戦争の時、先人達は意外とーーー
「スターリンの対日情報工作」(三宅正樹著 平凡社新書)という本を読んだ。と言うより、読まされたのだが、いくつか新しい(良く知られていることかもしれないが)発見をしたので書いておく。
著者の三宅正樹氏は、太平洋戦争前後の日本現代史、日独関係の泰斗。本書の題名は「スターリンの対日情報工作」となっているが、実際はスパイのゾルゲが日本から送った情報がスターリンにあまり用いられなかったということを、一次史料やインタビューをもとに入念に跡付けた書物である。
本書の中で提示されている数々の事実は、歴史的な観点から非常に面白いものがある。たとえば戦前と言えば、日本の社会は客観的な情勢判断などできないほど軍部や親ドイツ派に牛耳られていた、だから1939年独ソ不可侵条約成立に平沼内閣が驚愕して総辞職するような醜態をさらしたのだ、というのが一般的な理解なのだが、本書の42ページにあるように当時日本の論壇においては、たとえば清沢洌が詳しい国際情勢分析を発表し、ドイツが将来劣勢になり得ることを予言している。
同じく本書の134ページには、1941年10月頃にはドイツが米国の対独参戦を止めるため、そのような場合には日本が米国に対して宣戦し得ることをちらつかせてくれと日本政府に頼み込んでくるも、当時佳境にあった対米交渉を壊したくない日本側はのらりくらりとその要請をかわす、つまり真珠湾攻撃からわずか2カ月前でも、日本政府はドイツとの同盟より、対米関係打開を重視していた、ということが示されている。
さらに本書の158ページには1941年、ドイツ、ソ連歴訪を前にした松岡外相に対して近衛首相が、「ドイツとは何も進めるな。ソ連とは少しならいい」と訓令を与える場面が出てくる。実際に、訪欧した松岡はソ連とは中立条約を結ぶも、ドイツとの関係は何も進めることなしに帰ってきたのである。
松岡は日独伊の枢軸にソ連を加えて「ユーラシア同盟」的なものとするのだと豪語していたらしいが、ソ連攻撃を当時から策していたヒットラーにとってそれは迷惑な話だったろう。松岡はそれを知ってか知らずか、そして「ユーラシア」云々という言葉は別にして、本質では近衛など対米関係重視派の掌に乗った外交を展開したように見える。
本書の150ページによれば、在京ドイツ大使オットには、1941年対米開戦間近な時でも日本では、「英米派」が日独接近に対して強い抵抗を一貫して行っていると見えていたのである。つまり、開戦に至るまでの日本内政は、図式的な単純なものではなかったことを、本書は示している。
本書の221ページは、終戦間際、日本がソ連に仲介工作を頼んだことについても、一般の見方を変える。つまり日本政府は既に参戦の意図を固めていたソ連に対して、そうとも知らずに英米への和平仲介を依頼するという不甲斐ない外交をしていた、という従来の一般の理解は、単純過ぎるかもしれないということである。
同頁に紹介されている、1945年5月11~13日の最高戦争指導会議(日本)での文書は、ソ連の対日参戦濃厚という情勢を見すえたうえで、戦後の米ソ対立まで見越し(!)、日ソ中が共同して英米と対抗する構図をソ連側に提示する心づもりがあったことを示している。
当時の東郷外相は戦後書いた手記「時代の一面」の中で、「この時ソ連政府当局が日本に対し、すでに開戦の決意を為して、佐藤大使との会見および近衛公の入国を肯じなかったとまでは、想像し得なかったのは、甚だ迂澗の次第であった」と述懐しているそうだが、極東裁判の渦中にあった東郷外相が政策決定の真の背景については全貌を書いていない可能性があるということになる。
なお、日本政府による情勢認識が不十分だった例としては、本書46ページが参考になる。それによれば、対ソ開戦前のドイツ上層部は親ソ路線のリッベントロップ外相等と、対ソ戦を早くから決意していたヒットラーの二重構造を呈していた、しかしスターリンはこの点を十分認識せず、結果としてドイツの不意打ちを許し、日本政府もこの点を十分認識せず、独ソが不可侵条約を結んだのだからとして1941年日ソ中立条約を結んだのである、ということである。
ゾルゲについても本書は、彼を稀代のスパイとして持ち上げてきた、これまでの通念を破っている。彼の主要な「功績」とされている、ドイツの対ソ連攻撃開始日を把握してモスクワに報告したこと、及びその後日本はソ連を攻撃するのではなく対米戦に向かう決定を行ったことをモスクワに報告し、そのためスターリンが極東の兵力を西部に移動してモスクワをドイツ軍から守るのを可能にしたこと、という二つの事柄につき、いずれの場合にもゾルゲの情報は主要な役割を果たしてはいなかったことが示されているのである。
「スパイもの」は、スパイの個人的役割を過大評価することが多い。大衆は、たった一人の英雄かただ一人の悪者を想定しては、すべてを理解しようとする。だが現実の諜報は人間の営みである以上、その世界も関係者間の嫉妬、憎悪、派閥関係等あらゆる人間的な要素によって歪められている。
政策決定においては客観的な情勢認識などよりも、国内の権力闘争において政治家Aが政策Aを担ぎ、それに反対する政治家Bが政策Bを担いでいた時には、政策Bが客観的にはいくら正しくとも、政治家Aが権力の座についた時には採用されない、というような人間的要素の方が大きな役割を果たす。
本書の169ページでは、アメリカに少し遅れて1941年秋ソ連も日本の「パープル」暗号(外交用暗号)解読に成功し、それにより日本にはソ連攻撃の意図が当面ないことを知った、とある(本書33ページには、ソ連は暗号解読書をベルリンの日本大使館から盗んだ、とある)。さらに本書の194ページには、ソ連が「エコノミスト」と呼んでいた日本側の情報源が、日本は対ソ戦ではなく対米戦を始める意図であることを、ゾルゲより5日早くソ連側に伝えていたことが明かされている。この「エコノミスト」が誰なのかを著者の三宅氏は推理しているが、結論は出していない。
過去のことも、勉強し始めると際限がない。それに昭和前期の歴史はどうも潤いがなくて、好きではない。でもやはりm今までの通念でだけ考えていると間違えるのだ。
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コメント
~カダフィへの Wii(2009.11月) か ら
ク ールビー ズ〇婚 活 死援〇マスコミ大手とNH 犬( 3! ) = 邪 パン〇ツ魔◎テロ(△110)~
~ △ ( 国 内 ) 三 大 〇 テ ロ ~
伊藤一長 前長崎市長 〇TBS系列のインタビュー予定で 市長選挙事務事務所前にて暴力団(三)から射殺(2007.4.17)
秋葉原無差別殺傷事件 〇万世橋警察署付近で発生(2008.6.8)
厚労省事務次官夫妻殺傷事件 〇麹町警察署に 住民票持参で 出頭した小泉容疑者の犯行(2008.11.17)
~擬装失踪・擬装自殺・事件・事故~
△ タ ー ゲ ッ ト は ( 匿 名で 官邸メール にて励まし続けた ) 医 師 久松篤子&小泉純一郎前首相
~ち〇なみに~
~飯 島 勲 (松本歯科大学特任教授) 〇 松岡利勝 農水相 ドアノブで首吊り自殺(2007.5.28)~
~小 池 百合子 (中央大学院客員教授) 〇 中央大学教授 大学内の校舎 1号館4Fトイレで刺殺(2009.1.14)~
~日 枝 久 (フジテレビ会長) 〇 ライブドア 不 審 死(2006.1.18)~
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