メキシコは中国に代わる投資先
メキシコから帰ってきて、14時間の時差にまだふらふらしているが、メキシコで気がついたいちばん重要なことをとりあえず報告しておく。TPPができなくても、メキシコでものづくりをすれば北米、EUに無関税で輸出ができるということ、つまり、メキシコは「中国+1」の重要な対象になるということである。メキシコというと、日本の5倍の面積を持つ大国であるにもかかわらず、なぜか関心が盛り上がらないのだが、実はアジア・太平洋地域の重要な隣国なのだ、ということを認識して帰ってきた。
TPPが駄目でもメキシコがある
TPPの年内妥結は、11月米国での中間選挙の結果にかかるところ大で、まだ時間がかかるだろう。米韓FTAが既に成立していることもあり、日本の輸出産業にとってはTPPの成立が待たれるところだが、仮にTPP妥結に時間がかかることとなっても、メキシコを対米輸出の基地とすれば、TPPとほぼ同じ効果が得られる。
と言うのは、メキシコと米国の間には1994年北米自由貿易協定NAFTAが発行しており、日本とメキシコの間で2005年EPAが結ばれたことで、日本企業は部品・機械を無関税でメキシコに持ち込んだ上で組み立て、これを米国、カナダに無関税で輸出ができることになっているからである。
メキシコはEUとも2000年に自由貿易協定を発効させているので、メキシコで生産すれば無関税でEUへの輸出も行える。そしてメキシコは中南米諸国とも自由貿易、あるいは特恵関税の枠組みを有しているのである。
日本企業はこの可能性に以前から気が付いており、2005年EPA締結以降、対メキシコ直接投資を急増させている。2012年にはその総額は約1000億円で、日本はメキシコに対する主要な投資国となっている。そしてメキシコは中国、ASEAN諸国と比べると政情が安定し、治安も比較的良いものがある(地域差がある)。人口は日本と同等で、しかも低所得青年人口が多いため、
工場の労働者確保に困ることもない。
中部で操業を開始したばかりのマツダ自動車工場を見学する機会があったが、その際気が付いたことは次のとおりである。
〇工場に近いグアナフアトという古都(これ自体、素晴らしい観光資源なのだが)へ往来する飛行機乗客の3分の1以上が、同地周辺に立地する日本企業に勤務するとおぼしき日本人であった。
〇インフラもかなり整っている。ハイウェー網は整備されているし、鉄道も投資不足が指摘されるが、マツダは工場に長い貨物列車を引き込み、北米、そして大西洋岸の港向けに出荷している。これは、日通が担当している由。
〇労働者(インディオ、ないしインディオと白人の混血のメスティソが多い。他方、管理部門には白人が多かった)は律儀で言われたことはしっかりやる。その点、「自分で考えて手順を省く」中国人労働者より安心できるだろう。なお、マツダ自動車工場労働者の30%は女性である。女性の方が定着率が高いという利点もある。
〇目下3000名も現地で雇用しており、その経済効果には大きいものがある。但し部品産業は現地にはないに等しいので、日本から子会社を連れてきて、工場敷地内で操業してもらっているそうだった。これなら、中小企業でも進出しやすい。
メキシコは「中国+1」の重要候補
話してみると、メキシコ人自身、北米、そしてEUに対する輸出基地として、中国にとって代わり得る可能性を、自覚しているようだった。メキシコは中国に対して大きな貿易赤字を有しているため、「中国は消費財を売りつけるだけで、製造業の直接投資をすることがない。中国は自分のことしか考えない」という気持ちが見られた。
他方、メキシコの大学関係者は、中国留学生が多数やってきて授業料を納めてくれること(メキシコはスペイン語の国としては世界最大の人口を有し、中南米のスペイン語の標準語的な地位も持っている。従ってスペイン語学習のためには、メキシコは非常に適している)、中国語学習等に資金を出してくれることには大きな魅力を感じているようだった。
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