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政治学

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2012年5月21日

プーチン新政権 変調のスタート

プーチンが大統領に就任したのが7日。それからもう2週間もたったのに、アメリカのホワイト・ハウスに相当する大統領府は、メドベジェフ時代の陣容のまま(大統領が代わったと言うのに、サイトは更新されていないかのように見える)。そしてメドベジェフ首相の下の閣僚たちもまだ発表されていない。メドベジェフが4年前大統領になった時は、人事はもうすこし速かった。

今回は、何か重要ポスト、あるいは人物をめぐって人事の決着が着いていないのではないか? その可能性があるとしたら、大統領府第一副長官のボロージンと副首相のセーチンをめぐってではないかと勘繰っている。

変調は、それだけではない。ロシア経済、ロシア政府の財政を支える原油の価格が5月初めからだけでも7%以上下がった。今年度の政府予算では、1バレル・117ドル(ウラル原油)ないと収支のバランスが取れないが、それがもう108ドルまで下がっているらしい。3月15日のRussia Profileによると、1ー2月だけでも歳出が歳入を上回りGDPの3%に上っている。

こうなると、軍人の給料引き上げなど、プーチンの「マニフェスト」の多くを実行できなくなる。

そればかりか、ルーブルが下がり出し、今1ドル当たり31,4ルーブルと、2月の29,7ルーブルより約6%下がった(但し昨年末も31ルーブル台だったが)。このまま通貨の下落が続けばインフレになる。メドベジェフ首相も早、「目下の重要問題はインフレだ」と言っている。

そして反政府運動は続いている。人数は激減したが、白いリボンを腕に巻いて街を「散歩」するとか、都心にテントを張って泊まり込むなどの形で、続いている。政府の中ではそろそろ強硬派の意見が強くなり始めたので、近く手荒な弾圧が行われる可能性が高まった、との報道もある。

1週間ほど前インドネシアで、ロシア自慢の新鋭旅客機スホイ・スーパージェットが他ならぬセールスのデモ飛行中に墜落したことも、プーチンの出足をくじいただろう。スホイ戦闘機の工場が製造するこの民間旅客機は、軍需の民需転換の象徴として、経済近代化の旗手のような存在だったからだ。

だから、19日のG8首脳会議にプーチンが出席しなかったのも、オバマに一泡吹かせるため(3月4日の大統領選挙でプーチンが当選した時、オバマはなかなか祝いの電話をしなかった)と言うよりは、国外に出られないほど状況が悪いからではないか? G8欠席でプーチンを責めるのではなく、いたわる必要があるのではないか? これまでG8やG7を欠席したのは、内政が落ち着いていない国の首脳だけだからだ。

(これを書いた翌日21日には、新しい内閣が発足した。「大幅な入れ替えがある」との触れ込みの割には、馴染みの顔ぶれが多い。それに21日になっても、大統領府人事にはまだ手が付けられていないようだ。こちらが決まらないと、プーチン新政権の前途も予測が難しい)


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