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世界文明

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2024年7月15日

朝井リョウの小説「イン・ザ・メガチャーチ」の終了

 朝井リョウと言えば、まだ35歳の男性作家。ウィキペディアによれば、直木賞史上初の平成生まれの受賞者であり、男性受賞者としては最年少なのだそうだ。映画になった「桐島、部活やめるってよ」のように、若い世代(Z世代)の生活感覚にドップリと棹をさしている。2016年、英語圏最大の文芸誌「Granta」日本語版でGranta Best of Young Japanese Novelistsに選出されたそうだから、そのうち村上春樹を継ぐ作家になるかもしれない。

 で、この朝井リョウがたったこの前まで、日経夕刊に小説「イン・ザ・メガチャーチ」を1年間ほど連載してきて、それが終わったばかり。なにかマスコミ、インターネットの業界用語に彩られ、嬉しいのも悲しいのもすべてヴァーチャルのような世界を描いていて(詳しいことはhttps://www.nikkei.com/telling/DGXZTS00004490Z10C23A5000000/)、僕は読んでいるだけで息が詰まりそうになるから読まなかったのだが、この小説を構成している人間達の言葉(その多くは虚しいものなのだが)のリアルさには、圧倒されていた。Z世代のすべてがここに描かれている感じ。それが最終回に近くなると、虚しい業界用語、そしてヴァーチャルな感情は姿を消して、本当の人間の感情が暴発する。すごいカタルシス。引用させてもらう。

 ――ねえ、いづみさん。
多分、私たち、一回ちゃんと全部決壊するくらいまで悲しまなきゃいけなかったんですよ。
なりふり構わず悲しんで、今みたいに何もかもめちゃくちゃにする時間が必要だったんですよ。
・・・・・
なんか私、もう大丈夫な気がします。
なんだか、今、自分が持っているものを一回全部使い切ったみたいな感覚なんです。
お金も感情も時間も全部、もう残っていないんです。――
 
 IT、AI時代の総括、そしてカタルシス。先日の日経で、朝井リョウ自身がこの小説を解説している。まさにこのZ世代の世界をどう描くかは作家たちの間で競争になっているそうで、書いている間にのめり込み、多分読んでくれる人はいなくなると思っていたそう。その通り。でも、目のつんだリアルな小説だった。全部異界の言葉で、伝統的な小説を書いて見せたような。

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