駅前でひなたぼっこしながらアイスクリームと思ったら、ベンチの隣に気がおかしくなったと思われる中年女性が架空の誰かと一生懸命対話している。それも家族とではなく、何か社会のことを話しているようだ。ストレスのあげく、或いは自分で自分に疲れすぎて。心の隅の寂しさをうかがわせる。こういう人、東京ではずいぶんいる。

欧米やロシアでは、こういう自省的な精神異常者はあまり見ない。彼らは、社会に恨みを持っていたら、誰かを襲うだろう。ところが日本人は抑えつけられていて、なかなか行動しにくい。世間への怨みのベクトルがひん曲がって自分の心の中に食い込んでくるから、気がおかしくなってしまうのだ。