2年くらいたった。
その間、ウズベキスタンの安全に最も大きな意味を持つアフガニスタンでは、タリバンの勢力回復が目立つ。かつてタリバン政権の時代、ウズベク領内でテロ事件まで起こされたカリモフ大統領としては気が気でないところだ。
米国とほぼ「手を切った」ウズベキスタンは、その外交の軸をめっきりロシアと中国に傾けた。ロシア中心の「集団安全保障条約機構」は、中央アジアの安全保障を一手に担うかの安手形を切り始めている。
ところが一つだけ問題があって、アフガニスタンだけはロシアが金輪際触りたくないところなのだ。1979年に侵入して痛い目にあっているからだ。アフガニスタンと国境を接するウズベキスタン、タジキスタンにしてみれば、それではロシアの有り難味が半分くらいになってしまう。
米軍も、トルコの方から軍用機を飛ばして(カスピ海、トルクメニスタン上空を通過する)アフガニスタンで作戦させるには、ウズベキスタンに拠点を持っていることが必要だ。現在、中央アジアでの拠点はキルギスのマナス空港だけになっている。
おそらくアメリカはウズベキスタンでの地歩回復と軍施設の使用を狙っているのだろう。それは、昨年12月に三選を果たして内政上の安定性を目下強めたカリモフ大統領の思惑とも一致した。でなければ、彼が米軍司令官に会うはずがない。
ウズベキスタンをすっかり篭絡したとばかり思い込んでいたロシアは慌てた。プーチン大統領が急遽電話して、カリモフ大統領の公式訪問を実現したということではないか。
ロシアにしてみれば、難しいところだ。3月2日の大統領選を前にして、米国、NATOへの物の言い方を和らげようとする兆候が見えている現在、ウズベキスタンで米国に恥をかかされるとまた強硬路線に戻らざるを得ない。そうやって刀を振り上げると、洞爺湖サミットにやってきた新大統領は冷たい目で見られることになる。さりとて、アフガニスタンにロシア軍を送るわけにもいかず、さてどうしようかと考えていることだろう。
しばらくこの方面からも目が離せない。
トラックバック
このエントリーのトラックバックURL:
http://www.japan-world-trends.com/cgi-bin/mtja/mt-tb.cgi/325