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政治学

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2013年4月27日

アベノミクス中間決算

今、日本は「ポピュリズムの小休止」の時期にある。安倍政権が金融政策とかTPPとか人口減対策とか、あまり矢継早に懸案を片付けていくので、我々は目まいを起こしている。政治を批判するより、株式市場や為替相場の方が気になる。

とは言え、今起きているのは究極のポピュリズム、それも日銀がやり玉にあがった「金融ポピュリズム」と言えよう。「日銀が金を刷らないから不景気なんだ」という大合唱は、民主党の時代からあった。「日銀が金を刷らないから、地元の銀行が中小企業に金を出さないんだ」と議員は思っていたのだろう。そして、世界中でカネを刷って通貨を下げているのに、日銀だけが頑張っているから、円高になって輸出に響くという事情もあった。そうやって、すべての悪の根源は日銀だということになり、白川総裁が血祭りに上げられた(本人は辞めてほっとしているだろうが)。

そして日本にしては珍しく、大胆な金融緩和政策が短期間で立案、実施された。景気が回復してきたアメリカで、金融緩和からの出口論が起きている今になって、日銀は突然走り出した。競技場の反対側のトラックで、半周後れのランナーが突然逆方向に走り出したようなものだ。

日本と米国の景気の波はよくずれる、時には正反対になることが多い。そのたびに円は世界の投機マネーのいいカモにされる。米国が不況、日本が好況の時には円高になり、それに投機マネーが加わって極端な円高となり、日本は不況になってしまう。米国が好況、日本が不況の時には円安になり、それに加えて投機マネーが日本から逃げ出すために、極端な円安、インフレになってしまう。もっとアメリカ経済とサイクルを合わせればいいと思うのだが。

で、アベノミクスの中間決算をしてみると・・・。
まず、国債を出しやすくなった。野田政権が消費税法案を通してくれたので国債の信用度は高まっているし、日銀が国債を大量に買い支えてくれるので(長期国債の保有残高は年間約50兆円のペースで増加、2年間で2倍となる予定)、買い手確保の面でも心配はない。安倍政権の下で財務省の影響力は弱まったとマスコミは書いているが、黒田総裁は元大蔵官僚だし、実際にはすべてのことは国債の大量発行を支えることを中心に回っている。

次に円が下がった。これで得をする人と損をする人の数を比べてみると、どちらが多いか、微妙なところだろう。製造業は海外で生産している分も多いし、取り引きに円とドルその他をうまくミックスさせて、為替変動に強い体質を作っている企業も多いので、円安がプラスとは一概に言えないからだ。

一般消費者はもちろん損をする。幸い、ガソリン・食肉価格などは上がるどころか更に下がっている。しかしそれは、原油の世界価格が下落しているという僥倖、そしてアメリカから年長の牛肉も輸入を再開するという規制緩和によるものなので、円下落はこれからもっと物価上昇をもたらすようになるだろう。

第3に、金融緩和のおかげで、企業への銀行融資が増えるかどうかだが、これはまだ効果は見えない。もともと、日本の企業は現金を大量に溜めこんでいるから銀行融資はいらない、アベノミクスはこの面では効かないだろう、という声が強かったものだ。それでも日本の大手都銀は今、国債を大量に日銀に売却していて(利率が下がったから)、新たな融資先を探している。これで、1985年プラザ合意の後の金融緩和が株価・地価バブルを起こしたように、これから特定の資産の高騰が起きるのだろう。「国債より利率がましな外債」への投資も増えている。それは円を下げる方向に作用するので、政府、日銀には好都合だ。そういうわけで、政治家達が期待しているように、金融緩和で地方の中小企業への銀行融資が増えると思ったら間違いだろう。

第4に、日本の余剰資金が海外に流出して欧米諸国の国債・社債を買いあさっているものだから、米国もEUも日本の金融政策を非難しない。まあ言ってみれば、リーマン・ショック後、ひとり金融面で禁欲してきた日本が、米欧の金融緩和が息切れしてきた今、半周後れの緩和を始め、それが米欧にカンフル効果になっている、とでも言おうか。

これが本当に、日本にとっても世界にとってもカンフルになるのかどうか。「穴を掘って埋め戻すのでもいい。とにかく予算を使って雇用→消費→投資を維持せよ」と説いた、かの「ケインズ理論」の学説の行き着くところ(「なれの果て」に見えるが)が今、実験されようとしている。われわれ一般市民は、麻酔をかけられ、じっと実験されているより、この中でどうやって貯金を守り、どうやって巨大な資金の流れから僅かばかりでも掬い取って貯金の目減りを防ぐかを、気にするべき時だ。

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