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論文

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2010年7月10日

米ロ接近と米中停滞ーーそのねじれがもたらすもの

ブッシュ時代、米国はNATO拡張を強引に進める等、ロシアの反発を誘って遂には08年8月グルジア戦争にまで至った。
だがオバマ政権は経済回復、アフガニスタン、イラン問題への対処に主力を注ぐために、ロシアとの間では「リセットReset」を標榜し、これと協調する路線に出ている。ブッシュ時代のように民主主義と市場経済を力ずくで他国に強制することはしないと、明言もした。

メドベジェフ大統領の方も、石油に過度に依存したロシア経済の体質を刷新することに政策の重点を置いたし、政治面ではリベラル、親西側路線を前面に出して国内知識層の支持を獲得(ロシアの知識人たちは19世紀からそうだが、ヨーロッパ以上にヨーロッパ的でリベラルかつ深い教養を備えている)、2012年の大統領選挙に向けてプーチン首相との間の差を印象づけようとしている。

その結果、旧ソ連地域においては、「現状を維持し、米国もロシアも互いの利益・対面を傷つけない」という暗黙の了解の下にゲームが展開され始めた感がある。例えば6月のキルギス南部騒動激化においては、ロシアはキルギス臨時政府から要請を受けたにもかかわらず、直接軍事介入は避けている 。

メドベジェフ大統領訪米直後、「ロシアのスパイ」が米国で多数摘発されたが、これは米国FBIが捜査上、このタイミングで行うことを余儀なくされたものであるらしく(長年FBIが監視していたスパイ達が国外脱出への動きを始めていた)、ホワイトハウスは政治的意図はないとしている。ロシアも「米国のスパイ」を報復逮捕することもせず、昨日「双方のスパイを釈放交換」することで手を打った。

このような構図のなかで面白いことには、米国の台湾への武器供与後、米国に対して態度を硬直させたままの中国が、若干不利な立場に追いやられてきたことだ。キルギスには中国の経済的進出が急であったが、4月の政変以降、キルギスで活動していた中国の商人達は祖国への大量避難を開始している。旧ソ連周縁部において米ロが協調すると、中国はその枠内でゲームをすることを余儀なくされるようだ

他方メドベジェフ大統領は、親西側路線に自身の政治的命運を賭けたことによって、ジレンマに立たされてもいる。西側の支援がなければロシアの経済改革はできないために、西側の言いなりにならざるを得ないからである。

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