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街角での雑想

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2007年9月17日

日本もゼロサム社会―ー誰が総理になろうとも

この頃の東京は、流しのタクシーをつかまえるのがめっきり難しくなった。運転手の皆さんはそうは思っていないようだが、おそらく景気が良くなってきたのだろう。

だがこの前、タクシーに乗って霞ヶ関を通りかかると、周りの建物を見渡した運転手氏が恐ろしいことを言った。
「この役人どもが全部いなくなったら、どんなにいいだろうかって思いますよ」
「???」
「戦後、2,000兆円も盗んできたんだそうですよ。年金も。こんなんじゃ、格差がいつまでたってもなくならない。」
「2,000兆円も盗むのは、ちょっと無理では。僕も役人やってたんですよ。でももう辞めたけどね。」
「いいですね。悠々自適ってやつですね。年金だっていいっていうからね。」
「No, No。まだ年金ももらってないし、それに役人の年金だってそんなに違わないんだけど。」

運転手氏の運転に心なしか怒りがこもって来たように見えたので、僕は会話を途中で切り上げた。

―1985年のプラザ合意で円が上がり、日本は世界の工場の座を中国に明け渡したのだ。日本の企業は中国や米国で生産するからいいが、日本での工場は縮小され、雇用は確実に減っていく。条件も悪くなっていく。
それが90年代の10年間が「失われた10年」と称されたことの、基本的背景だ。今の若い世代は、プラザ合意の名も知らない。隕石が昔ユカタン半島に落ちたのが全ての災難の始まりだったのを知らない、恐竜のようなものだ。

経済が右肩上がりで成長するのが終わったのに合わせ、公共投資、医療補助など財政支出は削減された。その難しいリストラの時期を、国民を一種の麻酔にかけて乗り切らせたのが小泉総理だ。彼の劇場は本当に面白かった。

だが、その麻酔は切れた。そして皆、本当に怒りだした。
こんなに生活が苦しくなり、格差が開いたのは、一体誰のせいなのかと。「それは特定の誰のせいでもない、円が切り上げられたせいだ」と言ったところで、「そんなことはない。ほら、あそこで年金の金をくすねている役人がいるじゃないか。」というわけで、麻生さんだろうが、福田さんだろうが、誰が総理になってもここらへんをきちんとして見せないと、また世論から捨てられるだけだろう。

生活は苦しい。かつて月に40万円ほど稼げたタクシー運転手も、今では月に手取り20万円台に落ちている。就職氷河時代に正社員になれなかった若者達は今「失われた世代」になりつつあって、中にはインターネット喫茶を定宿にしている者もいるらしい。公団住宅に住めばいいようなものなのに、郊外から通う交通費も惜しい。だから、郊外の公団住宅にはイランなどの出稼ぎ労働者が住むことが多くなったという。

90年代の混乱したロシアと同じで、全体の富の量が増えない中、奪い合いが始まっている。「ゼロサム社会」だ。これが始まると、その国は内向きになり、ジリ貧になっていく。

そして皆、「アメリカへの貢献」にも飽き飽きしている。もうそろそろインド洋での給油などやめればいいと思っている。
そしてこうした不満をすべて拾い上げているのが、現在の民主党なのだ。あまり健全な図ではない。

コメント

投稿者: 大チャン雄クン | 2007年9月27日 12:43

正に「ゼロサム」、日本だけで言えばマイナスなのかも知れません。日本回帰といわれている製造業も、過去20余年に渡って展開してきた海外拠点を全て日本に戻すことはありえないでしょう。中国であり、ベトナムであり現地で物を作って、「ボーダーレス」の時代に世界中に売りまくる。それによってこれらの国の所得は上がる。BMWがバブル期に「六本木のカローラ」と呼ばれていましたが、中国では「北京のカローラ」はアウディA6ですね。「カルフール」などの熱気も凄いものがあります。先週、改装バーゲンをしていた南町田の旧カルフールを見ますと、言葉も出ません。
河東さんが言われる、現在の日本国民の不満を拾い上げている民主党の党首が、「普通の国」になりたいと言っていた小沢さんというのも、日本という舞台では悲劇ではなく喜劇が演じられているのでしょうか。


(河東より: 喜劇ではないと思います。悲喜劇です。
正面から議論しても仕方ないと思っているから人気取りの手法に出るのです。しかし、日本の社会もよく考えている人たち、または本能的にポピュリストを嗅ぎ分ける人たちが多数を占めていると思うので(Or at least I hope so.)あまり変な方向にはいかないと思います。
民主党も、今のままでは政権担当能力を問われることになるでしょう。)

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