「クールジャパン」から「異質な日本」への逆戻り
この頃CNN(アジア向けだから欧米で放送されているのと違うかもしれないが)が、日米貿易摩擦時代のような日本叩きを始めた。2週間前までは「米国人の夫と離婚した後、日本人の妻がアメリカ国籍の子供を米国裁判所の判決に逆らって日本に連れ帰り、夫が日本に来て連れ帰ろうとすると誘拐罪で捕まる不条理」(不条理というより、法律の異なる国家間でよく生ずる国際私法上の争いなのだが)、英語で言うとcustodyの問題を数日ぶっつづけでやったかと思えば、今週は「イルカを儀式で殺して肉を食らう」日本人についてのキャンペーンだ(海が真っ赤に染まり、本当に残酷ですが。時には人間を救ってくれるイルカなのに)。東京国際映画祭ではイルカ虐殺のドキュメンタリー映画を持ち込んだ外国監督がいて、これまた大きく報道されている。
その是非はまた別に議論するとして、最近よく感ずるのは、「日本人は自国のイメージが高いと思い込んで高をくくり、自己宣伝の努力を怠っているのではないか」ということだ。
外国のテレビではよく、「国のコマーシャル」が出てくる。マレーシアは「Malaysia, truly Asia」を標語に観光コマーシャルを流しているし(アジアの他の国々は「俺のところこそ本物のアジアだ」と言って怒っているが)、韓国も「ソウルはアジアの魂(ソウル)」などのキャプションつきで自分を売り込む。そこではソウルは超モダンで美男美女の世界だ(まあ、そういう面もありますが)。
これまで日本政府はこういうコマーシャルはしてこなかった。放っておいても外国テレビの方から日本を取材し、「クール・ジャパン」的題材を好んで取り上げてくれていた。「少し能天気だが自由でオープンになった日本人」というイメージがそこでは流されていたのだ。
だが外国テレビ、少なくともCNNは日本についての編集方針を変えたようだ。
日本政府も広報用に多額の予算を持っているのだから、日本のマスコミにばらまいてばかりいないで、マレーシアのように外国に乗り出したらどうだ。
「日本は大国だから」などとどっしり構えているが、その地位は非常に相対的で、外国での存在感は中国はもちろん今や韓国にも抜かれようとしている現実を危機感をもってとらえないといけない。サッカーでのアジア・リーグで勝つのと同じ真剣さと危機感をもって、「日本」を売り込んでいかないとどこに行っても行列の後回しにされるような目にあうぞ。
このままでは日本は、カビの生えた優越感をもった人たちが鎖国のように内部に閉じこもり、ゼロサム・ゲーム的な富の奪い合いにかまけて同盟国・友好国にも愛想をつかされる、その瀬戸際だと思うのだが。
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