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2020年6月 4日

できるだけめだたないように  デフレ下の日本語の退化

この10年くらいだろうか。日本語の、ある新しい言い回しがどうにも気になっている。
それは、「今日は、・・・させていただきました」という言い方。または「・・・からは、とても元気をもらうことができました」という言い方。

どちらも、70代の僕にとっては耳新しい、かつ耳障りなまわりくどい表現。

なぜ、こんな耳障りなのかつらつら考えてみると、二つとも「自分」という主体がないことに気がつく。「私は今日は、鎌倉に行ってきました」と言う代わりに、「私は今日は、鎌倉に行かさせていただきました」と言う。自分の意志はないもののごとし。

元気の方も同じ伝で、「・・・を見て、とても元気になりました」と言えばいいのに。これも、元気になった自分より、そもそもその元気を持っていた「・・・」ばかり目立たせる言い方で、どこか主体性が感じられない。

要するに、自分というものをできるだけ抑えることが、日本の社会で摩擦なしにやっていく秘訣だということ。そしてそれがデフレの時代に、ますますひどくなったということ。

若い女性が、「私は・・・です」と、語尾をはっきり発音するのでなく、「私は・・・ですぃ」と甘ったるく舌足らずに発音するのも、エゴをできるだけ消して可愛く見せようという本能にもとづくものだろう。好き嫌いの問題だが、僕は好きではないと言わさせていただきます。

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