チャットGPTとの対話
(これは5月24日発行のメルマガ「文明の万華鏡」第133号の一部です)
チャットGPTについては、来週発売のNewsweekでも書くのだが、そこに書いてないことをいくつか。
「お前、名前持っているか?」と聞いたら考え込んで、「今、質問が集中しているので後にしてください」と答えてきた。バカを相手にしている時間はないと思ったのだろう。では、ということで、「君の名は?」と聞いたらば、これも随分考え込んでやっと、「ChatGPTです」と答えてきた。
「君は生きていると思うか?」と聞くと、これはもう誰かが聞いてメモリーに保存されていたようで、「ただのプログラムです」という答えがすぐ返ってきた。
自分で推測、議論をする能力はあるかと思って聞いてみる。「プーチンはウクライナ戦争などいくつもの失敗にも関わらず、2024年の大統領選挙で再選されると思うか?」という問い。これはロシア語で聞いてみた。ロシア語のデータからはかなり歪んだ回答が返ってくるのではないかと思ったからだ。因みにChat GPTは今のところ2021年9月の時点までしか情報の渉猟を終えておらず、それ以後のことは基本的に判断できない。にもかかわらず、こういう答えが立派なロシア語で返ってきた。
「私はものごとの予測は致しません。しかしこの問題の予測で考慮するべき問題点はA,B,Cです」。
平均点以上。いつかはChatGPTのせいで、筆者も首を切られることになるかもしれない。生身のライターは人間味とか、いくつか長所を持っているが、メディアにしてみれば、Chat GPTは記事を無料で書いてくれる便利な存在。そこに広告を載せれば、無料を越えて収入をもたらしてくれる存在なのだ。
ただChat GPTは既に文字になっている情報を集めてつなぐだけなので、A,Bという事実、データから何か新しい結論Cを引き出すようなことはできない。
Chat GPTの情報の集め方がわからないのだが、それがわかれば、Chat GPTの触覚に引っ掛かりやすいよう、自分の情報を細工してネットにアップしておけば、世の中が自分の見方であふれかえる、というようにも持っていけるのでないか。そういうことを中国が手掛けると、世の中のことはみな、中国共産党の階級闘争反米史観の見地から見たニュースであふれかえることになるだろう。
しかしAIの発達は、全く別のとてつもない夢も生んでくれる。F・ダイソンという学者が昨年12月30日付日経で、面白いことを言っていた。「人類は将来、自らを自分で設計し、多様な形態に変えることができるようになる。それによって宇宙のあらゆるところに進出できるようになる」と。
因みにこのダイソンは電気掃除機のダイソンとは違う。電気掃除機のダイソンも立派な人だが、こちらのダイソンは英国生まれの物理学者。
ということで、最後にChat GPTの恥を一つ。いろいろ調べものをしていた最中、Chat GPTがふと、「埼玉県の鴻巣にある氷川神社には坂本竜馬と妻お竜のお墓があります」と教えてくれた。至近の場所なので「ええー!」と思って調べてみると、これはChat GPTの真っ赤なウソ。どうしてこんなことになってしまうのだろう。
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