株価を上げるために経済が縮小する、日本の自縄自縛
日本経済が盛り上がらないのは投資が増えないからだ。インフレ期待をあおれば、企業は収益増を見越して投資を増やすだろう――というのがアベノミクスだろう。しかし実際にはインフレになれば国民は消費を減らすから、投資も増えない。経済を盛り上げるにはやはり、消費か輸出を増やすのが効果的。そして消費を増やすには賃金を上げ、税・介護負担を下げないと。
ところが日本の企業は賃上げに消極的。以前、日本の賃金は世界でも高水準にあって、日本製品の国際競争力を下げていたのだが、今では中国の賃金も十分上がってきている。それなのに賃上げを渋るのは、またリーマン危機のようなことが起きたら大変という心理があるのだろう。だったら、ベア(恒常的な賃上げ)ではなく、業績のいい年にはボーナスをもっと弾むやり方にすればいいではないか。
もう一つ、賃上げすると利益率が低下して、外国人に株を買ってもらえない、という配慮があるのかも。日本の企業は英米の企業ほどには株式・債券発行での資本調達をしていないのだが、株価が低すぎれば他社に買収されかねない。そして在任中の株価上昇は、社長の業績にもなる。だが日本の株を売買するのは主に外国人。そして彼らは利益率にやかましい。だから、やたら賃上げして利益率を下げることはできない、というわけだ。
その結果、外国人に株を買ってもらえるのだが、下手をすると買われ過ぎて、東芝のように社長人事にまで干渉される。買収されないために株価を上げようとして、かえって買収されたのとあまり変わらない事態に陥るわけだ。
外国人頼みの日本の株式市場に株を公開しておくことのメリットとデメリットを比較して、害の方が大きいなら、上場廃止すればいいのだ。既に東京証券取引所での上場廃止数は、今年の上半期で40件。それは他社に買収されたとか、業績不振とかの理由が多いのだが、増加のトレンドにある。
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