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街角での雑想

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2013年8月13日

中古住宅で経済を伸ばす

日本人の家計金融資産は二〇一二年第二四半期で千五百兆円を超えている 。かつて世界でも最高部類だった貯蓄率(一九九一年十五%)も落ちて、最近ではアメリカなみの七%程度に落ちているのだが 、まだ過去の蓄積は大きいということだ。

問題は、この家計金融資産の多くは銀行預金で、その銀行預金の多くが低利の国債に「投資」されているということである。つまり、貯金がぜんぜんふくらんでいかない。二〇一一年六月には個人の普通預金残高が二百兆円あった中で、百九十兆円もの国債を銀行たちは保有している。これはアベノミクスのおかげで半分程度に減ったが、国債を売った金を銀行たちはもてあましているようだ。

もっと、なけなしの貯金を有効に膨らませていく手はないものか? 石川啄木は「働けど、働けどわが暮らし楽にならざり。じっと手を見る」と言ったが、もうちょっとうまいやり方をしているところはないものか? ある。たとえば、アメリカ。アメリカの住宅制度。

アメリカが耐久消費財の生産を日本、次いで中国に奪われたあとも、「国産品」としていちばん奮闘してきたものは住宅だろう。住宅こそ、アメリカのモノづくりの最たるもの、と言っていい。金融バブルで貧困世帯にも住宅ローンが出されるようになった二〇〇〇年代は別にして、たとえば一九九五年、住宅購入はGDPの約五%、関連サービスと合わせると約十八%もを稼ぎ出している 。この「関連サービス」が大きすぎるように見えるが、たぶん中古住宅の転売市場が大きいからこうなるのだろう。

日本では住宅購入は「投資」に分類されているが、何の儲けも生むことなしに四十年、五十年経ったら取り壊されるだけなので、実は消費に近い。アメリカ人は住宅を、まさに「投資」として扱う。アメリカの一軒家にいくつか住んだことがあるが、地震も台風もないからずいぶん安普請、日本ではあまり売れないだろう代物だった。それでもアメリカ人は住宅ローンをもらって小さめの家を買うと、週末にペンキを塗ったり、庭を整えたりして、住宅としての価値を高める。そして買った時より高値で売って、そのカネでもっと大きい家を買う。家族の規模に合わせて、ヤドカリのように家を替えていく。そのたびに儲け、つまりGDPを膨らませながら。

日本人がなぜこれをやらないかと言うと、まあ「慣れていない。他人の住んでいた家はどうも」という答えが返ってくるだろう。しかし制度を変えてみると、日本人の行動も変わってくるのではないか? 例えば、土地の所有権は開発業者、住宅の所有権は居住人ということにすれば、住宅はもっと安く買えるようになるし、商品としてもっと気軽に回り始めるだろう。

もう民主党時代のことになるが、二〇一〇年六月閣議決定された「新成長戦略」では中古住宅、リフォーム市場を二〇二〇年までに倍増させて二十兆円規模にすることをうたっている。日本人はアメリカ人と違って週末に家のペンキ塗り、屋根ふきというわけにもいかないだろうから、家の資産価値を高めるためにはプロに「リフォーム」を頼むことになる。

このリフォーム市場は今、ずいぶん活況らしい。システムを変えたのかどうか知らないが、住宅部門が日本でもっと活用できることは確かだろう。

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