Japan and World Trends [日本語] 日本では自分だけの殻にこもっているのが、一番心地いい。これが個人主義だと、我々は思っています。でも、日本には皆で議論するべきことがまだ沢山あります。そして日本、アジアの将来を、世界中の人々と話し合っていかなければなりません。このブログは、日本語、英語、中国語、ロシア語でディベートができる、世界で唯一のサイトです。世界中のオピニオン・メーカー達との議論をお楽しみください。
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街角での雑想

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2007年9月 5日

日本ももう少し自己宣伝をしないと

(以下は東アジア共同体評議会のサイト「百家争鳴」http://www.ceac.jp/cgi/m-bbs/に掲載したものです。
世界では、アジアというと中国、インドのことしか思い浮かべない人たちが増えているようですが、日本は実際には大きな存在であるわけで、もう少しこのことを世界で認識してもらうにはどうしたらいいかと思っています。世界では、謙譲の美徳もさることながら、「僕はこんなに謙譲で善い人なんだ」と大声で叫んでいないと、わかってもらえないものです)


実力以下に見える日本
――大きく見せるためには――
                           
  去年のベネチア国際映画祭でグランプリをとったという、中国の映画「長江哀歌」を観にいった。ポスターの、遥大な景色に惹かれて行ったのだ。三峡ダム建設現場を舞台にした現代の人間模様がテーマの映画なのだが、建設労働者とその周辺の人達の貧しさには驚いた。もっとも、人情の機微は日本とあまり違わないのだが。

  それで僅か1,000円で中国の深奥まで旅行した気になって夜の銀座に出ると、そこにはかつての派手々々さはもうなく、落ち着いた洗練された繁栄を見せる点ではヨーロッパの都市なみだ。日本人の生活も随分良くなってきたな、と自己満足に浸る。

  夜飯はウェンディーズでハンバーガーをぱくついたのだが、これがダブルサイズで450円、道路の向こう側のマクドナルドのビッグマックはちょうどセールで何と200余円。ほとんどタダの感覚だ。これがモスクワでは、普通のスパゲッティ・ミートソースが4,000円、ロンドンではホテル一泊7万円が当たり前―――ハンバーガーを食べながら、日本での物価が安いのもどこかがおかしいからなのではないかと気がついた。円の実効レートはプラザ合意前の水準にまで下がってきたというのに、デフレが続いている不思議さ。街の景観も住宅も良くなったのに、円が下がっていく不条理さ。そして海外では、日本が益々小さな存在になっていく・・・

  インフレ率を勘案しない名目成長率では、最近の日本は主要国に比べて哀れなものだ。2000年から2005年にかけて日本の名目GDPは2,5%下落したが、米国は26,5%、ドイツは47%、英国は52%、フランスは60%、中国、ロシアに至ってはそれぞれ207%、294%という成長を示している。これが物価の差となって現れているのだ。いや、それは物価の差だけではない。かつては世界一だったODA供与額でドイツ、英国、フランスにも抜かれつつあるという情ない状況も、一つには日本の名目GDPが伸びていないことによる。
  実質成長率では、日本はそれほどひけをとらない。2000年から2004年の間、日本が6,2%、米国が9,5%、英国が10,5%、フランスが7,0%伸びている。生活の質は、欧米諸国以上のテンポで良くなっている。しかし国際場裡では、実質よりも見かけ、つまり名目GDPがものを言う。
  どうすればいいのか? 消費税を上げ財政支出を増やしてインフレを起こすか、円切り上げを誘導するか、それともナショナリズムを煽って国民の士気と国家としての存在感を高めるか。どれも解決策になりはしない。どうすればいいのか?

  目を海外に転じてみる。すると、日本は経済面でも結構やっているのだ。中国の輸出の50%強は外資系企業によるものだが、その4分の1が日本企業だと仮定すると、中国の輸出の10%強は日本系企業によるもので、しかもこれら企業はタイやベトナムに建てた工場と中国に作った工場との間で水平分業体制を築きつつある。日本経済は、アジア全域の経済を押し上げているのだ。北米では400万台強、アジアでもそれを上回る数の自動車を、日本の企業は製造している。

  こうした企業が海外であげる収益はその殆んどが日本に返って来るわけでもなく、一般の日本人の所得水準を引き上げてくれるわけでもない。海外における日本企業は当然のことながら、むしろ現地の人々の所得向上に貢献している。だとするなら、海外での日本の製造・サービス企業があげている売り上げ、収益を毎年集計してみてはどうか。日本の直接投資は多くの場合、収奪型ではなく貢献型なので、このような統計は海外における日本の存在感をアピールするのに好いと思うのだが。これでなくてもいい。経済力を政治力に転化する方策を、他にもいろいろ考えなければならない。

コメント

投稿者: 杉本丈児 | 2007年9月11日 17:10

経済活動の複雑さは、本当にわかりにくい。
海外での日本企業の好調さが直接に日本経済や市民生活を潤さないとは・・・。
不思議です。

私がいかに経済オンチであるかを表明しているようで恥ずかしいことです。

一方、相変わらず河東節は鋭い。
しかも、おもしろい。
そして、わかりやすい。

(近況報告)
8月中旬、ミヤンマ-の日本語学校3校でボランティアをしてきました。
初めての訪問でしたが、予想以上の日本語熱と親日的な雰囲気に圧倒されました。
ただ、丁度、ヤンゴン空港に到着した次の日に、突然ガソリン価格が2倍となり、頻発したデモ等の混乱については新聞紙上のとおりです。
また、残念なことに、ミヤンマ-から日本の企業がほとんど撤退していました。
簡単に、近況報告をさせていただきました。

(河東より:
コメント有難うございます。
経済はものごとの根本ですので、しっかり本質を見ておかないと議論が思い込みのやりとり、つまり観念論になってしまいます。
ミャンマーは以前は日本はもっとやっていたのですが。現在の軍事政権が閉鎖的な政策をとっていて投資がやりにくい面もあるし、それに米国がミャンマーは人権問題に難ありとしてこの国への本格的な援助や投資を止めようとしてきたこともあります。軍事政権と米国との間でもう少し歩み寄ってもらう必要があります。)

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