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街角での雑想

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2008年6月24日

アメリカの対アジア政策に望むこと

(東アジア共同体評議会のサイト「百家争鳴」に掲載したもの)
        河東哲夫

ライス国務長官がアジアにやってくる。これに先立って彼女は6月18日、ヘリテージ財団で北朝鮮について演説を行ったし、「フォーリン・アフェアーズ」誌では米国外交を総括している。この2つに、北朝鮮核問題についての「六カ国協議」を「北東アジア平和安全保障メカニズム」に発展させるという(以前からの)アイデアが言及されていたために、日本の新聞ではライス長官はこの構想実現にいよいよ乗り出したと書いたものがあるし、一部の識者はこれによって日米安保が相対化されることになると書いている。

確かにアメリカではこの頃、東アジア諸国間の歴史的怨念に起因する紛争には「巻き込まれ」たくないとの立場を持する者も増えているようで、こうした連中はアメリカの安全保障に直接関わらない問題についてはアジア諸国同士の間で解決させようとする。「北東アジア平和安全保障メカニズム」も、そのような政策の道具立てとなる可能性がある。

僕も、それでは日本にとってまずいと思って、右の演説と論文を読んでみたが、「六カ国協議」を集団メカニズムに発展させる構想についてはそれぞれ「そのようなアイデアさえ喧伝されるようになっています」という趣旨のワン・センテンスだけで終わっている。ヘリテージ財団の演説では、「これよりはるかに重要なのは北朝鮮の核撤廃問題です」と続けているのだ。この調子では、現政権の任期中に「北東アジア平和安全保障メカニズム」が真剣に追及される可能性は薄いと言えるだろう。

そのような条件の中で日本は当面、アメリカの新大統領候補周辺と二つのことを良く議論していくべきだ。一つは、アメリカがアジアにおける紛争から身を引きたい気持ちは理解できるが、それも度が過ぎれば中国にアジア政策を丸投げする結果になるだろうし、また世界で最も高いテンポで発展している地域における米国の利益をも害しかねないということだ。

もう一つは、そのようなモンロー主義的行きかたの対極にある志向、つまりマッケイン、オバマ双方の陣営で唱えられるようになっているLeague of Democraciesについてである。価値観の問題としては異存ないが(日本ではアメリカ人が思っている何倍も自由と民主主義が根付いているのだ)、これを専制主義国の政府を倒すことを正当化するための道具とするなら、それら諸国のリベラルなインテリ達をも敵に回し、民主主義を広めるという目的がかえって達成できなくなるということだ。

民主主義は欧州では300年以上もかけて徐々に発達してきたものであり、これを開発途上諸国に性急に押し付けても利権の奪い合いを招くだけである。民主主義と自由を広めるのに最良の手段は、民主主義諸国自身の生活水準を更に上げ、その自由と民主主義の度合いに更に磨きをかけ、他方では開発途上国への援助、直接投資を進めることだ。アジアでの日本の立場を確保するためには、今からアメリカの新大統領候補周辺にアジアの情勢をインプットしていく必要がある。

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