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経済学

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2011年1月22日

人口減はこわくない――1人あたりGDPを政策の主眼にしよう

何かこの頃やたら、「日本は人口が減少するからもう駄目だ」式の悲観論が聞こえてくるが、戦前の日本は7000万人くらいしかいなかったのだが。
今だって、労働力人口が減る分は海外に生産を移転すればいいのだし(利益の一部は日本に戻ってくるから、増える一方の老年人口を養うのに使える)、需要が減れば輸出を増やすよう努力すればいいのである。戦前は大東亜共栄圏とか言って、無理して市場を海外に広げたが、今はWTOやFTAに守られて、世界中が日本の市場になっている。中国や韓国に対して貿易黒字を続けているのは、世界で日本くらいなものだ。

と、そんなことはどこでも書いてあるので、今日はちょっと確かめてみたいことがある。それは、日本での労働年齢人口の減少を、女性の就職増と外国人労働者の増加がかなり相殺しているのではないかということだ。では・・・

ネットで検索した結果は次のとおり。
統計局が出している「就業者数」統計によると、高度成長最中1965年1月の就業者総数は4713万人、バブル景気が破裂した直後、つまり日本経済がピークにあった1991年1月は6327万人になり、更に増えて1998年1月には6560万人に達したあと、頭打ちになっている。2010年11月には6233万人。

その中で女性の就業者数はどうかと言うと、1965年1月が1875万人、1991年1月は2581万人、1998年1月には2689万人、2010年11月には2633万人になっている。

全就業者のうち女性がしめる割合は、1965年の約40%から201年の42%までほとんど変動がない。では労働年齢にある女性のうち就業者が何%いるか調べようとして、計算するのは大変であることを発見した。そこでずるを決め込んで、2008年の20歳~60歳の女性人口を数えてみたら3331万人なので、2008年1月の女性就業者数2667万人と比べてみると、労働年齢の女性のうち就業しているのは実に80%に達しているということになる。だが、さらに10%が就業するだけでも約300万人に達する。

2006年経済財政諮問会議は、25歳~44歳の既婚女性の就業率を2006年の57%から、2016年には71%に引き上げるという目標を採択した。2006年、25歳~44歳の既婚女性は約800万人いたが、2016年もその数はあまり変わらないと思うので(人口ピラミッドを見ると、そんな感じだから)、それだけでも112万人就業者を増やすことになる。

だから、こども手当などと言って広く薄くばらまくよりは(選挙対策だとしか思えない)、保育園の待ちを解消したほうが少子化対策にもなるし、成長促進政策にもなるということだ。保育園待ちがあるなどというのは、先進国とは言えない、本当に信じられないことなのだが、誰も真剣にやろうとしない。「女は家で・・・」という偏見が民主党や社民党の政治家にもあるのだろう。

次に外国人労働者だが、厚生労働省の推計だと、不法滞在者も含めて1990年には26万人しかいなかったのが、2006年には92万人に達している。帰化する外国人の数は毎年1万人から2万人の間で推移しているから、これはあまり多くない。

つまり、ただ単純に数のうえで言うならば、日本は労働年齢人口がかなり減少してもやっていけるということだ。そして冒頭に言ったように、日本の企業が海外にでていくことは、労働力を輸入しているのとほぼ同じことだ。海外直接投資から日本に配当とか利益送金とかいう形で返ってきた分を示す所得収支は、2007年、実に1632億ドル、約15兆円で、GDPの約3%、つまり労働力で言えば約190万人分が生みだす富に相当する。
海外投資は日本での雇用が減ることを意味する、けしからん、という面もあるのだが、日本で労働年齢人口が減るのだったら、日本の企業が外国で生産して利益の一部を日本に送金してくれるのだったら、助かるではないか。

まとめて言えば
つまり、労働年齢人口が減るからと言って、パニクる必要はないということ。
人口が減るのであれば、無理にGDPを維持する必要はない。ただ老年人口をも養っていけるだけのGDPは維持する必要がある。その規模は計算ができるだろう。望ましい一人当たりGDPを成年人口にかければいいのだ。

つまりGDPの総額を政策の主軸に据える時代はもう終わった、一人あたりのGDPを維持する、あるいは少しずつ増やしていくことを政策の主軸に据えて行くべきではないか? 
それは先進国すべてに言えることで、GDPがどうなった、こうなった、おれは偉くなったんだと言って鼻息荒い後発国(日本もついこの間までそうでしたが)の出鼻をすこしくじくにも、それは有効ではないか?

コメント

投稿者: 高月 瞭 | 2011年1月23日 11:26

人口の減少を経済成長の限界と決めつけるのは如何なものでしょうか。現実にドイツやロシアは人口が減りつつありますがGDPは確実に伸びています。日本の悲劇はバブル崩壊後のショックを公共事業でカバーしていたものを悪と判断し、また財政健全化と称して消費税を2%上げ、緊縮財政にしてしまった橋本内閣の失政が挙げられます。その失敗を小渕政権が財政出動で少しは踏ん張りましたが、小泉-竹中の構造改革では、毎年公共投資を3%づつ減らして気が付いてみれば2008年時点ではその金額が1980年を下回り、対GDP比では9.5%から4%まで減らしてしまったのです。
GDPとは支出側から見れば、民間消費+政府支出+純輸出の総額と簡略化できるものですが、民間消費は景気の従属変数であり、デフレ下では増やしようがありません。また、日本の純輸出がGDPに占める割合は、せいぜい1.5%程度ですから政府支出を減らした分だけGDPは減少します。緊縮財政をすれば、当然税収は減少します。福祉関係費用は削りようもなく毎年増えていきますから財政の赤字が増え結果的に赤字国債を発行せざるを得ず今日に至ったわけです。民主党内閣に至っては2010年度予算で公共工事を対前年比18.5%減らしたものですから、2009年度で471兆円まで落ち込んだ名目GDPはさらに悪化します。インフレやデフレの指標となるGDPデフレーターは98年を境に下り始め2000年から以降100%以降に下がり09年度では89%まで下がりました。自殺者数も97年までは年間2万人だったものが98年以降3万人台に一挙に増えました。国税庁のデータから拾った給与所得も98年を境に低下し始めました。
G7諸国の公的債務残高(=国債発行残高とします)の増え方を1980年から調べますと例外なく毎年その金額は増えています。新聞などが史上最悪と評していますが、日本の増え方など特別に多いわけではなくむしろ2000年以降などを見ると例外的に増え方が小さいのです。結果的にGDPが増えず公的債務残高対GDP比率が高くなっただけなのです。もっともこの指標が低ければ国家経済が健全かと言うと必ずしもそうとは言い切れません。韓国は97年のアジア金融危機で破たん寸前まで追い込まれIMFの支援を仰ぐ結果になりましたがその直前の公的債務対GDP比率は16%程度でした。このような例はいくらでもあり、皮肉な例でたとえればミッテラン大統領が隠し子の存在をマスコミに明かされたとき「それがなんなのか」と言った程度の問題でしかありません。
日本は積極果敢に金融緩和と財政出動を行って景気回復に努めるべきと考えます。

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