今ベタ下りしてまで北方領土問題に決着をつけねばならないのか
プーチンがやってくる。まるでゴジラのように恐れられているが、それは西側の彼に対するやり方があまりにお粗末で、彼にいいように反撃を許してしまったからだ。プーチン・ゴジラも全てを見通して、万能の戦略を建てられるわけではない。それに、ロシアという巨体はこの頃、ガス欠気味なのだ。
プーチン・ゴジラの上陸を前にして日本では、「歯舞・色丹の返還だけで、北方領土問題は手を打て」という声が強まっている(12月2日日経)と報じられているが、どうして今そこまで下りて解決を図らなければならないのだろう。どうして日経は、そっちの方に世論を誘導しようとするのか?
歯舞・色丹だけで手を打つべしとの議論の背後には、「日本は1956年に米国の圧力を受けたから国後、択捉も要求している。今は米国の意向に関わりなく、歯舞・色丹だけで対ロ関係の抜本的改善をはかるべきだ」との認識がある。しかし日本政府は、国後・択捉が1855年日ロ外交関係樹立の時から一貫して日本領と認められていたから要求してきたのである。
それにプーチン来日時に、「歯舞・色丹だけで手を打とう」と持ち掛けても、米ロ関係の改善を当て込むプーチンは、その場で合意はしないだろう。その方向での交渉の開始に合意するだけ、つまり「歯舞・色丹」を交渉の起点とされ、日本が最終的に得るものはそれ以下、あるいは過度に大きな代償を払わされることになるだろう。そしてその後もロシアは、日中を両てんびんにかけることをやめないだろう。
だから、「歯舞・色丹だけでいい」という所まで下りる用意があるのなら、日本をめぐる国際的枠組みがもっと根本的に変化した時、例えば米国の国力の低下が決定的となった時までとっておくべきだろう。
だからと言って、ロシアと喧嘩をする必要はない。領土問題、経済関係とも前向きに進めていくことで合意すれば、今回は十分だ。もともとロシアは、中国を捨てて日本の準同盟国になどなってくれはしない。また領土問題で日本が下りなくても、ロシアは石油・ガスを日本に売ってくれるのだ。「関係を良くしたいのだから、領土返還を求めるのはもうやめないと失礼だ」と思うのは日本的思考。領土問題も、両国の関係を良くするために交渉していくのならば、返還を要求して何も差し支えない。">
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