集団自殺はやめて、原発全廃へ
最近、政府がやっている議論を見ると、どうも現状維持の方向、「一度決めた予算は実行しなきゃ」的な惰性が支配的になってきた感じがする。
直下型地震の可能性が指摘されている浜岡原発とか、西風が吹いたら首都圏があぶなくなる石川の原発とか、首都圏の都合ばかり言って申し訳ないが、もう全廃してもらわないと危なくて住んでいられない。ちょっとしたテロを一発食らっただけで、またあの「建屋の爆発」とか「汚染水の海への流入」とか、半径20KM内の強制疎開を見せられるのかと思うと、やっていられない。
天然ガスの値段は下がっているし、環境汚染の少ない石炭発電も開発されているし、そのうちには水素を安価に抽出する方法も開発されるだろう。原発はあと5年くらいで全廃する計画を作って欲しい。そのための支出なら、国債を発行してでも、新たな税を作ってでも、出すべきだし、けっこう有効需要を作り出して税収を増やすのではないか。
京都議定書が定める二酸化炭素削減は達成できなくなるかもしれないが、だったら原発全廃を世界に提案し、ついでに京都議定書の見直しも提案するようなガッツとはったりを持てばいいではないか(核融合については知らない)。それは日本の外交官がどうこうという問題ではなく、それこそ政治家が主導するべき問題だ。
「一度閣議決定をし、予算ももらったら、何が起きても見直しなし。ただ進むのみ」というのは官僚の論理だ。政策の断絶を可能にしよう。「一度決まった予算」に群がる既得権益に、別のオプションを提示しよう(そうしておかないと、邪魔ばかりするから)。原発の立地を認めることで多くの収入を得てきた県には、別の事業を提示しよう。そのためには、シンクタンクなどが既存のパラダイムの外にある政策を周到に練り、政党に売り込んでいく必要がある。
復興ということで今やってほしいのは、原発全廃計画策定(その代わり、原発を全廃すると多分、将来自主核武装をしたいと思っても、技術的な蓄積がない、ということになるが)の他に、日本経済の災害抗堪性を高めるための諸投資だ。
①首都圏の交通・通信網が破壊された場合、最も重要な首都機能を代替できる都市の整備
②ドイツのように政府の機能をいくつかの地方都市に分散すること
③本社のデータをすべて備え、危機の際には本社機能を発揮できる「地方本社」の設置
④通話が集中しても切れない電話網の整備
⑤大企業幹部のための社用自家用機の普及と、地震の際にも着陸可能な小型空港の整備
こういったものを公共投資、政策投資を投じて作り上げるのだ。
そのようなメッセージを発しておかないと、日本企業がいくら速くサプライン・チェーンを回復して見せても、日本の株は恒常的に売り、ということになっていくだろう。首都圏直下型地震の可能性さえささやかれているのだから。
トラックバック
このエントリーのトラックバックURL:
http://www.japan-world-trends.com/cgi-bin/mtja/mt-tb.cgi/1541
コメント
河東先生,今晩は。富山の星野です。原発を全廃しようとのご意見には心より賛同致します。大震災からの日本の復興の最大の妨げの1つになっているのが未だ収束の見通しが立たない福島の原発事故ですし,またこの大事故の所為で日本の売りの1つである「安全・安心」も吹き飛びました。日本の技術に対する海外からの信用も大きく傷付きました。さらに空洞化が始まった日本のもの作りに代わる有望な産業の1つと見られていた観光業も大打撃を受けました。
今後は仰る通り,大災害にも強いインフラの強化・整備に加え,今回の事故原因と責任者の徹底的追及と民事・刑事両面からの事故責任者(直接・間接を問わず)の処罰,そしてエネルギー政策の自然エネルギーへの大転換をしっかりやっておくことが肝要と思います。原発の利権をここで徹底的に断ち切っておきませんと,ほとぼりが冷めた頃に必ずまたこれら勢力は息を吹き返し,日本のエネルギー政策を原発推進へと引き戻し,大事故を繰り返すことになりかねませんから。その時は今度こそ,日本は破滅かも知れません。
賛成です。日本は最悪の事態のシナリオを想定することを忌避し、最善の事態のシナリオだけを想定して、経済も外交も政治も行ってきました。福島第一原子力発電所よりも大きな規模の原子力発電所の複数が同時に地震、津波あるいはテロによって破壊されることは、現時点になっても、想定されていません。誰も想定しないことを想定するのが政治家の仕事ですが、その能力も気概もない人が圧倒的な多数です。
ただし、河東先生が仰る「国債を発行してでも」には反対いたします。既に東日本大震災以前に日本国債は臨界点に達し、現状維持でさえ危うくなっていました。国債を追加して新規発行すれば危機的な事態になりかねません。それを「発行してみなければ実際どうなるか分からない」と考えるのは、世界有数の地震国に原子力発電所を林立させてきたのと同じ思考です。
2011年4月27日に、スタンダード&プアーズが日本国債の信用格付けAA-の見通しを「引き下げ方向」(negative)に変更したことを、日本政府は真剣に受け止めるべきです。
日本の中長期国債の現物のうち外国の機関投資家および個人投資家(まとめて「外国人」と呼びます)が保有している比率は、ピークの2008年6~9月期の9.7%から低下して、2010年10~12月期は5.8%になっています。
だからといって、すこしも安心できません。
日本の短期国債のうち外国人が保有している比率は、2010年1~3月期に10.6%だったのが、2010年10~12月期は14.1%に上昇しています。
外国人が中長期国債から短期国債へシフトしているのは、日本の財政が破綻するリスクが高まっていると見ているからです。
日本国債の保有ではなく売買を見ると、事態は更に深刻です。
今年2月の国債現物の売買のうち約14%を外国人が占めています。とりわけ、短期国債の買付の約42%を外国人が占めています。外国人が短期国債を買わなくなると、短期国債の価格が下落して短期金利が上昇し、長期金利への上昇圧力となります。
また、今年3月の日本国債先物の取引高の約45%は外国人によるものです。日本国債先物オプションの取引高はプットの約67%、コールの約60%が外国人によるものです。外国人が日本国債の先物や先物オプションを売ると、国債現物の価格を押し下げ、金利を上昇させる圧力となります。
日本の生命保険、年金、公的年金、都市銀行、地域銀行・信用金庫は、世界金融危機後に、ポートフォリオを株式から国債へ大きくシフトしています。日本銀行の試算によれば、金利が1%上がるだけで、合計16兆円を超す含み損が発生する「金利リスク」を抱えています。そうなれば日本の金融システムは崩壊してしまいます。
原発廃止に賛成です。
日本のみならず、オイルショックを機に原発が世界的に加速しましたが、安ければ良い!便利が良い!と言う考えは最早改めるべき時代に入ったと思います。事実原発を否定して代替エネルギーに舵を切った国もありますが、本来日本こそ先頭に立ち見本となるべき国家像を示すくらいの気構えがほしいものです。
石油の無い日本は、決して安くもない原発を作為的に推進してきましたが、たとえ日本が沈没しても他国に放射能汚染の迷惑を及ぼさないまでの安全対策を考えれば、他エネルギーより遥かに高価なエネルギーであることを、国民として十分理解する必要があります。
原発は安くもなく、環境に優しくもないのであり、自分の世代さえよければ!の考えは反省しなければなりません。