Japan and World Trends [日本語] 日本では自分だけの殻にこもっているのが、一番心地いい。これが個人主義だと、我々は思っています。でも、日本には皆で議論するべきことがまだ沢山あります。そして日本、アジアの将来を、世界中の人々と話し合っていかなければなりません。このブログは、日本語、英語、中国語、ロシア語でディベートができる、世界で唯一のサイトです。世界中のオピニオン・メーカー達との議論をお楽しみください。
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経済学

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2018年2月16日

日本経済 いくつかの思い込みを修正する時

(これは、1月24日に「まぐまぐ」社から発売したメール・マガジン「文明の万華鏡」第69号の一部です。
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世の中の議論にはいくつもの思い込み、マスコミによる刷り込み、誤解が混ざっていて、真実はほんの一部の座しか占めない。「ドルの黄昏」などというのもその刷り込みの一つの例なのだが、他にも実例は無数にある。そのうちの二つを取り上げる。

少子化でも就労人口は増えた日本

 日本と言えば少子化、そして数年前に流行った「デフレの正体」(藻谷浩介)が吹聴した、「高齢化する日本では労働年齢人口がこれから減る一方なので、経済も縮小する」という悲観論が定着しているが、現実は今のところ反対の方向に動いている。

まず経済は縮小しておらず、むしろ成長しているし、就労者人数も2012年の6279万人を底に増加し始め、2017年は6512万人になっている(この点は、最近の日経記事で初めて気がつき、驚いたものだ)。これは、主婦層、高年齢者の就労が増えていることが主原因である。また外国人労働者の数も、2012年の68.2万人から2016年の108.3万人と一貫して増えてきている。

 つまりアベノミクスで景気が良くなってきたことで、雇用が増え、それは高年齢層、そして主婦という、一種の労働予備軍を就労させたのである。「少子化、人口減少で労働可能人口が減少し、それが賃金水準上昇を招いて経済成長の足を引っ張る」というシナリオが実現するのは、労働力にもう余裕がない完全雇用の社会においてであって、今程度の景気であれば、無理に移民を増やさずとも、国内の労働力でまかなっていけるということなのだろう。

 だいたい、バブル景気真っ盛りの1990年の就労人数が6249万人、バブル崩壊で真っ青の1997年が6557万人で記録的就労人数という数字もあるので、就労人数と景気の間に正の相関関係があるとは、言い切れない。
 
米国で金利が上昇しても円は上がり気味、そして日米株式が空前の好況である怪
 
リーマン金融不況後の米国経済は回復し、米連銀は既に金利を引き上げつつある。金利が上がればその国の通貨は普通レートが上昇するのだが、現在のドルはユーロ、円に対して下げ気味である。そして金利が上がれば株価は下がるのが通例なのだが、今の米株価は空前の好況にあって、それは日本の株式にも買い安心感を与えている。これはなぜなのか?

 それは一つには、リーマン不況後に米連銀が市場に供給した通貨の量がはんぱでなく、資金の持ち手は株式投資にも向け得るリスク・マネーをまだ膨大に持っているということだろう。もう一つは、EU、日本が今や利上げの方向にあるので、米国での利上げの効果が相殺されていることもある。

 それでも、米国の長期金利の上昇テンポが勢いを増していることから、米国株式はもうすぐ大崩れするかもしれない。日本でも円高がきっかけになって、株式が大崩れするかもしれない。(2月15日注:不幸にしてその通りになってしまった)

デフレがインフレに様相を変える時
 あと最近おやと思ったのは、元日銀国際局長の堀井昭成氏が外国のサイトに英語で投稿、今年末には日本でインフレ率が2%に達し得ることを指摘、これが日本国債市況だけでなく米欧の債券市場を揺らす危険性にやんわりと警告を発していることhttps://www.omfif.org/analysis/commentary/2018/january/rising-japan-inflation-a-possible-shock/。この関連で、先月号に書いたことをコピペしておく。

――12月26日の日経記事で初めて気が付いたのですが、中長期国債の6,1%を海外投資家が保有するに至っており、1年以下の短期ものでは55%に及んでいる由。その総額は100兆円強。円や日本経済への信頼が低下すると、売り浴びせられて、過度の円安、インフレ、金利の急上昇を招きかねないでしょう。2800億円の小粒ながら、政府が増税に踏み切ったのは、財政赤字体質を外国勢に売りの口実にされないよう、財政健全化への姿勢を見せたものである可能性があります――。

このように、金利が上がって債券価格が下がれば外国人は投げ売りして、円の急落を起こしかねない。或いは国債金利が上昇すれば、国内の銀行が争って買い求め、その結果国債価格の急落は起きないかもしれない。

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