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街角での雑想

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2011年5月18日

原発よりも、水素と燃料電池への移行を急ごう

「原発なしには日本はやっていけない、世界はやっていけない」という大合唱が起きているが、本当にそうなのか? 雑誌「ダイヤモンド」5月21日号が原発特集をやっている。原発をめぐる、国内の利権構造、惰性の構造がくわしくあぶり出されている。

原発50何基を今すぐ止める、というのは無理。しかし10年くらいを目処に、別のやり方で代替していくための計画を作ることは必要だ。「原発がなければ日本はやっていけない」と言っても、その他ならぬ日本が放射能で住めないところになったら、意味がない。原発に対する脅威は地震・津波だけではない。北朝鮮はミサイルを持っている。テロリストが潜入してパイプをずらせただけで、原発の冷却が止まる(?)。そして世界各国も「うちは地震も津波もないから安心」などと言っているが、至近距離に隕石が落ちただけでも原発はやられてしまうだろう。

だが代替エネルギー源はあるのか? 先回も書いたように、LNGによる発電がある。炭酸ガスを発生するが、排ガスを除去する技術があるくらいなのだから、炭酸ガスを固定して石灰にしてしまう技術などが開発できないものか?

LNGでしのぎながら(発電代は高くなるだろうが、日本の電気代はもともと高い。多分原発の現地対策などで余計なコストがかかっているからだろう。原発をやめていけば、その費用でLNGを輸入できるのでは?)その先、これから10年くらいの間に、水素にエネルギー源を大きくふるべきだろう。各家庭、各事業所は燃料電池で水素を酸素と結合させて電気を得る(燃料電池)。車も燃料電池で動かす。

原発撤廃は、それが立地している地方の雇用と予算歳入を減らす。だからLNG発電所や水素製造所は、これらの地方に立地させるなどの配慮が必要だ(それでも、原発立地から得られる利益には及ばない)。

――このような(いや、もっと専門家が作ったしっかりした)計画を練り上げることこそが、日本が今世界の投資家からも求められていることだろう。次の地震が来たらまた同じことが起こるような国の企業の株は、高くは評価してもらえない。

今日はメモも兼ねて、燃料電池等についてこの数年報じられてきたことを抜粋しておく。

①希望の星は核融合。但し30年以上先の話し
核融合炉は原子炉より、安全度は格段に高いのだそうだ。燃料となる重水素は海中に豊富に存在し、三重水素は埋蔵量の多いリチウム(またリチウムか)から容易に生成することができる。ただ、核融合反応を持続させるには摂氏1億度以上の高温下でプラズマ状になった重水素や三重水素を長時間一定の空間内に閉じ込めておかなければならない。

②燃料電池=水素燃料の普及
これは10~15年先には一般化していてしかるべきもの。発電所で集中的に発電する場合に比べて、炭酸ガス排出量が格段に少なくなるのだそうだ。
パナソニックやコスモ石油などは、都市ガスや灯油を使って発電する家庭用燃料電池をもう発売している(インターネットで検索すれば出てくる)。
まだ大きくて高価だが、アメリカでは小型のものができている。発電の過程で出てくる熱を利用して温水も作るから、ガス利用の効率はガス火力発電の場合より格段に高いのだそうだ。
バラード社は日本の荏原製作所と合弁で子会社を設立し、これにNTTと東京ガスが参加して実用化実験に取り組んでいる由。荏原が目指しているのは、下水の汚泥から発生するガスを燃料にして発電するシステムだそうで、これで中国は水素大国候補、確実。


太陽電池で水を電解して水素を作り(その方がガスから作るより安い)、それを貯蔵して夜間とか曇りの日に燃料電池で燃やして電気を得る。

製鉄所などでは、副産物として大量の水素を作ることができるようだ。水素は今、高温高圧の反応容器内で天然ガスやエタノール、工場の副成ガスなどを水蒸気と反応させて作っているようで、新日本製鐵ではコークス炉の副成ガスを特殊な水蒸気改質法で処理すれば250万台もの燃料電池への継続的燃料供給が可能なのだそうだ。
そのようになってくれば、水素タンク・ローリーの開発、水素ステーションの普及をはかることができる。
と思ったら、ノルウェーでは国営石油会社Statoilなどが水素ステーションの完備したハイウェーなどをもう始めていたhttp://fuelcellsworks.com/news/2010/11/24/hydrogen-station-for-lillestr%C3%B8m-norway-in-2011/。石油とガスが余っているのに、立派な国だ。

⑤人工的光合成による水の分解=水素生産
人工光合成型光触媒による水の直接分解法は、実現すれば最もシンプルで効率的な水素生成法なのだそうだ。大阪市立大学、岡山大学、東京大学、米国のMITなどで研究中。

⑥日本は温泉大国、すなわち地熱大国。地熱発電の余地は大きい。
問題は、温泉産業が反対すること、国立公園での立地が必要になること、発電機器が硫黄などにすぐやられてしまうこと。

以上は、これまでの電力計画を根本的に変えることになる。「原発しかない」という自縄自縛から離れて、検討し直してもらいたい。そしてそれこそは、政治家が主導しないと(細かいことまでということではなく、方向のこと。細かいことは専門家と官僚に検討させないと無理。但しその検討結果のおかしいところを嗅ぎつける能力と一般的な常識を、政治家は持っていないといけない)、いけない。

東電は経済産業省の方を見ているし、経済産業省は財務省に「うん? お前たち、これまで言ってきたこと嘘? そんなことではもう予算つけられない」と言われるのがいやだから、既存のラインで突っ走るしかない。そのような惰性の構造の中で放射能を浴びさせられるのはまっぴらごめんだ。

ああ、そして原発をやめるということは、日本が独自核武装という選択肢を決定的に放棄することを意味するだろう。原発をやめれば、ウラン濃縮技術もプルトニウムも失われるからだ。但し、現在日本が持っているウラン濃縮技術では爆弾は作れないし、大量に持っているプルトニウムも黒鉛原子炉とやらで加工しないと爆弾は作れないらしいのだが。

北朝鮮の核ミサイルなどに対する抑止の手段としては、潜水艦搭載の通常火薬弾頭(但し照準が非常に正確な)装備の巡航ミサイルくらいになるだろう。

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