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2012年5月 8日

シェエラザードとイスラムの大航海時代

今日、ロシアのオーケストラのコンサートで「シェエラザード」を聴いた。イスラム嫌いのロシア人がイスラムのお姫様の伝説に作曲して、それをまたロシア人のオーケストラが奏でるのもおかしなものだが―ー―作曲者のリムスキー・コルサコフという名は直訳すれば「ローマの韃靼キツネ」で、これもまた奇異な名だ―ーー、シンドバッドとか昔読んだ千夜一夜の物語を思い浮かべているうちに、これはまさに西欧の白人たちがなだれこむ以前のインド洋、イスラム商人たちが活躍していたころのインド洋のこと、イスラム商人たちの大航海時代のことを書いた物語ではないかと再認識した次第。

それとは話が違うが、まだ学生の頃、シェエラザードをひっさげて、われわれ学生オケは夏の演奏旅行に出た。確か名古屋あたりから始めて、広島、九州の久留米、別府、宮崎などを回り、都城で打ち上げをしたのだと記憶する。1968年くらいのことだったが、地方の主要都市には文化ホールが次々に建設されていた頃だ。
今思えば、学生オーケストラの一員として日本全国を旅行する(切符を売りつけられた先輩たちは大迷惑だっただろうが)なんて、何という恵まれた人生。終わったあと、仲間数人と宮崎の日南海岸で過ごし、真っ赤に日焼けして座席に座っているのも痛いなかを、列車を乗り継ぎ東京まで1日以上もかけて帰った。あの時一緒だった男はその後裁判官となり、今はもう亡い。そして僕ももう、音楽はただ聴くだけになった。

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