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経済学

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2023年2月11日

物事には逆の面がある――金利・国債・貿易赤字

(これは1月25日に発行したメルマガ「文明の万華鏡」第129号の一部です)

 「マスコミは事実を、真実を報道するのが役目」だと、我々は思っている。マスコミ自身、そう言っている。僕も外務省に入った時は、そう思っていたし、僕が大学で教えていた学生たちもそう思っていた。しかし「真実」はそう簡単にわかるものではないし、わかったとしたら、あんなに沢山の新聞、テレビ局は要らない。官報とNHKだけあればいいのだ。
 つまりマスコミは、ニュースをいろいろ「解釈」して評価を加えて、我々に「ニュース・ショー」として提供しては、広告で稼ぐ、一種の産業なのだ。

 ならば、と思うのだが、どうしてマスコミはいろいろなものごとには反面があることを、我々に伝えてくれないのだろう? こちらの方がよほど読者は増え、視聴率は上がると思うのだが。

例えば国債の大量発行。これについては「国債=悪」、「国債=将来の世代へのつけまわし」という紋切り型の論評が定着している。財務省の宣伝が効き過ぎて、思考停止をもたらしているのではないかと思う。

国債という仕組みは、中世のヴェネツィア、フィレンツェ等、地中海諸都市で出現し、近世のオランダ、イギリスに引き継がれて膨らまされた。地中海諸都市やオランダでは、国債は「年金」と呼ばれ、金持ちが購入した(購入が義務とされた時もあったようだ)。
これを買えば、終生、一定の利子を払ってもらえる。つまり毎年僅かの払い戻しがある増税のようなものだ。政府にとって国債は歳入増をもたらし、増税と同じ効果を持つが、国債を購入した者にとっては、利子がつくだけ、税金を只取りされるよりまし、という代物なのである。

財務省は、「国債は利払いが大変だ。インフレなどで金利が上昇すると国債金利も上がって、利払いが大変になる。例えば日本では2026年度、金利が1.6%に上がると、予算の歳出中、国債利払いが4.5兆円増えて、予算を圧迫する(今の金利なら元利返済に合計29.8兆円)」と叫び(18日付日経)、あまたのマスコミはなぜかこれだけは政府の言い分をそのまま報道して読者を脅す。

でも待てよ、と思う。昨年9月末の時点で、日本の国債の発行残高1066兆円のうち日銀が536兆円を保有。保有割合は50. 26%に達しているのだ。日銀は政府が発行する国債という紙に、紙幣という紙を発行して買い上げて(市中の銀行を経由してだが)懐に入れ、日銀の財産として記帳している。

何やら胡散臭い話しなのだが、それはさておいて、金利のことを考える。国債の金利が上がると、財務省がそれを支払うのだが、そのうち50%程度は日銀に払い込まれる。これは年度末、日銀から国庫へ納付され、国家にとって追加の歳入となる。別途、国債を発行した分、それだけ景気が良くなって税収も上がる。2021年度の国の一般会計の税収は67兆379億円で、20年度を約6兆円上回っている。日銀剰余金、そして税収増分を合わせると、上記の国債利払い増の4.5兆円を上回る。

一方、「金利が上がると国債の時価は下がる。そうすると、国債を資産に組み入れている日銀にとっては、資産額がどんどん減少し、日銀の信用問題、つまり日銀券=紙幣への信用問題、円安を引き起こす。だから国債の増発は控え、利上げも控えるべきだ」という議論もある。これも、どうもわからない。金利が上がれば、円を保有したい外国人が増えて、円はむしろ上がるだろう。それが二週間ほど前、実際に起きたことでもある。

僕は財政専門家ではないので、ここで議論を止めるが、国債についての議論はどうも表面的なところで留め置かれている気がする。安全保障問題と同じで、もっとものごとを明るみに出して、納得のできる議論を展開してもらいたい。「知らしめるべからず。拠らしめるべし」という官僚支配の論理は、もう通らない。

もう一つ。昨年の貿易赤字が約20兆円と、記録的な大きさになったことについて。マスコミは「円安でエネルギーの輸入料金がかさみ(昨年はエネルギー価格自体高騰したし)、貿易赤字が過去最高になった。大変だ。日本は終わりだ」という調子で報道しているが、これもものごとの一面しか報道していない。

円安で、輸出企業の収益(円ベース)は記録的に伸びているはずだ。これは税金の増収ももたらす。そして昨年度でも、企業の海外投資収益等の貿易外収支は黒字で、貿易収支と合わせての経常収支は約600億ドルの黒字に留まるものと予想されている。エネルギー価格が下落すれば、貿易収支も黒字を回復するだろう。

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