ユダヤ資本と日本
ユダヤの資本は、世界史の舞台回しで大きな役割を果たしてきた。彼らは、成長株、有望国を嗅ぎつけるのに長けているからである。
もともとは、中世の西欧でカトリック教会が利子の徴収を信者に禁じていたことが、信者でないユダヤ人の金融業を盛んにさせたと言われる。スペインから追い出されたユダヤ人は、地中海商圏の諸方に分散し、姻戚・信頼関係のネットワークで金融業の網を作り出した。彼らはオランダにも赴き、これがおそらく欧州北半分の商圏と地中海商圏のドッキングを促進したのであろう。両者間の通商を手掛けたオランダは17世紀、大国にのしあがる。
そしてそのオランダ、そしてオランダのユダヤ資本は17世紀の後半、英国に大量の出資をすることで、大英帝国の出現を助けた。
次に欧州大陸、なかでもユダヤの資本は19世紀アメリカでの鉄道建設、産業建設に多額の出資を行い、世界一の経済大国の出現を助けた。
明治の日本でも坂本竜馬や伊藤博文達を助けたグラバー商会は香港のジャーディン・マテソン商会の支店的存在で、この商会にはユダヤの資本が大きく入り込んでいたし、日ロ戦争の前、日本の国債を大量に買い上げてくれたのはユダヤ系のシフ商会である。ユダヤ人は成長株に賭け、これの興隆を助け、それによって自らも利益を収めるのである。誰でもやろうとしていることで、悪いことでは全然ない。
日本の場合、ユダヤ資本から助けてもらったにもかかわらず、その後は満州の利権を囲い込み、戦後は日本国内市場を囲い込んで、外国にはなかなか儲けさせなかった。これは、短期には儲かっても、長期では友人を遠ざける結果に終わったのではないか? 三谷太一郎「ウォールストリートと極東」などを読んでいると、そうしたことを感ずる。
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