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世界文明

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2012年8月11日

貧困はアラル海の敵

インターネットを見ていたら、「カザフスタンの農民がサクサウルを密売」という記事があった。僕は苦笑いした。

どういうことかと言うと、中央アジアのアラル海はカスピ海に次ぐ大きな塩水湖だったのが、天山山脈や崑崙山脈から流れ出てこの湖に注ぐアムダリヤ、シルダリヤという二つの大河の水を綿花やコメの栽培に取水しすぎたせいで、どんどん干上がり、東半分の浅い方はついに砂漠になってしまった。(このURLで地図を見ることができるhttp://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A2%E3%83%A9%E3%83%AB%E6%B5%B7

この砂漠の土は、川から流れこんだ肥料とか農薬とかを含んでいて、これが強風で舞い上がるものだから周辺の環境を汚染していたのだが、ドイツなどが例によって理詰めで考え、ここに「サクサウル」という理想的な植物を植えはじめたのだ。

なぜ理想的かと言うと、この植物は乾燥地でも生える上に、家畜の飼料にもなるのだそうで、アラル砂漠の土止めと畜産振興に一石二鳥なのだ。

だが経済援助をやるときに気を付けないといけないのは、現地の住民はわれわれが助けたいと思うやり方では助けられたとは思わない、われわれが考えることは気が長すぎて、彼らはもっと「今もうかる」ことを探している。そしてそれはアラル砂漠のサクサウルを密かに刈って持ってきて、市場で飼料や燃料として売り払うことだったのだ。

というわけで、サクサウルは確かに畜産には役立っているのだろうが、アラル海の水と同じくそのうち刈り尽くされてなくなってしまうかもしれない。寒冷の貧困地で植林をしても、薪の材料としてすぐ切り尽くされてしまうのと同じ現象だ。

だから、人助けとか経済援助というものは、本当に一筋縄ではいかない。助けようと思う者が、実は上からの目線で「恵む」という心が抜けないと、こういうことになる。経済援助をやるときは、よほど現地調査をし、シミュレーションをやってみないと、助けようと思っても空回りになるのだ。

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