今月の音楽 武満徹 飛騨の古川と渡辺酒造店
このブログの日本語ページの仕様を変更して以来、右下隅に「今月の音楽」というコーナーを設け、僕の好きな音楽を紹介してきた。
これまでは地震後、元気を出せるように「鉄腕アトム」のテーマ・ソングを流してきたが、この頃の政情には深い深い疲労感と哀愁しか感じられない。
そこで早や秋のムード、武満徹の「MI-YO-TA」を今月の音楽としてご紹介したい。
http://www.japan-world-trends.com/ja/ の画面の右下、「今月の音楽」の右下にある矢印をクリックしていただくと、しばらくして音楽が始まる。素晴らしい音楽だ。
武満徹――日本を代表する作曲家で、亡くなってから15年ほどになるが、彼の作品は世界中のコンサートのレパートリーとして既に古典のようになっている。その音楽は分節化された西欧的なリズムではなく、人間の息をそのベースとするかのごとく、自在に伸縮する。暗い宇宙に浮かぶ濡れたアメーバが、息をするにつれて伸縮するかのようなイメージだ。そしてそのオーケストレーションの見事さときたら。かつて初期の作品を「これは音楽ではない」とボロクソに批評され、映画館の闇の中で密かに泣いた作曲家のこれが作品とは思えない。
調性のない聞き慣れない、あの「正調の現代音楽」とは別に、彼は映画音楽とかポップ・ソングとかの作曲にも手を出していて、ここでは伝統的なメロディー音楽を楽しんでいる。まるで子供が悪戯をするように、時にはヨーロッパのエスプリを見事に醸し出してみせながら。映画「他人の顔」のワルツ、ポップ・ソング「見えないこども」、そしてこの「MI-YO-TA」など。彼の音楽の原体験には、ベートーベンやモーツァルトよりもシャンソンなどがあるようだから、それもまた当然か。
武満さんとは1990年、スウェーデンの大使公邸で話をする機会があった。外見も、そして心もまるで火星人のような、少し飛んでいた武満さん。
――などというメルマガを知人、友人の皆様に配ったら、村上紹夫さんから返事があった。飛騨の古川というところに渡辺酒造という古い店があり、その店の横に武満徹の碑があるというのだ。
(オートバイは村上さん御自慢のやつだろう。商社を引退したあと、これに乗って自由気ままに日本を旅してまわっているのだ)
おや、武満氏は飛騨の出身かと思って調べてみると、彼は東京生まれ、大連育ちだった(日本には、満州育ちの文化人が本当に多い。開かれた環境が想像力を育てたのか?)。ではなんで飛騨の山中に彼の碑があるかというと、それは酒の成せる業なのだ。
渡辺酒造店――知る人ぞ知る銘酒の数々を作り売る店だそうで、司馬遼太郎もここに碑を作ってもらえるほど通ったらしい。
そして飛騨の古川というのがまた風情のあるさっぱりとした中世の街で、素晴らしい。
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武満さんもきっとここに何回も来ていたのだろう。
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