Japan and World Trends [日本語] 日本では自分だけの殻にこもっているのが、一番心地いい。これが個人主義だと、我々は思っています。でも、日本には皆で議論するべきことがまだ沢山あります。そして日本、アジアの将来を、世界中の人々と話し合っていかなければなりません。このブログは、日本語、英語、中国語、ロシア語でディベートができる、世界で唯一のサイトです。世界中のオピニオン・メーカー達との議論をお楽しみください。
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街角での雑想

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2013年5月25日

政府は何もしておらず、企業も世界に出遅れ なのか

何か悪いことが起こるとすぐ、「政府は何をしているのだ?! 何もしていないではないか」という声が起きる。そして、スマホなどで外国企業に席巻されると、「日本は企業も世界に出遅れ」ということにされてしまう。こうやって自虐的に、日本では何から何までダメ、出口なし、という気持ちに自らなってしまう。

これでは、日本人はますます不幸になってしまう。政府のやり方がまずい場合、官僚が人間のいたみをわかっていない場合、優等生的で効き目のない政策ばかり並べる場合、世界の変化に気づいていない場合、これは本当にある。しかし、何とかやっている場合もある。まず、全てを政府の無策のせいにしないで、政府が何をしてきたか、何を今しているのか、何を考えているのかをまず調べ、そのうえで議論していかないと、何も良くならない。

もっとも、官僚にコネがなければそんなことはできない、という問題はある。国会で、大臣や官僚に議員が質問することで少しはわかるが、大臣もすべてを知っているわけではないし、官僚もまずいことは言ってくれない。だから、国会があるから民主主義が担保されているというこれまでの建前を、若い連中はわかってくれないのだが、ここはどうしたらいいだろう? 課長クラス以下の若い官僚を呼んで(彼らがいちばん知っているし、彼らが政策の原案を作る)、自由な議論をする場をいくつももうけるとか、それをインターネット上でやるとか、そういうことになるかもしれない。

「日本の企業が世界に出遅れている。日本の企業は新しいグローバル・スタンダードを立ち上げる才覚と能力がない」ということについても、少し企業の立場に立って考えたらいい。日本人は新しいことを考え出す能力に欠けると言われるが、そんなことはあるまい。僕は文科系で、理科系の同級生にはコンプレックスを持っているのだが、それは彼らのなかには独創的な考え方をする優秀な人がいるからだ。

問題は、企業がお抱えの研究者にどこまで自由を与えるか、またお抱えの研究者が革命的な技術を開発したときそれに投資し、製品化する気になるかどうかだろう。多くの発明は企業にとって、製品化してもコスト・パフォーマンスが低いか、リスクが高すぎる。企業にとって一番手堅く儲けることができるのは、既存の技術を改良し、既存の販売戦略に乗って、要するにあまり新たな投資をすることなしに「新製品」を売っていくことなのだろう。

企業が製品化に踏み切ってそれを世界に広めようとしても、世界は日本人にそんなに簡単には儲けさせてくれない。いい例がiモードだhttp://ja.wikipedia.org/wiki/I%E3%83%A2%E3%83%BC%E3%83%89#.E5.90.84.E5.9B.BD.E3.81.AE.E7.8A.B6.E6.B3.81。特に欧米の企業は、「頭」、つまりノウハウとか特許などを抑えておくことに非常に神経質だ。儲けの源泉になるからである。

そして言語の問題、文化の違いがある。新製品のメリットを外国語で、縦横無尽に説明できる企業人は、日本にそれほどいるまい。そして文化の違いとは、日本人が便利だ、面白いと思うものでも、外国人には何の意味もないことがある、ということを意味する。

もともと、日本は大きなハンディを負っている。外国にとっては、日本標準を採用することは、自分たちの市場を日本企業に明け渡すことを意味するだろう。その見返りに日本の市場に進出できるというならば、彼らも日本標準を採用するかもしれないが、その日本の市場は中国や米国に比べると小さいし、日本の企業ががんじがらめに囲っている。となると、日本標準など金輪際―ーーという気持ちになりやすいだろう。

技術の世界は戦いだ。負ければ、いくら便利で画期的な技術でも「ガラパゴス」と貶められ、「日本の企業は世界に出遅れ」と揶揄されることになる。

ここらは、日本のマスコミに期待しよう。いつも政府や企業を貶めてそれでお終い、というのではなく、進歩がない。実際にはどういう事情があって、どこをどうすれば良くなるのか、そこまで取材してほしい。でないと、そのうちすべての悪いことは、マスコミがだめだから、ということになりかねない。

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