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政治学

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2014年8月 7日

安倍政権の外交・安保政策の現状と問題点

(これは、「インテリジェンス・レポート」誌8月号に投稿した記事です。執筆したのは6月末ですので、その後少し情勢が変わっています。)

安倍政権の外交・安保政策については、官僚を手堅く使いこなしている一方で、果敢、かつ機敏という印象を受ける。
外務省は九十年代末、官僚たたきの洗礼を受けるとともに、国連安保理常任理事国化、北方領土返還という大一番にも負け、国民の信を大きく失った。小泉時代、対米関係は良好だったが、対中、対ロ関係は頓挫していた。そして二〇〇七年、「衆参のねじれ」が生じると政権年替わりの状況が出現し、鳩山政権の「対米自立実験外交」のあおりもあって、日本外交は漂流した。この間約十三年。手痛い空白期間であった。なぜならこの間に世界では、中国台頭をめぐって国際関係の組み換えが進行したのだが、日本は国内の政争・論争に耽るばかりだったからである。ASEAN諸国も、日本を見限るような発言を行うようになっていた。従って安倍内閣という久しぶりの安定政権は、日本外交にとって重要な意味を持つ。

日本が置かれた戦略環境


外交は、国民の安全と暮らしを守るために行うものである。そして日本が置かれている戦略環境はこの地図が示すように複雑、困難、つまり米国、中国、ロシアという三つの核大国(北朝鮮も核保有)に囲まれているだけでなく、歴史をめぐっては韓国、中国から恨みを持たれる一方、自分ではロシア、米国に対してわだかまりを持つというねじれた関係にある。
米国がアジアに登場したのは百五十年前のことであるが、それ以降、東アジアの国際政治の基調は米中の絡み合いをめぐるものになった。太平洋戦争は、中国利権をめぐる日米の相克が嵩じたものと言えるし、冷戦が終わり中国が興隆した今、日本は米国に対中バランス要因として用いられている。従って国際政治上、日本の地位は盤石ではなく、日米同盟が安全保障政策の軸と言っても、その運用ぶりは米中関係の推移に応じて濃淡がつく。
これに比べて経済面では、日本の地理的位置は有利なものと言える。米、中、ASEANという大市場、そして生産基地に囲まれているからである。

日本は製品製造用の機械や部品をアジアに輸出し、そこで完成品を組み立てると米欧に輸出している。日本企業の工場は東アジア全域に分布して、分業体制を作り上げている。そして日本は経済においても、米国にとって重要な意味を持つ。グローバルな自由貿易体制(WTOやTPP)――終戦後は、米国が世界を一つの市場に統一したのである――を維持するためには、世界三位の経済力を持つ日本の協力が不可欠だからである。なぜなら、日本が米国主導の貿易システム(例えばTPP)から離脱すると、経済上の力のバランスは米国から中国に傾く。すると中国はWTO秩序を勝手に変え、自分の都合を米国に押し付けるだろう。そうなると米国は中国市場での自由を失い、むしろ自分の方が中国の市場にされてしまう――そのような状況があるからである。
以上の環境の中、日本外交ができること、かつやらなければならないことは、政治面では東アジアのstatus quo(端的に言えば、国境を武力で変えさせないこと)、経済面では自由貿易体制を護持・深化させることと言ってよかろう。

阻害要因・不確定要因

 この二つの目的の実現を妨げる要因がいくつかある。一つは、歴史に起因するものである。東アジアは長年にわたって中国大陸の大帝国の下に格付け・秩序づけられてきた(冊封・朝貢体制)。それは、主権国家の平等を建前とする、現代の国際法秩序と異なる。中華体制の下では、国家は格付けされて老幼の順番を決められるとともに、一度誤りを犯した者は永遠に謝罪することを強いられ、下位に位置づけられてしまう。

中国は力をつけるとともに、ベトナムとの海上境界線紛争などにおいて、中世のいわゆる中華秩序を引用し始めている。中国は自分の実力を過大評価するとともに、「アヘン戦争以来の屈辱を晴らす時がきた」というコンプレックス、そして「大国は自分の意志を通す権利がある」という時代遅れの帝国主義的思い込みの下、夜郎自大な言動を繰り返しているのである。
日本にとってのもう一つの問題は、民主主義、市場経済の唯一の隣国(国ではないが、台湾、香港もそうなのであるが)、韓国と心を割った協力関係がこれからも長期にわたって築けないだろうということである。まして、朝鮮半島が再統一された場合には、韓国は日本への対抗心を持つ強大な核保有国となり得る。

 東アジア地域のバランスを崩し得るものとしてもう一つ、それは米中関係の今後である。まず、最近喧伝される米中経済の逆転が本当に起きるかどうかである。常識的に言えば、経済成長の殆どを不正融資を伴うインフラ建設で実現している中国、統計を人為的に膨らませては様々の目的に使う中国――例えば輸入量を過大に申告しては横領資金を海外に送金する手段とする――、企業を共産党官僚が支配して経済原則無視の経営を行う中国が、米国をGDPでしのげるかは、疑問なしとしない。米国は、世界で最も旺盛なイノベーション能力を保持しており、人口も増えていくのである。

 米中関係においては、東シナ海、南シナ海の制海権を、米国・日本等が確保し続けられるかどうかという問題もある。米国はリバランスと称して、米軍配置面でのアジア重視を謳っているが、今のところアジアに増派された兵力は僅かなものに止まる。アジアへのリバランスは、欧州、中東方面での関与を避けるための口実に過ぎない面もあろう。

 そして米中関係は日本にとって常に、「肩越しの合意」、「米国に見捨てられる」という懸念を生む。米国が中国との関係で得ている経済的利益が大きいために、このような懸念が生ずるのである。通常兵力においては、日本は自主防衛能力をこれからも向上させていくだろうが、核兵器においては米国の対中抑止力に全面依存しているため、米国のコミットメントの信憑性相対化は深刻な問題である。

安全保障の強化

 では、以上の環境の中で安倍政権が行ってきたこれまでの外交=「日本の安全と繁栄を確保する」を簡単に検証してみたい。まず安全保障である。日本独自の自衛能力、つまり自衛隊については、安倍政権以前からであるが、着々と再編、充実が図られている。防衛予算については、十一年続いた減額が増額に転じ、配置、編成、装備面では、野田政権以来からのことだが尖閣・南西諸島防護に重点を置くようになった。しかし、ロシア機による領空侵犯の例が絶えないことが自衛隊配置転換を妨げている他、南西諸島防護もその緒に就いたばかりで、米軍の支援なしには万全ではない。また、これからは中国・韓国海軍が日本海での活動を活発化させることも考えられるので、頭の体操を始めないといけない。

 また武器輸出三原則については、野田政権の時代から英国との技術協力を皮切りに一部緩和が始められていたが、安倍政権は二〇一四年四月、従来の武器輸出三原則に代わる防衛装備移転三原則を閣議決定、兵器開発をめぐる同盟国等との協力、飛行艇、軍用機エンジン等、兵器そのものではないものの輸出を可能とした。これは対米、対NATO諸国技術協力の範囲を拡大するとともに、兵器関連品の生産原価引き下げにも効果をもたらすものである。

 日米同盟については、①米国との負担の平等性の確保、②中国台頭に対する連携プレーを念頭に置いた強化が行われてきたが、安倍政権はこの分野で短期間に多くの成果を上げている。二〇一三年六月にはカリフォルニアで、陸海空の三自衛隊が揃って、島嶼防衛・奪還のための訓練を米軍と共同で行った。この時は大型ヘリ護衛艦「ひゅうが」に米海兵隊オスプレイが着陸したり、陸上自衛隊の部隊が米軍オスプレイで展開するなど、日米の兵員、装備が一体のものとして行動した。そして二〇一三年十月には、米国務長官と国防長官が初めて日本で2プラス2会合を行っている。更に二〇一四年四月に来日したオバマ大統領は、「尖閣は日米安保条約の対象である」旨を明確に言い切っている。

 安倍政権は更に二〇一三年十二月、多くの批判に遭遇しながらも、「特定秘密保護法」採択を実現した。これなしには、有事における米軍との連携もままならなかったであろう。そして集団的自衛権については二〇一四年七月、解釈の一部手直しが行われた。但し公明党、野党からの抵抗も強かったことから、従来の内閣法制局見解を真っ向から覆す程のものにはなっていない。
この問題についての議論においては、これまでの経緯を踏まえていなかったり、あるいは問題の全体像を知らずに発言している例が多く見られた。例えば、「日本防衛のために戦っている米軍が襲われた場合、横にいる自衛隊が助太刀をする」という必要最小限のことについては、既に個別自衛権の延長であるとの解釈が下され、可能になっている(昭和三十五年第三四回国会衆議院予算委員会における林・内閣法制局長官の発言)。つまり日米安保条約の範囲内(地理的範囲は曖昧であるが)においては、実質的な集団的自衛権が米国との間では成立しているのである。従って今回の集団的自衛権論議は、それ以上のものを意図していたことになる。

集団的自衛権とは最初、国連憲章第五十一条が定めたもので、他国に不法な攻撃を受けた国家は、国連軍(そんなものはまだない)が駆けつけるまでは個別・集団的自衛権を行使できることになっている 。これをいわば請け負う形で、NATO、日米安保条約、CSTO等の集団安保機構ができている。従ってこの五十一条が定める集団的自衛権を行使すると、国連のお墨付きを受けた米軍の行動、あるいは多国籍軍の行動に、自衛隊が地理的な制約なしに参加していいことになる。更には、今回のように「日本と親密な関係にある他国が危機に陥った場合」にも集団的自衛権を発動できるということになると、自衛隊の海外派兵には歯止めがほぼなくなる。

二〇〇三年イラクに自衛隊を送った際にそうだったように、一々特別法を採択するために野党と取引しなければならない煩を避けたいという、政府・与党の気持ちはわかるが、それでも集団的自衛権発動には地理上、概念上(集団的自衛権発動の対象を米国に限るなど)の縛りをかけるべきである。現在の安倍政権のように、権力を管理する力と識見のある政治家達がポストについている場合はいいが、鳩山・管政権のような政権が再び現れた場合には、危険なことになるからである。
また、「米国と対等になるためには自衛隊を送るしかない」と思い詰める前に、司令のIT化が著しい米軍とは共同作戦もおいそれとはできなくなっていること、兵器の無人化、宇宙配備化が進むことから、米軍或いは多国籍軍との集団行動のあり方も変わってくるだろうことも考慮するべきである。つまり、自衛隊を海外に送らなくとも、資金・装備(例えば無人機何台とか、ロボット兵士何基とか)の提供で貢献することで十分な局面もあるだろうということである。米軍を国連軍に見立てて拠出を行うようなものである。

なお、沖縄の基地問題、特に普天間の移転については、さすがの安倍政権も手を付けられずにいる。但し、鳩山時代のように、この問題をめぐって日米関係がこじれることはもうないだろう。

「地球儀外交」=バランス外交

日本をめぐるstatus quoの維持は、防衛力強化によってだけでなく、友好国を増やす「バランス外交」によっても実現できる。安倍内閣は前政権から、悪化した日中関係、日韓関係を引き継ぎ、更に米国民主党政権からは国家主義的偏向、日本の戦争責任否定の意図を疑われて、厳しいスタートを切った。そのため、あたかも日本外交の大所を避けたような、対中小国外交に注力したため――「地球儀外交」という大仰な命名をしたが――、世論を印象付けることはなかったが、努力を続けるうちにカードも貯まり、台頭する中国に対するバランスとして意味を持つようになってきた。それは、ASEAN、NATO、豪州、インド、ロシア、トルコ等との関係推進である。
ASEANについては、安倍首相は就任一年目に全十カ国を訪問して対ASEAN外交5原則を発表、二〇一三年十二月、日・ASEAN交流四十周年を祝して東京で特別首脳会議を開いた。NATOについては、就任早々の二〇一三年一月ラスムッセン事務総長に親書を送って関係増進の意向を表明、二〇一四年五月にはブラッセルを訪問し、ラスムッセン事務総長との間で海賊対策を含む海上安全保障やサイバー攻撃への対処などで連携を強めることを確認した。更に安倍首相はNATOでスピーチ、中国の軍拡に懸念を表明するとともに、集団的自衛権を再解釈することについて理解を求めたのである。

安倍政権は豪州、インドとも、二国間関係だけでなく、対中バランス改善を意図して関係増進をはかった。そしてロシアとの関係に、安倍首相は殊更注力した。それは首相の父、安倍晋太郎が晩年には日ソ関係推進に粉骨砕身していたのを受け継ぐものでもあるが、それ以上に対中バランスの構築を念頭に置いたものだったであろう。米国との関係を悪化させていたロシアにとってもそれは渡りに船だった面があり、安倍首相は短期の間にプーチン大統領との距離を縮めた。しかしそれでも北方領土問題についての話し合いに進展はなかったし、ロシアによるクリミア併合とそれに対する西側の制裁の中で、日ロ関係は当面踊り場で停滞することとなった。また、インドのモディ新首相は最初の外遊先として日本を選んで、これからの日印関係に大きな希望を持たせたが、中国が李克強首相をインドに送って関係緊密化を図った後、モディ訪日の延期が発表され、出鼻がくじかれるかっこうとなった。

他の面での外交も、少なからぬ意味を持つ。二〇一三年六月には安倍首相がワルシャワを訪問し、初となる「V4+日本」首脳会合を行ったし、同年十二月には東京で第5回日本・メコン地域諸国首脳会議、二〇一四年五月には第五回アフリカ開発会議を行っている。これらは、世界における日本の存在感を高め、国連等での票集めの際にも効果を発揮するだろう。

また興味深いのは、北朝鮮と拉致問題解決に向けての交渉が開始されたことで、うまく進めば、北朝鮮を日本のバランス外交の一つの要因とすることができる。八世紀、朝鮮半島は南部の新羅と北部の渤海に分裂していたが、新羅は唐と、渤海は日本と親密な関係を結ぶことで(使節を頻繁に交換)北東アジアのバランス・ゲームが成り立っていたのである。現在、韓国が中国に傾斜し、中国と北朝鮮の関係に隙間風が見られる。もちろん、米韓関係、中・北朝鮮関係が基軸であることは変わらないが、若干、八世紀の昔を髣髴とさせる構図が現れており、興味深い。
 
経済外交

何度も言うとおり、外交の目的は「安全と繁栄」なのであるが、その双方の基盤となるのが経済力である。安倍政権は、国内の経済力を「アベノミクス」によって回復しようとしている。いわゆる三つの矢のうち、財政支出の拡大は(東日本大地震以後進んできたことであるが)景気回復を生み、一部では人手不足が顕在化している。「異次元金融緩和」は異常な円高の是正には役立ったが――G7諸国の反対の声を抑えた手腕は見事だった――、期待した輸出増大は起きていない。また、民間銀行保有の国債を日銀に引き取り、その資金を企業融資に向けさせようという目論見も、効果を発揮していない。かえって円の下落で、ドル・ベースでの日本GDPは約三十五%も縮小し、エネルギー資源輸入を金額ベースで急増させる結果となっている。第三の矢「成長戦略」については、法人税引き下げ等まだ緒に就いたばかりで、具体的な成果は現れていない。しかし、デフレの中で「分かち合い」ばかりを迫られていた民主党時代に比べると、社会の空気は明るくなり、消費税引き上げも消費を冷やすには至っていない。

経済外交面では、TPP、ASEANとのRCEP、中国・韓国とのFTA、EUとのFTAを主とする、自由貿易深化の動きが進んでいる。これは、韓国、中国の製品に対する日本製品の輸出競争力を確保し、知的財産権、そして投資を保護するために必須のものである。中国はWTO加盟国でありながら、尖閣問題にからんで希土類の輸出を恣意的に止めたり、日本の直接投資撤退に当たって法外な「迷惑料」を請求して愧じるところがない。TPPを結び、これに中国を入れていくことが必要なのである。

安倍外交の特徴

 安倍外交の特徴はいくつかある。まず目に付くのは、その機動性である。就任一年での外遊は十三回に及び、それは歴代総理の記録を大きく上回る。日本の総理、外相、その他閣僚は国会での審議に縛り付けられることが多く、外遊できる時は限られているのだが、その制約の中でこれだけ実績を挙げられたのには、野党の協力もあるだろう。また二月七日には北方領土返還要求全国大会への出席を終えた足で空港に向かい、特別機でソチ・オリンピック開会式に滑り込み、プーチン大統領との約束を果たしたのは、安倍首相の面目躍如たるものがあった。

 次に、官僚の操縦、活用に長けていることがある。鳩山、管両政権は官僚を打倒するべき敵と見做し、自ら行政を行わんとする姿勢を示したが、安倍政権は官僚から情報、政策を吸い上げる一方、それを取捨選択し、官僚を監督してそれを実施させるという、王道を取っている。首相の下に設けられた「国家安全保障局」も、外務省との二元外交を生むことなく、うまく機能しているようである。

 もう一つ、日本外交に往々にして見られる、「国内諸勢力のせめぎ合いの結果、独り相撲を取って自ら倒れる」という例が未だない、ということがある。安倍首相が特定の勢力の意見に大きく動かされた例は、靖国参拝程度ではないか。その他の場合は、国内諸勢力の間でのバランスをよく取っているように見える。

 そして、今までの前例や慣例が杓子定規に過ぎる場合、これを創造的に破っていくのも、安倍外交に目に付く特徴である。二〇一三年一月アルジェリアでの人質拘束事件では、前例を破って政府特別機を邦人救難のために派遣した。ODAは、供与の決定迅速化がはかられている他、他国の軍が使う機材であっても災害救助など非軍事目的のものならば供与してもよい、との方向で検討が行われている。

外国との条約締結交渉についても、以前は政治家・官僚の対応能力に時間的・員数的限界があったために、同時に進めることのできる交渉の数には限りがあった。ところが現在は、TPPとRCEP交渉を並行的に進める等、前向き、ダイナミックな対応が目立つ。そしてTPPにおいて見られるように、安倍政権は日本国内の既得権益層の切り崩しにも巧み、かつ強力なところがある。
海外広報の面でも、顕著な変化が見られる。中国、韓国による反日宣伝が多い現在、日本の広報もこれまでの「謙譲の美徳」から、果敢なものに変化させなければならないのだが、安倍政権はその課題に応えている。

尖閣問題で、中国が海外の大使を動員してえげつない(・・・・・)宣伝に出てきた際には、日本の大使も現地のマスコミでそれに反論したし、二〇一四年六月、「慰安婦問題についての河野談話」検証についての報告書公表においては、これまで韓国政府を慮って伏せていた、韓国政府との事前折衝の様を率直に公開した。「相手に慮って遠慮する」という日本的な美徳は、外交においては日本の立場を徒に引き下げる場合があり、この面での自縄自縛を破ったことは、歓迎するべきことである。

今後の見通し

 というわけで、安倍外交は今のところうまく飛行している。冒頭述べたように、この十三年間続いた、日本の存在感の低下を何とか食い止め、上昇気流に乗せてもらいたい。まだ大きな成果はないが、国民の関心は経済にあるので、外交面で成果を焦る必要はない。経済の再活性化に成功するかどうかが、安倍外交の切れ味を決定するものでもある。

そして、来年の戦後七十周年は、中韓ロによる後ろ向きの反日宣伝が主流となるか、あるいは旧連合国、韓国をも包含しての未来志向のアプローチを前面に出せるか、日本外交にとって大きな山場である。そして、もっと根本的な問題は、安倍首相の次がどうなるかということなのだが、そこまで考える前に、まず久しぶりの安定政権の安定感を楽しみたい。

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