円高の時代へ 日本はドイツに抜かれない
(これは11月22日発行のメルマガ「文明の万華鏡」第139号の一部です。これを書いてから円は更に上昇。ユーロに対しても上昇しています。
これによって、「日本がドイツにGDPで抜かれる」のは、一時お預けになりました)
11月初め、1ドル152円台と近年の最安値に下がった円は、現在急騰。11月22日現在148円台にある(注:12月10日現在144円台)。2021年1月には102円台だったことは、皆忘れているだろう。つまり、ドル・ベースでは日本経済はわずか2年余で3分の1減価している。ドル表示のGDPでドイツに抜かれそうだったのも、そのためだ。
問題は、どうして今円が反転しているのか、ということ。一つは、米国での金利引き上げが一段落している中で日本の金利が上昇傾向にあること、もう一つは米国経済の見通しが怪しくなっていて、米国の資金が日本の株などに向かっていること、そして何より、日本経済の足腰が結構しっかりしていること、によるだろう。円安にも関わらず、日本の経常収支黒字は増加傾向にある。
以上の要因は、どれだけ続くか? 日米の金利差の縮小はこれからも当分続く。米国の経済は、これまでの利上げで米国債の額面価格が低下して、金融機関の資産規模を縮小させていることが、2008年リーマンの時を上回る金融恐慌を起こすかどうかが目になりつつある。政権は、大統領選挙の年に恐慌が起こるのを防ごうとするだろうが、2008年リーマン危機はまさに大統領選挙たけなわの時に起きたのだ。
リーマンの時に似て、日本の金融大手はわりとしっかりしている。リーマンの時、日本は最初高をくくっていたのだが、外国からの注文がぱったり止まって、結局2009年のGDPは6%以上下げた。一方、円の方はそれにお構いなく上げに上げた。欧米の中銀が低金利政策を取ったのに、日銀がそれに追随しなかったからである。
結果、2008年には1ドル103円だったのが、2012年には実に80円を割り、そこでアベノミクスと黒田日銀新総裁の「異次元緩和」となる。今は、欧米が利上げに転じた一方、日本はゼロ金利策を離れられないので、「異次元円安」となっている。
これから何が起きるか? じっと目を凝らして、投資のタイミングを狙っている。
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