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2012年9月17日

イスラム海賊が西欧を興隆させたのか

世界史についての仮説。
15世紀ころ、オランダが興隆して18世紀末まで英国よりGDPが大きかったようなのだが(今の日本とよく似ている)、なぜオランダがあの時興隆したのかどうも腑に落ちなかった。実感として把握できないのだ。内陸への運輸ルートであるライン川の河口がある、毛織物生産の中心地である、航海能力の優れた帆船を開発して海運を牛耳った―うんぬんかんぬん、わかるのだが、腑に落ちないのである。

でも最近、塩野七生の「ローマ亡き後の地中海世界」を読んで、やっと欠落していた環が見つかった感じがする。それは、当時の地中海がイスラム海賊に牛耳られていたために、スペインやポルトガルの船はアジアや新大陸から持ってきた香料や金銀を地中海の諸都市には持ち込めなかったということだ。だからリスボンやアントワープが港として繁栄していく。まあヴェニスが、そして地中海経済圏が、北ヨーロッパに移転したような構図だ。

取り引きがあれば当然銀行業務もあって、そこにはヴェニスとかジェノヴァの銀行が支店を出しただろうし、その中にはユダヤ系資本もあっただろう。だから今でもオランダにはユダヤ系資本家がずいぶんいて、それは17世紀には英国への投資を始め、19世紀には米国への投資を始める。

だから、イスラム海賊がいなければ、今でも欧州の経済の中心は地中海地域で、アフリカ北岸のイスラム地域も先進地域となっていた、アラブの春もなければ、カダフィ大佐も死ななくてすんだのかもしれない。

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