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世界文明

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2012年5月 9日

石炭発電でどうして駄目なのか

原発が全部止まった。僕はいいチャンスだと思うのだが、原発がなければ日本経済は成り立たない、日本はやっていけないと考える人たちも多い。そしてあまり表には出てこないが、原発を止めれば日本を将来核武装するための技術力も失われてしまう、と考えている人たちもいるのだろう。

だがそこまで思い詰める前に、原発なしでも経済、安全保障両面で脱出口はあるのに。経済面で原発代替の一番現実的な案は石炭火力だ。オーストラリア、米国、ニュージーランド等、石炭火力に電気を大きく依存している先進国は数多い。石炭というと旧時代の技術だ、先端技術の日本にはふさわしくないと思うのかもしれないが、石炭火力の最先端技術を使うと炭酸ガス発生も天然ガスなみに抑えられる。そして石炭は何よりも安い。

原発機器製造に多くを依存していたはずの東芝も、昨年度は海外の石炭火力発電設備受注で大きくうるおい、黒字を上げている。

石炭発電は日本でもやっていて、特に「電源開発株式会社」(通称Jパワー)という会社(東証一部)が強いことを一昨日知った。この会社は終戦後、国営として造られ、佐久間ダム等、巨大な投資を司っていたものだ。大手電力会社とはいろいろ経緯がありそうだし、ウラもあるのだろうが、大手電力会社に石炭発電をやる意志と余裕がないのなら、このJパワーにやってもらってもいいではないか。ウィキペディアによれば、今でも経済産業省から6名も天下りしているそうだから、そこらの決定も迅速にできるだろう。日本政策投資銀行あたりにとっても、格好の融資対象ではないか。

他にも原発代替を大規模にやる策はある。それは東京ガス、大阪ガスなどのガス会社が、安いLNGをスポット市場で買い入れて、天然ガス発電をすることである。そしてガス会社はさらに、燃料電池(太陽電池より多量の電力を安定的に作り出す)を事業所、家庭に普及させ、ここに都市ガスを配給して分散型の発電装置とすることができる。

そんなやり方では京都議定書の炭酸ガス削減目標が守れないという声もあるが、それは地震国日本が福島原発事故の経験を前面に出して、再検討を世界に提案すればいいのである。

核武装のことについて言うなら、日本のように狭い国では、原爆を持っていても抑止力にはなりにくい。それに今は一種の軍事革命の時代にあって、原爆は戦略面での重要性を失いつつある。例えばサイバー戦能力とか、相手(人間)の脳を狂わしてしまう技術とかがより大きな意味を持つようになっていて、それこそは日本の国情にもっと適合した戦力なのである。

原発や放射能のリスクを根絶することはできない。他方、原発がなくても、今まで通りの価格の電力を確保することはできる。ならば、原発維持に固執する必要もないではないか。
これまで原発、原子力技術に生涯をかけてきた方々が多いことは知っている。でも僕もソ連研究を専門に生きてきたのが、その研究対象がかつての意味を失ってしまったという経験を持つ。でも、国家論とか比較経済体制論とか世界文明論とかに拡張して生きている。原子についての知見は、ソ連についての知見以上に大きな応用力を持っているのでないか?


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