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2013年11月30日

アニメ かぐや姫の物語 日本文化の総力結集

今日、アニメの「かぐや姫の物語」を見てきた。監督は78歳の高畑勲。
良かった。「生きていると感じられることが大事で、屋敷とか官位とかそんなものは」という趣旨のせりふを聞いて、涙が出てきてしまった。僕も同じことを考えて早めに外交官をやめて、本当に好かったと思っているからだ(その割には実入りがなくて、これも別の意味で涙が出てくるのだが)。

このアニメの脚本は、「竹取物語」は本来平板なのだが、そこにかぐや姫の心の中の葛藤(出世と幸せのトレード・オフ関係)をあえて想定、それを軸にドラマを仕立てている。葛藤がなければ、ドラマはできない。

まあそこはいいのだが、作画が素晴らしいhttp://video.search.yahoo.co.jp/search?rkf=2&ei=UTF-8&p=%E3%81%8B%E3%81%90%E3%82%84%E5%A7%AB%E3%81%AE%E7%89%A9%E8%AA%9E。この数年、テレビや映画で時々見るようになっていた、鳥獣戯画など平安時代の線描画がアニメになって動き出すという、あの技法が全篇にわたって使われている。

これが詩的で素晴らしいのだ。最近のハリウッドでは、アジア産アニメに差をつけようとして、立体の人形が動くものばかり見せるが、あれはどうも身に染まない。白人的に、曖昧なところは全部とって、すべてを人間がコントロールするという発想が感じられ、息がつまるからだろう。
かぐや姫の物語は、色彩も日本的に淡く、温かく、本当に国民的アニメという感じだ。

国民的アニメ――― 音楽は久石譲、主題歌は二階堂和美http://video.search.yahoo.co.jp/search?p=%E3%81%8B%E3%81%90%E3%82%84%E5%A7%AB%E3%81%AE%E7%89%A9%E8%AA%9E+%E6%AD%8C&tid=e57fdd1586cb6092b5ff4839066e449b&ei=UTF-8&rkf=2と、今の日本では最高の布陣。月のわらべ唄に使われている不思議な音階、月から使者を運んでやってくる雲の動く音楽は東南アジアのガムランばり。日本人の感覚、日本人の美意識、日本人の技法、そのすべてを繰り出している感じがして、そこがまた泣けてきた。1985年のプラザ合意以来、悪いことばかり多く、今は中国に押され、韓国に馬鹿にされ、昔の恨みを晴らされようとして、それでも何とかみんなでやっている、と思ったら、また涙が出てきた。この頃は涙もろくなって、「三丁目の夕日」の沸き立つような熱気を見てもまた泣けてくるのだ。

ところで、この「かぐや姫物語」のようなやり方をすると、日本の古典は宝庫と化する。人間の感情、葛藤が大きな戦乱を背景に渦巻く情景がいくらでもある。僕が好きなのは大津皇子の悲劇。彼が刑死した時、その妻山辺皇女は、「髪を振り乱して裸足で走り、殉死した」とものの記録にある。そしてインターネットあたりのガセネタによれば、彼女は滅びたアケメネス朝ペルシャの高官が日本に置いて行った娘だった可能性があるというので、ものすごくドラマチック。他にも鎮西八郎為朝の弓張り月とか、太平記とか、そしてもちろん平家物語、プルーストばりのロマンだったら源氏物語と、日本文化は情緒の宝庫だ。

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