北方領土問題と総選挙と自民党総裁任期延長
(以下は、メルマガ「文明の万華鏡」第53号に掲載したものの一部です。全文は、http://www.japan-world-trends.com/ja/subscribe.phpで予約下さい)
12月15日にプーチン大統領は来日することになっている。日本のマスコミは、ここで北方領土問題が必ず「解決」し、その成果をひっさげて安倍総理は早期解散、総選挙で蓮舫・民進党を打ち破り、その勢いで自民党総裁任期延長を勝ち取る、そうすれば2020年の東京オリンピックまで安倍政権、というシナリオを書き立てる。
しかしこのシナリオにはいくつか問題がある。一つは、ロシア外交は今上げ潮で、プーチンは日本に「譲る」気持ちはないということがある。米国オバマ政権は自分の時代にシリア、ウクライナ問題を片づけておきたいようで、そのためにはロシアに随分譲る気配を見せている。オバマ政権の外交は諸方で破綻を示し、ロシアはそこにつけこんでポイントを稼いでいる。その典型は中近東で、サウジ・アラビア対イラン、トルコ対イラン、イスラエル対アラブ等の間には断層があるにもかかわらず、ロシアは米国とサウジ、イスラエル、トルコの関係が揺らいでいるのに乗じ、これら諸国のいずれにも食い込んでいる。ネタニヤフ首相など、この頃ではワシントンよりモスクワ詣での方が多い。
それはアジアでも同じで、9月2日ウラジオストックで開いた東方経済フォーラム(昨年に次いで二度目)には、昨年見向きもしなかった安倍総理、朴大統領がやってきて、プーチンと並んでスリー・ショットのセミナーまで開催して見せたのである。安倍総理は北方領土問題、朴大統領はTHAAD配置ですっかり関係が悪化した中国との関係とりなしを頼むために行ったのだろうが、プーチンにしてみれば、「すべての道は俺に通ずる」かのように見えたことだろう。
なおこのフォーラムは、昨年も9月3日に開かれているが、この日は中国では対日戦勝記念日になっており、昨年は初めて大々的な軍事パレードも挙行、ロシアからはプーチン大統領も出席した。今年、プーチン大統領はウラジオに止まり、中国は対日戦勝記念日関連の大々的な行事はしなかった。去年は70周年という節目だったし、今年は直後に杭州でのG20を控えていたので、この手の示威行動は控えたのだろうが、とにかく中国が対日戦勝を祝う時に、日本、ロシア、韓国の首脳がウラジオでエールをあげるというのは意味があることだ。(但し、4日杭州でのG20首脳会議では、習近平がプーチンと先頭を並んで歩いて他の首脳を会場に導き、会議の外では英独仏、トルコ等々、並み居る国々の首脳が先を争うようにプーチンとの会談を行った)
だから、プーチンの取り巻きは、「ロシア外交の勝利」をプーチンに吹き込んでいることだろう。北方領土問題で日本に譲る気は起こらない。日本が経済的利益を求めて、すり寄って来たように見えているのでないか。
トラックバック
このエントリーのトラックバックURL:
http://www.japan-world-trends.com/cgi-bin/mtja/mt-tb.cgi/3269